11-5

 令のその指摘に光輝こうき愕然がくぜんとし、声も出せずに口を何度か開閉する。

 光輝の心も、遂にそれが“真実”であると認識し始めていた。

 そしてそれと同時に、残酷な推論に達していた。


「じゃ、じゃあ……じゃあ僕は! ……!! 事故ではまだ生きていたかもしれない同級生を、僕は……ッ!!」

「それは違う!! 君の同級生たちの死因は確認されている! 君の能力が車内で発動したのは、みんなが既にの話だ!!」


 令に打ち消されても、光輝の動揺は止まらない。

 ひとつ打ち消されても、またひとつ浮かんでくる。


「でもっ、でも僕は! それでも人を傷つけてしまった! SCCAの女の人を、僕は……ッ!!」


 光輝の震える声と同時に、光輝の周囲が

 アスファルトの地面や、コンクリートの壁に、次々と“傷”が刻まれていく。

 圧し潰されそうな光輝の不安が、そのまま辺りを傷付けていた。


「大丈夫だ! 俺は傷を見た、彼女は助かる! 傷はそう深くなかった! 今頃ちゃんと病院で治療を受けている!!」


 令は必死に声を張り上げて光輝をなだめようとする。

 しかし光輝はその眼に涙を浮かべながら声を枯らす。


「でも今は!! あなたを傷付けてしまう!! いや――これ以上になったら、あなたを!!」



 ――光輝が悲痛に叫んだその直後、令は一瞬、余りにも穏やかに、そう、余りにも穏やかに、光輝と目が合った気がした。

 涙をついとその頬に流して、それでも穏やかな表情の光輝を見た気がした。



「――僕を殺してください。もう誰も傷付けないように」



 令は、沈黙する。沈黙して光輝の顔を見上げていた。

 光輝は、覚悟が出来ていた。決断を下す覚悟を。

 令はじっとその顔を見入る。


 ――そして、口を開いた。


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