4-2
「ナニィ?!」
球体となった敵は、令が接触するよりも早く、キューで突かれたように弾け、転がっていく。
「自分を“圧縮”しやがったのか?! “器”自体の形態は変わっているが――壊れていないのかっ!」
想定外に何もない場所へ着地してしまった令が叫ぶ。
敵は倉庫内をゴロゴロと転がって、壁にぶつかる寸前で急ブレーキをかけたように減速し、停止した。
圧縮空気を破裂させ移動し、圧縮空気を破裂させ動きを止めているのだ。
こちらに少しだけゴロリと回転した球体の正面には、
摩擦熱によるものか、舞った
「これでもうお前に攻撃の手はない……!! ボウリングのピンのように弾き飛ばして――いや粉砕してやろう!!!」
「それもうボウリングじゃあねえだろう……!!」
軽口を叩きながらも決して令のこころに余裕がある訳ではなかった。
かなりマズイ変化をされた――そんな動揺が令の頭の中の大半を占めている。
転がられたら接触は困難で、空気で
勝機を見出すためには考える時間が必要だが、そんな令の思いは
圧縮空気の破裂に押され、敵が令に向けて回転し始める。
その回転は加速度的に速さを増す――回転しながら圧縮空気を連続して破裂させ続けているのだ。
「危ねえっ!!」
敵がたとえ圧縮空気を使っても空中に飛べるほどの重量ではないのは唯一の救いか。
令は空中に漂いながら、眼下を望んでなんとか活路を見出そうとする。
敵に注目すれば、令は空中に居るというのに、敵は令の方向に向かって転がってきていた。
――その瞬間、令は悪い予感と共に思い切り脚を振り上げた。
足の先だけ重くしたことにより、令は手裏剣のようにグルグルと回って空中をスライドする。
次の瞬間、倉庫の屋根の一部が吹き飛ぶ。
敵はボウリング場も顔負けの騒音を立てながら壁の近くまで転がると、またストップする。
令は信じられないという思いを胸に敵を凝視した。
「転がりながら、圧縮空気を投げてきやがった……!!」
敵の手が球体の表面にあることは圧縮空気で移動していることからも分かっていたが、それ故に自由が利かないことも承知していた。
もはや腕を回して圧縮空気を投げてくることは出来ない――その判断で空中に留まったが甘かった。
敵はタイミングを見計らって、令の下を通り過ぎる瞬間、回転の力を利用して圧縮空気を投げてきたのだ。
何処までも手を緩めない敵の攻撃に、令は
――しかし、令は断じて勝利を諦めてなどいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます