第3話
水平線を眺めた後、私は神社の鳥居をくぐった。道中で3人くらいの人とすれ違ったけど、いずれも怪訝な顔された。昼間から制服姿の女子高生が歩いていたら、不思議に思うんだろう。
ちょっとだけ息が切れそうになる長い階段を上り、公園の広場程度の空き地が広がる場所に、真ん中にポツンと小さな神社がそこにはある。
神社の中に続く扉は当たり前のように南京錠がかけられており、入れないようになっている。どんな神様が祀られているのか、私はよく知らない。
ここも時々来る場所だ。対して大きくはなくこじんまりしているが、誰かが掃除をしているのか落ち葉やごみがあることがそんなにない。
私は神社の境内に入りカバンを自分の隣に置き、手を合わせる。
「また来ました。少しだけいさせてください」
念のためお祈りをしてからいるようにしてる。そうじゃないと、なんだか申し訳ない気持ちになるから。
制服のスカートが汚れないように気を付けながら、階段に座った。息を大きく吸い込み綺麗な空気を胸いっぱいに吸い込む。内面に溜まっていた黒いグルグルしたものが、少しだけ抜けていった気がした。
今日は何時に帰ろうかな? どうせ帰ってもお母さんに怒られるだけだし、しばらくここにいようかな。
そんな時だった。
「ニャー」
どこから出てきたのか、黒猫が私の足元にすり寄ってきた。
猫がこんな近くにいたんだ。何度もこの場所には来てるけど、初めて見た。
「あなたも散歩に来たの?」
声に出しながら、私は黒猫の頭を優しくなでた。
毛並みも綺麗ですらっとしてる。野良猫にしては黒い体に汚れなさそう。猫の中ではもしかして美人さんなんじゃないかな?
私になでられるのを気持ちよさそうに目を細めながら、長い尻尾をゆらゆらさせている。しばらくそうしていると、黒猫は私の手から離れ、境内の階段を駆け下りる。
「ついてきて」
「え……?」
今何か聞こえた? 私は周囲に目を向けたけど、私と黒猫以外誰もいない。
静かに風が吹き抜け、少しだけ木々を揺らす。
私は黒猫の方に目を向けた。大きな黄色い瞳を見つめていると、なんだか吸い込まれそうな気がした。
「今、あなたが言ったの?」
私は思わず、黒猫にそう話しかけた。頭の中ではそんなことないと分かっているけど、そうせずにはいられなかった。
けど黒猫は私の言葉に答えるように頷き、スタスタと歩いていく。
「ちょ、ちょっと待って!」
私は置いてあったカバンを慌てて持ち、黒猫の後を追った。
小さな神社の裏側へと、進んでいく。
そこには正面と同じような作りになっており、境内に上るための階段がある。
けど裏側の方には、神社の中に入る為の扉が少しだけ開いており、光が漏れていた。
この神社には何度か来ているけど、扉がこんな風になっているのは見たことがない。
黒猫は扉の前に進むと、人のように立ち上がり、その扉を開けて中に入ってしまった。
とてもとても不思議だけど、なんだか悪い感じはしない。いきなり取って食われはしないだろう。多分、きっとそう。
自分に言い聞かせるように、私は大きく頷いた。
「お邪魔します!」と言いながら扉の取っ手を取り、光指す先へ足を進めた。
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