第43話

「明日は学院に行かないといけないし……、それに未来視の情報もまだ確定していない……、やることはいっぱいね」


自然と、はぁ、とため息が出る。今回のプリメラ草の件でもしも本当に群生していたとするならば、それはもう未来視があると言ってもいいような気はする。だけど、慎重にならないといけないような気もするのだ。


このことは本当に、うかつに未来視があるとは言えない。しつこいくらいそれは自分に言い聞かせてきた。未来視があるからと言って良いことばかりではない。先のことを知るということはそれだけリスクがある。


「助けられる命を助けたいと思うのは、悪いことではないはずなのに……」


リスクがあるからと言って、助けられる命を見捨てるわけにもいかない。板挟み過ぎて苦しい。助けて、もしもそれ以上に悪いことが起こったら、私一人で責任を負うことは不可能になってくる。


「ほんっとうに、未来視に対する文献が少なすぎるのよ……」


 ぶつくさとつぶやきながら、王城図書館を後にし、部屋に戻る。ひとまず、今日の収穫はあったと安堵するも、それ以上に不安が大きい。これから先、視えた未来を変えていくということは、そこにあった命を殺すことになるかもしれないということを、私は考えていなかった。


難しい話だというのはわかっている。一概にすべてが悪いとも言えないし、良いとも言えない。まだ起こるとは限らない、不確定の未来だとしても、変えた後のことに対して、考えが至ってはいなかった。


「どうすれば、いいの……」


助ける、助けないは抜きにして、視えた未来を変えたいのか、変えたくないのか。このまま世界の流れに身を任せるのか、抗うのか。そのどちらかしかない。


頭を悩ませることばかりだけど、これを解決していかなきゃ、私はきっと後悔する。やりたいことをやらずに後悔するのと一緒だ。


「私には、今は力がない。誰かを変えられるだけの、力も。未来を変えられるだけの力も。たった一人では何もできない。だからこそ、仲間を見つけなきゃ」


現状を見たうえで、そう私は判断する。仲間と言えば、父もそうだ。父を味方につけることは大きな自分の武器になる。父は私が間違ったほうへ進めばきちんと諫めてくれるし、やることに大きな口出しはまずしない。最初は見守ってくれる。だから、父を味方につけたい。


「そうすれば、きっと……」


いつか、答えはみつかるのだろうか。


この問題に、答えなどないと分かっていても求めてしまう。正解がない、最善の答えを自分で見つけていくしかない。だから私は進まないといけないのだ。


「明日も、学院で未来視と隣国への応対を考えますか……。それにしても、なんだかんだと言って、お父さまは私のことを把握しているでしょうね……。何も言わなくても多分監視がいるでしょうし」


父はおそらく私に、監視をつけている、その考えはあながち間違いではなかったと、私は後で知ることとなった。


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