第2話

私は家を飛び出してから、学校には行かずに砂浜を歩いていた。

海の波がザザーン、ザザーンと繰り返し打ち寄せる音が心地いい。6月半ばの海辺は過ごしやすく、この時間では誰もいない。

学校に行きたくない時は、よく海に来ていた。

あとで学校からお母さんに連絡がいって、後で絶対怒られるけど、窮屈でつまらない場所に行くよりも海でぼーっとしていた方がずっといい。

立ち止まって、水平線をじっと眺める。太陽は私の斜め上にあり、陽気な気候にあくびが出た。私の頭上をすずめが3匹飛んで行った。私も一緒に、どこか遠くへ飛んでいきたい。

別に学校がつまらないわけじゃない。友達もそれなりにいるし、先生も別に嫌いじゃない。もちろん面倒くさい先生もいるけど。

それでも、誰もいない遠くの場所へ、私のことを知らない人がいる場所へ。何なら誰もいない場所の方がずっといい。私は1人になりたいのだ。

私のしたいことってなんだろう?

私は何になりたいんだろう?

私は何を目指せばいいんだろう?

最近このことばかり考える。お母さんに朝言われたせいもあるだろうけど、今日はやけにこの考えが、頭の中をぐるぐる回る。

こういう時に、どうしたらいいのか分からない。

私は自分の両手をグーにして、頭をポカポカと叩いた。こうすれば、頭の中がからっぽになると思ったけど、相変わらずぐるぐると回っている。

公道に戻ろう。もう少し行くと、神社があるはずだ。あそこもとても静かな場所で、落ち着くにはちょうどいい。

私は頭をブンブンと振り、再び砂浜を歩き始めた。

歩いていると、砂浜に綺麗な貝殻が落ちているのを見つけた。中を除くと虹色の模様が見える。

手に取って耳に当ててみた。目の前から聞こえる波の音と耳から聞こえてくる波の音が合わさって、なんだか不思議だ。貝殻から聞こえてくる音は波の音って言うけど、聞き比べてみると、あまりそうは思えないと、私は思う。

貝殻の砂を掃ってから、私はそれをズボンのポケットに入れた。



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