第7話 女子会とメグちゃん

やっほ。

中間テストを終えた日の放課後と言っても午前中で終わるので時刻は12時前。

あたし大門月羽はこの頃お馴染みになったK教室に来ていた。

K教室ってこの学校にここしかないみたいだから4-は省略します。

教室には愛依奈ちゃんしかおらず、涼夜君は別の友達とご飯を食べに行ってそのまま帰宅。楓ちゃんは図書室に本を借りに行ったあとに来るらしい。理稀よしきはあのお姉さんに拉致らちされて一緒に帰っていった。

ってことは…今日この部屋に男子は来ない。

絶好のガールズトークチャンス!

今日中に後から来る楓ちゃんを含む2人の理稀に対する色々な思い等を聞き出してやるんだから。

とは思ったものの…

お互い特にやることもなくソファーに座ってスマホをいじっている。

こういう時話を切り出すのって難しいよね…

これってコミュ障?

「あのさー」

そんな事を考えていると愛依奈ちゃんが話しかけてきた。

「ん?なにかな?」

「お昼食べに行かない? お腹鳴っちゃって…あははー」

「そうだね。食堂行く?」

「うーん、ここで食べたいからコンビニ行こうよ」

「いいよー」

という事で学校近くのコンビニへ向かった。

あたしはおにぎり1つに春雨スープを購入。

愛依奈ちゃんは…

大盛りカップ焼きそば、唐揚げ、海鮮サラダ、チーズケーキの4品を買っていた。

よく食べるなぁ…

待てよ? そのふくよかな胸はその食べ物から出来ているのか? そうなのか?

食べる量を増やせばあたしも…

しかし、結局追加せずにK教室に戻ってきた。

「月羽ちゃんそれだけで足りるの? 女子のごはんって感じだわー」

「まぁ。あまり食べるとお肉付いちゃうからねー」

「ふーん。あたしはあまり気にしたことないなぁ。食べたいものを食べるからその量だとすぐに空腹だわ。学校では周りの目があるから多少は気にしてるけど家だとその辺の男子並みに食べてるかな」

やっぱり…食べたものが全てそこに付いているのか。

やっぱり世の中不公平ですね。

平等なんてない。

愛依奈ちゃんの胸元を凝視していると「触ってみる?」と聞いてきたので少しだけ触らせていただきました。

触り心地良いなぁなんて思った後に視線を自分の胸元に戻すと山はなく足のつま先が見えた。

「はぁ……」

思わずため息。

やっぱり世の中理不尽だよ。

「ま、まぁ。そういうのが好きな人もいるし、これ肩凝りするよ?」

愛依奈ちゃんは目を泳がせながら必死のフォローするもあたしの心はより傷つきました。



それから少しすると楓ちゃんが入ってきた。

「遅くなりまし……あ、あれっ?」

恐らくヨシくんが居ないことに戸惑っているんだろう。

「彼ならあの悪魔のような姉に拉致されたわ」

そう伝えると「へ?悪魔?」とつぶやき首をかしげた。

「ジョーカー待ってたよーん」

愛依奈ちゃんはソファーから飛び出し楓ちゃんの方へ向かい抱きついた。

「ちょっと…抱きつかないでよ…」

「良いじゃん。減るもんじゃないし、あれれ? 今日はいい香りがしますねぇ」

愛依奈ちゃんがそう言うと楓ちゃんはオロオロし始めた。

「あ、これは…余ってた香水をつけてみたの…」

今日つける必要なくない?

まさか、ヨシくんへ休み前のアピールか?

「ふーん。なるほどねぇ。そういえばテスト終わった時に理稀がなんか柑橘系のいい香りするって言ってたぞ?」

愛依奈ちゃんの言葉を聞いた瞬間表情が一気に明るくなった。

「ほ、ホント? う、嬉しいなぁ」

珍しく楓ちゃんがニヤニヤしている。

……。

もう聞いてやる!

「楓ちゃんってヨシく…理稀の事好きなの?」

楓ちゃんの顔が一気に赤くなった。

「な、な、なんでわかったの?」

それ本気で言ってる?

