第2話 命

 あれから、どれくらい経ったのだろう。


何も感じないとはいえ、この空虚な世界でただ1人。新しいものは何も見えず、途方もなく進み続け、ただただ静かな時の中を淡々と過ごす。


それは『僕の存在』について考えさせる時間を、充分にもうけてくれた。


ただそれは、情報量の少ない僕にとっては『退屈な時間』と何ら変わりなく。


決して『有意義な時間』とは言い難いモノだった。


そうして、また途方もない旅を続け、時間が止まった様な感覚に陥り、思考力も衰えてきた時。


何か『暗紅色のモノ』が見えた。


「に‥‥く‥‥?」


その『肉塊にくかい』は、少し乾いた様な質感で、大きさは対照的な物が無いから分からなかったが、『大きい』ようにも


「これが、ぼくっていた『肉体』?」


そう言った瞬間、『魂』が『肉体』に引き寄せられる様に『僕が動き出す』のがわかった。


「‥‥!」


そして僕は『肉体』を手に入れる。


残滓ざんし‥‥のこかすとなった僕の初めての『息』


『‥‥ス‥‥ス』


魂と肉体からだの『結び付き』が甘いのだろう。上手く『人の形』にれなかった。


だが、次第に慣れ、かろうじて人の形に成れた。


「ご‥‥れが‥‥ボ‥ク‥‥」


だ細かい動きは出来ない。

人の形をたもつのがやっとだった。


だが、それでも僕は充分に『僕の存在』をる事が出来た。


今まで感じられなかった『感覚』が‥‥僕の『肉体』で感じられる。


『肉体』を得るという事は、『生』を得るという事だと、僕には理解出来た。


僕はの後、人の形に慣れようと様々な動きを試し、この『世界の質感』、この『肉体の限界』、そして『生きる』と云う事を識った。


そうして人の形に慣れ始めた頃、脳内に『何か』が入り込んでくる様な、激しい頭痛に見舞われた。


「ガぁッ!‥‥頭が‥ッ!」


その時僕は、ふと、かれの言葉を思い出した。


『肉体を求めルンだ。そして願望を忘レルな。。必ズ成し遂げロ‥‥』


『アレはこの事だったのか??』


そう気付いて間も無く、誰かの記憶が流れ込んできた……『僕』の記憶だ。




幼少期、誰も居ない海辺で僕は遊んでいた。


海を初めて見たんだ。

そして海に触れると『命』を感じた。


- だが‥‥何か『足りない』と思ったんだ。




ただそれだけだった‥‥だが、その言葉の中に確かな悪意。そして『初めての憎悪』が多分に含まれているのが判った。


そして、れを理解すればする程、意識が持っていかれそうになった。


僕の身体は形を変え、『人間ひとではない何か』になりたそうにうごめく。


『ア゛‥‥あ⁇ ア⁈」


前の僕に呑まれる感覚に陥りそうな時に、その声は聞こえた。


しょぱなハズレ引いちゃったねぇ?おにーさん」


そのの声が聞こえると『ガッ』と云う音と共に、頭に鈍痛が走り、僕はそのまま気を失ってしまった‥‥。

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