11-2
一瞬、辺りが夜が明けたように明るくなる。共に
死霊はその爆発を、満足げに眺めていた。その穴の開いた醜い顔面がちらちらと照らされる。今や死霊の目の前では、炎が
ガラリと、その火元で何かが崩れる。
そうしてその後、燃え盛る炎の中から滲み出るように影が浮かび上がり、その影が炎の外に出てくる。
――それは、“
「気分が良くないものだ……自分を盾にするというのは」
幹公木は
炎を背負った幹公木と、闇を背負った死霊が睨み合う。
――瞬間、幹公木が間合いを一気に詰め、槍を薙ぐ。しかし死霊は鎌でそれを受け止め、周辺に金属音が打ち鳴らされる。だがその瞬間死霊は気付くべきだった。
幹公木は――片手で槍を振るっていた。
「槍はまだある!」
その言葉と共に幹公木の左手に瞬時に槍が現れ、
死霊の首は綺麗に切り離され、その頭は幹公木の背後にまで飛んでいった。
死霊の身体は糸が切れたように地に墜ち、幹公木は振り抜いた姿勢を正して、胸を張って堂々と直立する。
――カタカタ。
その音に、歴戦の幹公木の心がぞわりと
――そこでは、死霊の“頭部”が、歯をカタカタと打ち鳴らしながら浮かんでいた。
「バ、バカな……! 無敵なのか……コイツは?!」
そう
――しかし、その斬撃は余りにも
それも、幹公木は振り向きもせずに。
「……とでも、言うと思ったか?」
先程までの
幹公木は身体だけの死霊に向かい正対し、槍を構えた。
「SCCAの捜査官に“無敵”なぞのまやかしを信じる者はいない。目の前で現実に起こっていることなのならば、必ず理屈はある」
瞳のない“器”姿の幹公木の眼光が、鋭く光る。
「全ては“観察”から始まる。冷静に目の前にあるものを観れば、答えは必ず見つかるものだ。――全く、私も焼きが回ったか。この程度のことに気付かなんだとは」
呆れたように一息吐いてから、幹公木はギロリと頭のない死霊を睨みつける。
「答えは常に目の前にあった。堂々とな。そしてそれが正解であると、貴様が頭もないのに私を攻撃した時点で確定した」
死霊を
「どうした? 攻撃してこないが手が尽きたか?」
幹公木のあからさまな挑発にも死霊は沈黙する。幹公木は続けてこう言う。
「私には“まだまだ”ある」
その言葉と共に、周辺の様々な場所の陰から“器”姿の“幹公木”が現れる。
“仕込んで”いたのは死霊だけではなかった。
囲まれていることを理解すると死霊は即座にまた地面を叩こうとしたが、鎌の柄が地面を叩くより速く、幹公木の槍が横からそれを弾く。
「同じ手が通じるものか!」
言いながら幹公木が死霊も薙いで、死霊は仰向けに地面に叩きつけられる。
そしてその瞬間、幾人もの幹公木による
次々と四方八方から、死霊へと槍が襲い来る。死霊がどんな行動を取るよりも速く、地面に槍が突き立てられていった。
――しかし、それらの槍は、ほとんどが死霊の身体を貫いてはいなかった。
そしてそこからは、鎌を持った死霊の右手だけが外に出ている。
幹公木は捕らえられた死霊のその右手を見下ろす。
「貴様の能力が“浮遊させる能力”であることはすぐに見抜けた。だが問題はその異様な身体だった。――しかし、答えは見えた」
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