【休載中】 破滅者の残滓

空御津 邃

序章

降誕

第1話 失くしたモノ

 僕は産まれ堕ちた。


その世界は何処までも広く、静かで、風や雲は無く。


空には大きなあかい星が、真っ青な空を隠す。


「何処だ。」


見知らぬ土地『という事しか思い出せない』

確実に言えるのは『僕の世界ではない』とう事。


-ならば誰の世界なのか?


「‥‥歩こう」


と云っても360°、何も無い。

真っ赤な星は真上にあり、時間も『恐らく朝〜昼』という事しかわからない。


「何も感じない……ん⁈」


手が‥‥脚が‥‥

酷く、確かな違和感を感じる‥‥‥‥どうして‥‥


「僕が何を……」


『きみダヨ』


声が‥‥響く‥‥


『思い出セ。「君」ヲ。』


「あ‥‥あ‥‥」


そうだった、視えてきた……


『破滅』があの真っ赤な星を作り上げた。

『憎悪』がこの真っ青な空を作り上げた。

『空虚』がその真っ白な地を作り上げた。


そして、それは‥‥


--『それは僕がしたんだ。』


僕が『破壊した』そして『創造した』


その代償は器から、はみ出す程の力を持った『肉体』の消失。『魂』の分散。


残ったのは魂の『残滓ざんし


『きみハ失くしたモノを取り戻すンダ』


また声が聞こえた。


「君は?」


『僕もソノ「残滓」の一つサ』


「つまり、僕や君の様な魂の残滓が他にも居るのか?」


『ああ、居るトモ。肉体を求めて今も彷徨ってイル』


「肉体を手に入れてどうするんだ?」


『今、残滓達はそれぞれ「意志」を持ってイル。ソレがザンシゆえの物か、芽生えた物かは定かではないガ、肉体を手に入れれば「世界ヲ破壊したぼく」に戻れルンだ。』


「僕は別に世界を破壊したくない。もう破壊された後じゃないか。」


『そうサ。だからこそ、肉体を求めた方がイイ。「魂」はより強い者に惹かレル。肉体を手にシ、魂を奪イ、元の自分に戻レ、そうしたら好きな事をスレバイイ。』


不思議と『好きな事』という言葉が僕を奮い立たせた。残滓故か、どうかは判らない。ただ、その響き、意味が『僕に必要だ』と。

そう思わせたのだ。


「好きな事か‥‥良いね‥‥」


『そのチョウシだ‥‥僕は弱い魂ダ、もう長くナイ。君の一部とナルだろう。僕が消えたら、魂を求メるんだ。肉体を求めルンだ。そして願望を忘レルな。力に呑まれるナ。必ズ成し遂げロ‥‥君は強い。僕とは‥‥違う‥‥』


魂の終わりは呆気あっけなかった。

僕の中にぼくが入ってきて、僕の一部になった。

身体が有った部分に、ほんのりと魂の残滓が行き届き、視認出来るようになった。


「肉体か。」


僕はおもむろに歩を進めた。


--失くしたモノを求めて……

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