第54話

「ふふ、セレスティア様、私こう見えても騎士ですから」


「え?」


 その話になったのは、本当に偶然だった。ルイスとセシルが外で喧嘩しながら組み手をしているのを眺めていると、レイラが混ざりたいと言った。それに驚いて、ケガをするからと言えば、騎士の告白をされたのだ。


「れ、れいらは、騎士だった……?」


「はい、そうです。ちなみにロイドとは同期で、副騎士団長でした」


「まって?」


それも、副騎士団長。一師団を任されるどころではないし、ロイドさんと同期って。私の周りはどうなっているのだろうか。


「レイラは、どうして私の侍女になったの?」


「それはですね、秘密です」


「教えてはくれないの?」


「はい、私だけの秘密です」


「わかったわ」


頑なに理由は教えてくれなかったけれど、レイラは騎士を辞しても強いということはわかった。なぜなら、木でできた武器を使って戦っている二人のもとに、細身の木剣片手に突っ込んで参加しに行ったから。


侍女だと思っていたレイラがあんなに強いとは思っていなかった。今や三人で乱闘中だ。でもみんな笑っていて、この空間が本当に幸せで。生きていてよかったと思った。


「セレスティア様のお側に一番長くいたの、私ですからぁ!」


「うわっ、副騎士団長のマウント!」


「特にセシル! あなたのことを黙認して人払いした私に感謝しなさい!」


「それくらい、おひいさんの侍女ならやるべきだ、ろ!」


「なんですってぇ!?」


「まあまあ、二人がそんだけやってたら俺はセレスティア様の側にいっと、ぐえぇ!」


「させるかぁ!」


「させねぇからな!?」


私のほうへ来ようとしたルイスが、さっきまでマウントの取り合いをしていたセシルとレイラに襟をつかまれて引きずられていて、奇妙な声がした。それが本当に面白くて、仲がいいなぁと思う。


「あなたたち、本当に仲がいいのね」


そういえば、三人そろって首を横に振るけど、そういうところだと思うのよね。結果的に彼らは同じ時期に士官学校で訓練を積んだということが発覚し、どっちにしろ、正式な士官学校在籍ではないセシルとルイスではあるが、レイラの同期ということになる。それは仲がいいわけだ。


「セレスティア様、ずっと、笑っていてくださいね」


「そうだよ、おひいさん。俺たちの、俺の、おひいさん」


「姫殿下の憂いは、俺たちが全部払うからね。それからセシル。お前だけのじゃねぇかんな」


「それな、ルイス」


年単位分で笑ったかと思えば、まだまだ三人に笑わされて、お腹が痛い。小声で言い合い、最終的にどつきあいに発展している。やっぱり仲がいいね。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

頑張った結果、周りとの勘違いが加速するのはどうしてでしょうか? 高福あさひ @Fuji-lout

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