魔幻の紙縒り
Kaede.M
魔幻の紙縒り 1
以前、その幼稚園の生徒だった子が、奇妙な体験を話し始めた。
それは、現実だったのか?それとも、リアルな夢だったのか?
その子の話によると、不思議なことに、年に5回だけ、毎回、同じ夢を見るそうだ。まるで、過去にそのことを体験したかのような夢を……。
夢を見るのは、決まって五つの節句の日だ。人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)だが、とりわけ、7月7日だけ、それが詳細に表現されるらしい。
どう考えても、それは夢ではなく、過去の記憶としか受け取れない。だが、現実は、その夢の内容とは違う。
なぜ、この話が、ちょっとした話題になったのかと言うと、他にも同じことを言う子がいたからだ。しかも、一人や二人じゃなかった。
その全員が、幼い頃、その幼稚園の生徒だったと言う。
1年を通して、同じ日に、共通の夢を見るなんてことがあるだろうか……。
この子たちの証言では、その幼稚園で殺人事件が起きたのだと言う。加害者は一人で、被害者は生徒二人を含む三人だと言う。では、誰が犯人で、誰が被害者だったのか?と問うと、それについても、同じ答えが返ってきたと言う。被害者については名前までわかると言う。
この話題に食いついたテレビ局が、調査を開始したが、結局、何も解明されなかった。
なぜなら、被害者とされる先生と生徒の情報が、実際と違っていたからだ。
どこの誰かという固有名詞までわかっているのに、実際に、その家を訪ねると「うちには、そんな名前の息子はいない」「そもそも、今まで一度も子供を授かったことはない」という答えが返ってきたという。戸籍を調べても、近所の人の話を聞いても、それは間違いないと言う。
もう一人、生徒の被害者がいるらしいが、その子の家族や近所の人からも、全く同じ答えが返ってきたと言う。
三人目の被害者は先生らしいが、その当時も含め現在、その幼稚園で働いている保育士や関係者の証言では、「そんな名前の人は、過去も現在も働いていない」と言うので、調査は打ち切りになった。
テレビ局側も、都市伝説として扱うには弱いとのことで、放送すらされなかった。
共通の夢を見た……という証言を解明するのは不可能だった。
現在、その子たちは、まだ、未成年なので、結局、この話題は、子供の戯言として片付けられてしまった。
その夢の内容は、いったい何だったのだろう?
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