第4話 彼女の願い事

「ど、どんな時でも一緒にいてくれる友達が欲しい。本当は幼なじみって存在に憧れてるけど…………それは無理だろうから、親友が欲しい。私のことを一番に考えて、私のことを大事にしてくれる親友が欲しいな」


 孤独なナツミちゃんは優しさを求めた。

 願い事はすぐに叶った。

 叶っていた。

 ナツミちゃんも、も気付かなかっただけで。


 猿の手に無理な事はない。

 出来ない事はない。

 どんな願い事も叶える。

 だから彼女の思念を読み取り、とても巧妙に、ナツミちゃんの理想像を具現化した。

 幼なじみで、ナツミちゃんを大事に大事にする親友の、私という存在を。

 あまりにも巧妙すぎて、私自身が人間ではないことに気付かなかった。自分がナツミちゃんの幼なじみで、小さな頃からずっと一緒にいると思い込むほどに。


「でもそんな事はどうでもいいでしょう?私はナツミちゃんが願った通り、あなたを大事に大事にする友達だよ。なのにどうして、私を邪険にするの?悲しいよナツミちゃん」


 ただひとつの難点は、霊感のないナツミちゃんが思念体である私の姿を見ることが出来なかったことだ。ナツミちゃんに私の声が届くはずがなかった。私と目が合うわけがなかった。だって初めから私が視えていなかったのだから。辛うじて触れることは出来ても、言葉を交わすことが出来ない。だからナツミちゃんは怯える。彼女のためを思って私がやること全てを怪奇現象おそろしいという。それはとても寂しいことだ。


「でも良いの、許してあげる。だってナツミちゃんは大事な大事な友達だから」


 随分と大人しくなったナツミちゃんを見下ろす。さっきまで怯えて震えて泣いていたのが嘘のよう。


「だから、ちゃんと最期の願い事も叶えてあげる」


 ミシミシと、骨が軋む音がする。ナツミちゃんの首は細くて片手でも頸動脈を塞げた。ナツミちゃんの口から垂れたよだれが私の手に落ちる。空いた手で顎を耳の方へと捻り上げると鈍い音がした。小刻みに痙攣していたナツミちゃんはもう動かない。


私達さるのてが叶えてあげる」


 骨がへし折れ、ぶらんと垂れ下がったナツミちゃんの首を支える。頭を抱き抱えると恐怖と死の苦痛で見開かれた彼女の目と合った。可哀想で可愛いナツミちゃん。嗚呼、やっと私を見てくれた。


「大丈夫、私に任せて。もう苦しまなくていいからね」

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