一夜のキリトリセン

一夜のキリトリセン ～同題異話SR～

　「ふわぁ～・・・」

　部屋でテレビを見ていたらふいに眠気が襲（おそ）ってきた。今はお盆休み。連日仕事がないと思うと、ついつい夜更かしが増える。

　普段は見ることができない海外ドラマのDVDをまとめて見ながらビールを飲む。それを昼間からできるのだ。最高だ。数年前、学生時代は友人と集まって、よくDVD鑑賞をしたものだが、なんだかずいぶん昔のような気がする。

　さて、こういう生活をする時に意外と困るのが食事だ。DVDを見ながら、ビールとともにスナック菓子を食べたりするので、それほど腹が減るわけではない。

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　・・

　・・・

　まあ、そうは言っても腹は減る。しかし、がっつりと食べたいという感じではない。何よりドラマの続きが気になるから、買い出しや外食などは選択肢にない。

　と、なると・・・

　私はキッチンに向かい、流し台の下からいつものあれを取り出した。

　そう、一人暮らしの強い味方【カップラーメン】である。

　昔ながらのカップラーメン、袋ラーメンもおいしいが、最近のインスタント食品の進化は目覚ましいものがある。カップラーメンもしかりだ。この【かやく】と呼ばれる、ラーメンの具。最近ではなんとチャーシューまで入っているのだ！！そのうえ、このチャーシュー、某謎肉などとは違い、まさに、ジューシーさも感じられる優れもの。味を想像するだけで垂涎ものである。できれば2枚入れてほしいくらいだ。

　私は眠くなりながらも、軽い空腹を満たすべく、カップラーメンの【調理】にかかる。

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　・・

　・・・

　が！ないぞ！！あるべきはずのキリトリセンが！！！決して寝ぼけているわけではない。何度も作ったラーメンだ。そんなこと間違えるはずはない！！

　焦った私は、うっかり・・・そう、うっかり、袋を力任せに破ってしまったのだ。その結果は・・・

　皆さんにも予測がつくだろう。肉厚のチャーシューは見事に宙を舞い、まるでスローモーションのように床に落ちてしまったのだ。。。

…　1

… …　2

　が、日本には素晴らしい文化がある！！そう三秒ルールだ！！

　私は急ぎチャーシューを拾い上げ、埃（ほこり）を払う。いや、掃除はしているので埃などはないと信じてはいるが・・・念のため、軽く水道水でも洗った。

　私は何事もなかったようにカップにチャーシューとお湯を入れる。

　そして、私にはさらなる試練が・・・

　そう！スープだ！！スープにもキリトリセンが・・・

　見つかった！！

　キリトリセンはあるのだが、嫌な予感しかしない。先ほど華麗にムーンサルト（二回転一回ひねり宙返り）を決めたチャーシューが脳裏をよぎる。仕方がない。チャーシューの愚行を犯（おか）すと次は悲惨だ。今度はキッチンがべたついた砂場になりかねない。

　✂・・・・・・キリトリ・・・・・・

　私は切り取り線を切り取るための伝説級アイテム、エクスカリバー（　聖剣　）。。。ではなく、鋏（はさみ）を用意し慎重にスープの袋の口を開けた。

　さて、私の戦いは終わった。戦利品とともにDVDの続きを楽しむことにしよう。

　そう、夜はこれからだ。