第39話
翌朝、すっきりと目覚めた私はレイラの用意してくれた朝食をしっかりと食べて学院へと登校した。学院へ行くことにセシルは非常に厳しい顔をしたけれど、私が少ない自由を満喫したいと言えば渋々引き下がった。
「あの、アイリーン様……」
すでにアリエルさんの耳にも入っていたのか、昨日の鉢植えが落ちてきた案件を調べさせてほしいと言ってきた。一瞬だけ、もしやこの子が黒幕か、とも思ったがそれができるだけの証拠はないし、アリエルさんがそんなことをする人ではないと信じることにした。
「お願いいたしますわ、アリエルさん」
「必ずや、成果を上げて見せます」
下げていた頭を上げたアリエルさんの表情は、とても凛々しくどこか男性的にも見えた。彼女は可愛らしい女性なのに、なぜそんなにも男性的に見えたのかはわからない。もしかしたら、凛々しさがそう見せたのかもしれない。
「アイリーン王女殿下」
「セシル、どうかなさったの」
「アリエル嬢より報告が入りました」
「何かしら」
早くも情報を仕入れたらしいアリエルさんは、鉢植えが落ちてきた理由を仔細に報告書として記していた。一体どこでそんな報告書を作ったんだと言いたくなるレベルの出来だ。それに違和感を覚えはしたが、誰しも秘密にしたいことはある。追求するのは野暮だ。
しかしながら、この閉鎖されたような特別カリキュラムクラスにいるのに、どうしてアリエルさんはそこまで情報通なのか。それだけは気になる。
「セシル、私は少し席を外します」
「おひいさん、一人での行動は」
「あなたは女性のお手洗いにまでついてくる気?」
「し、失礼いたしました」
お手洗いに行くふりをしてセシルに秘密で少し、普通クラスの付近に行ってみることにした。普通のクラスがある場所は同じ校舎内でも階が違う。私たちのいるクラスは一番上の四階で、普通クラスは一階から三階までにある。それぞれの階には職員室や研究室などもあって、周辺にある建物の中でもひと際、大きな建物だ。
「こんな感じになっているのね……」
特別カリキュラムのクラスは一つしか教室がなく、他にある部屋は特別カリキュラム専用の職員室や研究室になるので、三階から下の階とは教室数に違いがある。お手洗いもちゃんと各階にあるので、わざわざ下に行く必要がない。
「本当に人が多いんだわ……」
教室の前を歩けば、ワイワイとクラスメイト同士で話す声がする。貴族位のクラスは三階なので、その前を歩いているのだけれど、それなりに仲が良さそうに見える。さらに下の階へ行き、一階と二階にある一般クラスを見に行けば、貴族クラスよりもクラス数が多く、人数も多かった。貴族クラスと違って男女が同じクラスなのも、一般クラスの特徴だろう。
制服もほぼ同じで違いがあるのはリボンもしくはネクタイの色くらい。今回、階下に行って貴族クラスと一般クラスで色が違うことを知ったし、その二つのクラスと特別カリキュラムクラスはまた同じように色が違うことを知った。余談だけど、私が使っているのはネクタイで、アリエルさんもネクタイだ。そこで、そういえばセシルもネクタイの色は違うかったなぁと思い出す。
「おひいさん、ずいぶんと遠くまで行っていたんだなァ?」
ぼんやりと、話声のする教室前を歩き、また階段へと足をかけた時だった。横から声がして、声の方向へと顔を向けると、自分のいる位置とは反対に位置する、向かい側に立っていた。
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