「いやぁーヨシくんの話をするといい反応するし、よくチラ見しているじゃん」

「理稀君は私にとって…かけがえのない大切な人。だから…」

楓ちゃんは深く深呼吸をした。

そして。

「わたし…理稀君のこと好きです」

……。

「そ、そうなんだ…」

いやぁ…あたしに向かって告白されてもねぇ。

「あたしはジョーカのこと好きだよぉー。可愛いなぁもう」

愛依奈ちゃんは本気なのかわからないけど楓ちゃんにベタベタしている。

一方楓ちゃんは満更でもない表情をしている。

あたしは置いてあった紙パックのストローに口をつける。

「ねねっ。月羽ちゃんは理稀の事好きでしょ?」

ブッー…ゴホッ…ゴホッ…

飲んでいたカフェオレを吹き出してしまった…

「き、急な質問だねぇ。まぁ大切な存在と言うか…一緒に居たいというかぁ…」

吹き出したカフェオレを拭きながら答える。

「素直に好きって言っちゃえよっ!」

んな! そんなこと言えるわけないでしょ!

「そ、そういう愛依奈ちゃんはどうなのよ? 割と一緒にいるでしょ? 入学式の時も仲よさそうに話していたし」

口元に人差し指を当ててわざとらしい動きをする。

「うーん… 好きだよ?」

「「え…」」

フリーズするあたしと楓ちゃん。

ヤバイ…何となくだけどこの3人で一斉に告白したら愛依奈ちゃんが勝ちそう…

その次に独特の雰囲気を持ってる楓ちゃん…最下位のあたし。

これ…終わったんじゃね?

「いやー彼といると楽しいしぃ…入学式の時から仲良くさせてもらってるからねぇ」

さっき言った『彼』は彼氏とかいう意味じゃなくて人称の方だとわかってるんだけど…

こういう時って変に捉えてしまうのよね…

「あっ、一回だけ下着見られたことあったわ。あははー」

……。

……。

あたしは何も言えなかった。

楓ちゃんに至っては口が半開きになって魂が抜けかかっている。

「それってどういうことかな?」

怒りの感情を抑えながら尋ねた。

返答次第で501号室に乗り込んでお説教。

「へ? うーんとね。見られた」

はい。許しませーん。

あ、あたし見られたことないのに…

って何考えてるのよ…

「水色の下着を見た時の反応面白かったわ」

「詳しく教えて!」

珍しく楓ちゃんがやや大きい声を出した。

「おぉう。えーっとね…」

うん? 目が泳いでいるぞ。

まさか…

「目を逸らされた…かなっ?」

……。

それのどこが面白いん??

「違うんだよーその時の表情!それがねーオロオロしてたと言うか…新鮮で面白かったんだよ」

ため息を吐く楓ちゃん。

「帰ろっか…」

「うん。帰る」

「あーー。待って待って。そしたら彼の好きなタイプ知りたくない?」

教室の出口に向かっていたあたしと楓ちゃんの動きピタッと止まり見事にシンクロした。

「前にメッセでやり取りしたのを見せるから」

そういうとスマホの画面を見せてきた。

アイーナ『ねねっ。好きな人いる?』

よしき 『藪から棒にどうした(笑)』

アイーナ 『はよ答えんかい!』

よしき 『えぇ…愛依奈かな(〃ω〃)』

ここまで見た瞬間にあたしの怒りがピークに達し、隣からとんでもない絶望感を感じました。

「まぁまぁ…2人とも待ってって。続きあるから」

アイーナ『マジ? あたしのこと好きなの?』

よしき 『冗談だよー٩( 'ω' )و』

アイーナ『またまたー好きなんでしょ? あたしのこと(≧∇≦)』

よしき 『それはない』

思わずガッツポーズするあたしと絶望から希望に変わったのか表情が明るくなった楓ちゃん。

「2人ともひどいなぁ」

愛依奈ちゃんは少しニコッとしながらも寂しそうに言った。

アイーナ『チッ…じゃあどんな子がタイプなん?』

よしき『そうだな…やっぱり一緒に居て楽しい人かな。それだけ』

アイーナ『嘘つけー。あたしと理稀君の仲なんだし正直に言っちゃえよ。誰にも見せないってー』

画面をスクロールしてた愛依奈ちゃんが「あっ…」と声を出した。

この人信用ならん。

「愛依奈ちゃん…これって」

「あーこれね…この時はそう思ったんだわ。ほら、人の考えって変わるじゃん?」

ヨシくんとこの子を一緒にさせちゃダメだ。

変な使命感が生まれた。

「ってことでここで終了ねー」

「待てっ。続き見せなさいよ」

「愛依奈ちゃん。わたしも…気になる」

スマホをポケットに入れようとする愛依奈ちゃんの手を2人がかりで抑える。

「わかったって…スマホ壊れるから離してくださいな」

2人が離すと再び画面を見せてくれた。

アイーナ『ちなみに巨乳、貧乳どっちが好き?』

アイーナ『おーい。既読無視するなー(ㆀ˘・з・˘)』

よしき『ごめん。寝てたわ』

アイーナ『それ興味ない男子に対して女子が送るやつー(笑)』

よしき『それな(笑) あれ酷いよなー月羽にやられたことあるんだよ(´・ω・`)』

その瞬間2人の視線を感じた。特に楓ちゃんからは『この人サイテー』と言わんばかりのジト目をいただきました…

「違う違う!あの時は本当に寝落ちしてたんだって…あ、あたしがヨシくんのこと興味ないわけがないでしょ」

「フッ…どうだか。本当はあまり興味ないんじゃ……いてっ」

変なこと言う人に制裁を加えました。

まったくもう。そんなわけないじゃん。

ということで愛依奈ちゃんの頭に軽いチョップを打ち込みました。

「暴力はんたーい。てか、もういいでしょ?」

個人的に最後の質問の答えを知りたいけどもしも平野より山派だった場合精神的ダメージが大きすぎるので見ないことにした。


その後再び3人で雑談をしていると教室のドアが開いた。

「みんなテストおつかれー。あたしも採点おつかれーってことでハーブティ入れて。えーっと楓ちゃん!」

「えぇ…なんでわたし…?」

絶対に愛依奈ちゃんに行くと思ってたらしく体をビクッとさせていた。それから渋々お湯を沸かしに行った。

「自分で入れなよー。楓ちゃん可愛そうに…」

「えー。だって疲れたんだもん…家に帰っても1人だしこういう時じゃないと誰かに入れてもらったお茶飲めないのよ。愛依奈ちゃん膝枕してー」

神田先生はそう言って愛依奈ちゃんの太ももを枕にする。

「ちょっ、まだ許可してないんだけど…ってメグちゃんの髪いい匂いだねー」

愛依奈ちゃんは先生の髪をクンクンしている。

「あーこれね。試供品をもらったからつけてみたの。いい感じ?」

「良いんじゃね? あたしは好きよ」

「そしたら買ってみようかなー」

この風景自宅での仲良し姉妹にしか見えん…

てか、授業中とこの教室での神田先生の差がありすぎて別人じゃないのかと疑う日々…

授業中なんてオロオロして頼りない感じするけど今はなんと言うか…学生っぽい。

ふと思ったが制服着たらわからないんじゃね?

き、着せたい…

((o(^∇^)o))←今のあたしこんな感じだと思う。

「ねねっ。神田先生に制服着させたいんだけど…どうかな?」

少しの沈黙があったが…やはりあの子が反応した。

「いいねぇー。コスプレさせようぜー」

「きゃっ、急に立ち上がらないでよー。ビックリしたなぁ…てか、コスプレはマズイでしょ。ここ学校よ?」

絶対そう言ってくると思った。

「ふーん。この置物達を見てもそれを言うかね?」

図星を突かれたらしく、何も言えない神田先生。

「せ、制服がないわよ? 物が無ければ着れないわねぇ。いやー残念」

その言い訳も想定済み…ドヤっ。

「ここに紙袋があります。開けてみてくださ……」

「嫌です」

即答(笑)

「あの…先生の制服姿…み、見たいなぁ…」

マグカップを見ながらジョーカが呟く。

上目遣いで指をちょこちょこ動かすその仕草…可愛すぎるでしょ。天使なの?

頼むからヨシくんの前では発動させないでください。

「わ、わかったわよ…少しだけね。バレたらこの学校に居られなくなりそうだし」

「その時は発案者の月羽ちゃんが責任取るよ」

なんでやねん!

神田先生はため息をついてから渋々スーツを脱ぎ始める。

いやいや。ここで着替えるんかい。

確かに女子しか居ないけど誰か入ってくる可能性があるよ?

けど…脱ぎ方といい下着といい…

エロい!!

女のあたしですら魅了されてるし、愛依奈ちゃんに至っては「おぉ…す、すごい」目が釘付けになってるし、楓ちゃんはチラ見して赤面させている。

1つ安心したのは山がそんなに無かったことな。

フッ…けどこの状態ならあたしといい勝負。ってあれ?

よく見ると違和感があった。

「メグちゃんって…あまり大きくないんだね」

あっ、また1人敵に回したぞ。

「フフフッ…これは偽りの姿よ」

え? 中二病?

「ブラを取るともうちょっとあるわよ? 愛依奈ちゃんぐらいかしら」

……。

貴様ー敵だ。

「そうなんだー。隠してるん?その時になったら相手を驚かせるため?ねねっブラ取ってみてよー」

ひ、昼間からなんて話をしてるのよ。

「取れるわけないでしょ…教師やってる時邪魔なのよ…だから押さえてるわけ……って月羽ちゃん目つき怖いわよ」

「先生…敵なんですね」

先生は頭の上に『???』を浮かべた表情をしてたがあたしの胸元見て小声で「あっ…」と言いました。

チクショー世の中不平等だー。

そして着替え終わった先生を見た瞬間

3人とも絶句した。

この教室にいるメンバーで一番JKらしかったのだ。

「メグちゃんかわいー!! これからその格好で教師やりなよー」

「いやいや。普通にダメでしょ…って写真撮らないでよね」

3人が必死にスマホを先生…いや、制服着てるから今は恵海めぐみちゃんかな?に向けている。

黒色のブレザーに赤というか小豆色と白のチェック柄がうちの冬服なんだけどいやー似合う。

これは夏服も着させたい!!

撮影会を終えて4人でお茶を飲んでいると廊下の方から話し声が聞こえてきた。

まだ恵海ちゃん状態だから見られたらマズイのでは?

一方恵海ちゃんは愛依奈ちゃんと笑談しているが笑い声がうるさい…

前に涼夜君が紙を投げつけた気持ちがわかる。

声をかけようとした瞬間教室のドアが開く。

ピタッと止まる話し声。

一気に静寂に包まれた教室で恐る恐る入口の方を見る4人。

すると見覚えのある人がそこにいた。

「あぁ…お邪魔しちゃったかな? 忘れ物しちゃってね…すぐ帰るわ」


そこにいたのは気まずそうなヨシくんであった。



どうもどうもー。

愛依奈ちゃんだよー。

こういう感じに語るのって初めてだよね。

いつか話してみたかったので理稀の出番奪っちゃいました(笑)

んで、なんであたしが語ろうとしているのかというとー。理稀の知らないところであるプランを練っていたからなのでーす。

それはつまり…理稀とジョーカ、月羽ちゃんを近づけよう作戦です。パチパチー。

ま、これはこの前あたしと理稀の仲が誤解されてしまったのであたしは無実を証明するのと2人のターゲットから外れるため。

護身です。

って事で…あたしは迫り来るゴールデンウィークにみんなで出掛けてあたしと涼夜がこっそり抜ければいい感じになるのではないかと考えたのです!!

あたしが「好きだよ」なんて言わなければこんなことにならなかったんだけどね。

あの時『Like』の方だと思ってたんだけど『Love』の方で話が進んでいるとは…

ま、みんなで出かけるのも悪くない。

ということで土曜日にも関わらず全員+1人という驚異の参加率。

そして今はその+1人が色々荒らしに入ってる。

「あたしはー。熱海に行きたい!」

「あの…お姉さん? 軽井沢か那須のどちらかと言いましたけど?」

「えー。最初から案に出してたけど平面な月羽ちゃんが無視してたからぁ」

「うっさいわ! 無視してないし」

「ふーん。じゃ、理稀と2人で行ってくるわ」

「「ダメです!!」」

……。

そう。あの日理稀と一緒にお姉さんもこの部室に来てそこからあたし企画の旅行に参加することになった。

人数多いのは楽しくなるしお姉さんのこと好きだから良いんだけど…月羽ちゃんとあそこまで仲が悪いのは予想外。

あたしの計画が…

ここに集合したのが9時前。そこからあたしが発案してから話が進まず、雑談して気づくと12時を回っていた。

途中から話が脱線しまくり、理稀と涼夜とメグちゃんが端っこで別の雑談を始めた。

あたしはホワイトボードの前に固まる。

月羽ちゃんと亜梨栖さんのバトルは続く…

「大体…なんで関係者じゃないブラコンお姉さんがいるんですか?」

「あら。ブラコンだなんて褒め言葉をありがとう。 弟がお世話になっているところに顔を出して何か問題でも? 貴女こそ1人だけ別のクラスじゃない?」

「クラスは違えど同級生ですから? ここは1年生の集まりです。ねっ。かえ……あれ?」

変なパスから逃れるためジョーカはメグちゃんグループに避難していた。

き、決まらん…

「理稀ー。こっち来ーい」

急に呼ばれた理稀は慌ててこっちに歩いていた。

「なに? どうしたん?」

「ちょっと耳貸して」

するとあたしの口元に顔を近づけてきた。

ふぅーー。

軽い息を吹きかける。

「うぉわーー」

理稀は風でめくれそうなスカートを押さえる女子のように耳を押させる。

その瞬間全員がこっちを向く。

この時を待ってた。

「はい。ちゅもーく。あまりにも決まらないので愛依奈ちゃんはオコです。 なので…あと5分以内に決められなければ理稀はあたしのものにします。好きだから」

それを聞いた瞬間にジョーカがダッシュでソファーに向かった。

どんだけ好きなのよ…

涼夜とメグちゃんも渋々ソファーに移動してきた。

「お前理稀の事好きなのか?」

耳元で涼夜が聞いてきた。

「好きだよ? 友達として」

すると納得してソファーに向かっていった。

てか、理稀パワーすごっ。これ使えるわ。

「集合感謝します。では軽井沢、那須、熱海この3ヶ所から多数決で決めたいと思います。誰がどこに手を挙げたとかで揉めたくないのでこの紙に行きたい場所を書いてください」

手で破った紙をみんなの前に配る。

「行きたい場所1ヶ所を記入すること。ではスタート」

その瞬間にテストかよというツッコミいただきました。

そういうの嬉しいです( ^ω^ )

その後集計すると軽井沢が僅差で多かったので軽井沢に決定しました。

ちなみに票は『軽井沢 3票』『那須 2票』『熱海 2票』でした。

決まったので残りは自由時間にすることにしました。

「あ、あのっ…」

ジョーカが右腕をちょこっと挙げて立ち上がった。

「軽井沢だったらあたしの別荘あるから泊まれるか聞いてみる…ね」

思わぬ単語にジョーカ以外の全員が絶句。

ドラマやアニメでありがちなやつが目の前で起きている。

「別荘だってー。テンション上がるね」

「そうだな。まさか誰かの別荘に行くことになるとは思わなかったな」

月羽ちゃんと理稀が仲良く話しているのをむっとした感じで睨む亜梨栖さん。

「ちなみに何泊するんだ?」

涼夜がスマホをいじりながら聞いていた。

「ジョーカの別荘って何泊いける? 出来れば2泊3日がいいかな」

「愛依奈ちゃん…ちょっと待っててね……うーんとね何泊でも良いって」

ほう。家追い出されたらジョーカの別荘に居候しよう。

「そしたらー。2泊3日でいきたいと思いまーす。無理な人?」

特に居なかったので2泊3日に決定。

「そういや、メグちゃん大丈夫なん? 休みの日も学校行くんでしょ?」

「大丈夫よ。なんか合宿扱いになるらしいからお給料も出るらし…いや、なんでも…」

全員の視線がメグちゃんに集中する。

「みんなは給料出ないんだからご飯奢ってよねっ」

すかさず食いつくあたし。

「あたしは社会人なのよ…お給料がないと生活できないの」

「ふーん。この写真が目に入らぬかね?」

メグちゃんのコスプレ写真を見せつける。

すると動きが固まった。

「あー。その写真はあまり見せないでー」

こう発言したのはメグちゃんではなく、月羽ちゃん。

それはこの前のメグちゃんの制服コスを偶然見てしまった理稀が「誰? 可愛い…」と言い放ったから。

理稀は誰かに対して可愛いだなんていうやつじゃないからあの場が凍りついたのであった。

その後メグちゃんの制服コスは封印されることになった。

あたしは好きだったんだけどなぁ。

そしてあれがメグちゃんだと知った時の理稀の反応が面白かった。

担任だから『誰だかわかるでしょー?』ってなると思う。

けど、髪型と服装変えたら本当に別人だったので気づかないのも納得。

その後理稀のメグちゃんを見る目が若干変わっており、もしかしたらメグちゃんのこと好きなのではないかと思うのよ。

普段だったらソファーから動かない理稀が教室の隅にあるメグちゃんスペースに移動したぐらいだし。

ま、メグちゃんの方は理稀の事なんとも思ってないんだろうね。第一に生徒と教師だし。

話が脱線したけど今回の旅行は2泊3日の軽井沢(楓様の別荘)に決定。

そんな感じで旅行のプランが決まったのであとはGWを待つのみ。

楽しみだなー。



どうも。

やっと出番をもらえた理稀です。

今日は旅行の前日。荷物をまとめて玄関に置くと姉さんが来た。

「ねぇ。その荷物を持って明日の朝まで家を空けて欲しいんだけど?」

……は?

どうやら荷物を持って出て行けという事らしい。

俺なんか悪いことしたのかな?

少し抵抗してみたものの勝てなそうだったので荷物を持って渋々家を出た。

ここ俺の家なのに…

とりあえず月羽の家に泊まらせてもらうか。

そう思いインターホンを鳴らすも出てこない。

一度着信を入れてみるも出てくれない。

仕方なくマンションから出て駅前のハンバーガー屋に入った。

ポテトとメロンソーダを頼み空いている席に座ると通路を挟んだ奥の2人席に知っている人がいた。

イヤホンを付けてスマホを横にしているので動画でも観ているのだろう。

誰かと待ち合わせかもしれないが、とりあえず声をかけてみることにした。

「どうもー。何やってるんですか?」

俺が声をかけるとその相手は目線を上にして俺と目が合った。

「わぁ。神崎くん何やってるの?」

その相手とはメグちゃんこと…神田先生でした。

「いやー。うちの姉さんに家を追い出されてしまって…今日の宿を探しているところです…」

「そ、そうなの? と、とりあえずここ座りなよ 」

先生はバッグを慌てて自分側に置き向かいの席を空けてくれた。

俺は前居た席からトレーを持ってきて置く。

「追い出されたって…ケンカでもしたの?」

「そんなことはないんですけどね…午後3時ぐらいまでいっしょにテレビ観てましたし」

俺はポテトを食べながら今日を振り返るが怒らせるようなことはしていないなぁ。

「ま、後で聞いてみなよ。そしたら…わたしの家に来る?」

「後で聞いてみま……えっ?」

思いもよらぬ提案に絶句する。

「行く当てがないんでしょ。うちの生徒とこうして会っちゃったんだもん。放置出来ないわよ」

先生はそう言いながら最近発売されたタブルバーベキューバーガーを食べる。

それ結構ボリュームあるやつじゃん。

「大丈夫であればぜひお願いします」

すると先生はハンバーガーを口に入れて頷き、口に含んでいたものを飲み込むと口を開く。

「あっ。その代わり…うち汚いから。あとわたしの生活スタイルに文句を言わないこと。わかった?」

俺は頷く。

行く当てのない俺を泊めさせてくれるのでよっぽどのことがない限り文句は言わないつもり。

「そしたら早速向かうわよ」

「わっ。まだポテト残ってるんで」

「早く早くー」

こうして俺はメグちゃん邸に泊まることになった。


ハンバーガー屋からメグちゃん邸までは車で20分ちょっとだった。

学校の最寄り駅から2つ隣の駅を少し山の方へ向かったところにある新築のアパートだった。

間取りは1Kでロフト付き。

玄関を入ると右側にキッチンがあり、左側に脱衣所兼トイレとその奥に浴室がある。

キッチンは昨日の食べ残しであろうカップ麺が置いてある以外綺麗だった。

部屋に入ると右側にベットがありその向かいにはテレビと本棚がある。

本棚が邪魔してクローゼットが全開しないらしい。

これ配置ミスでしょ…

そして部屋の真ん中に白いテーブルが置いてある。

「なにー?汚いとか思ったわけ? これでも一昨日軽く片付けたんだからね」

「そんなことありませんよ。うちより綺麗です」

実際のところあの居候いそうろうが散らかして、それを片付けるのが日課になりつつある。

「飲み物適当に飲んでいいわよ? ついでにあたしコーラもお願いね」

冷蔵庫を開けると意外と材料が入っていた。

「先生自炊するんですか?」

「それね。昨日妹が来てご飯作ってくれる予定だったんだけど、来れなくなって余ったやつ。わたし料理苦手なのよねー」

それなら泊めてくれるお礼になにか作ってあげようと思った。

「そしたら俺が何か作りますよ? 今日のお礼したいですし」

「そう。じゃあお願いしようかしら」

こうして俺は先生の家でカレーを作ることにした。

カレーなら冷凍保存すればしばらく食べることができるし。

俺は切った具材を煮込み、そこに期限が心配な蜂蜜を入れてケチャップやソースを入れて煮込む。

味見するといつもの味なので一安心。

後ろの脱衣所の方からいい香りがするのでどうやらシャワーを浴びているようだ。

カレーを作り終えたので部屋に戻りテレビを見ているとドアが開いた。

そこには下着姿で頭を乾かすメグちゃん。

おいっ、教え子の前で下着姿って…しかし、それを打ち消すような違和感を覚えた。

「あれ? そんなに胸大きかったですか?」

しまった…つい聞いてしまったけどこれマズイ質問じゃ…

「セクハラだぞっ。ま、別に神崎くんなら良いけど。普段邪魔だからブラで無理矢理押さえつけているのよ。どう?普段とは違う大きなお胸は?」

「いや…その。いいと思います」

変な質問しないで欲しいよ…どう答えていいか迷うし。

「ま、普段家では服着ないからこの格好でいるけど気にしないで。あっ、シャワー浴びてきていいよー」

「気にしますよ…てか教室での先生とのギャップ凄いですね。シャワー浴びてきます」

「学校では真面目を演じてるのよ。これが本当のわたしの姿よ。いってらっしゃい!」

こうしてシャワーをお借りして浴びたのだがどうも自宅以外の浴室ってあまり好きじゃないんだよなぁ。

落ち着かないっていうか…すごく気を使ってしまう。

シャワーを浴び終えて部屋に戻るとメグちゃんはベットの上で足をバタバタさせながら雑誌を読んでいる。

横には明日持っていくであろうバッグが置かれている。

「おかえりー。タオルそこにかけておいて」

言われた場所にタオルをかけて時計を見ると23時を回っていた。

「そろそろ寝たいのですが布団ってあります?」

「ん? ないよ」

これは床で寝るしかないのか…

「ほらここ空いてるからおいでっ」

そう言ってメグちゃんはの横にあるスペースをポンポンと叩いている。

えっ…?

「そこで寝ろと?」

「そうだよ。布団無いし、地面硬いだろうから。大丈夫!このベット少し広いから」

流石に下着姿の先生と同じベットで寝るのは色々マズイ…

俺が棒立ちしているとメグちゃんは起き上がり俺の腕を掴んで無理矢理引っ張った。

「うわっ」

俺はバランスを崩してしまいメグちゃんの方へ倒れこむ。

「すみません…バランスを崩してしまって…って何で抱きつくんですかー」

「あっ、ごめん。なんかね…こうギューってするとすごく落ち着く…抱き枕みたい」

俺の目の前には黒色のブラジャーと姉さんよりも大きなお胸がある。

そして鼻をくすぐるいい香りが…

なんだろう。とても落ち着く。

「あの…とても言いにくいんですが…これ落ち着きます…」

「でしょー? じゃ、このまま寝よっ」

メグちゃんはリモコンで電気を消して2人は瞼を閉じた。

少しして目が暗闇に慣れて来た時メグちゃんの方を見ると寝息をたてスヤスヤ寝ている姿があった。

か、可愛い…

この人の彼氏って幸せなのでは? そう思ってしまった。

好き…なのか。いや、それはないだろう…

制服コスのメグちゃんの姿が脳裏に浮かぶ。

それはないと自分に言い聞かせて瞼を再び閉じた。


そういえば何か忘れているような……

まぁいいや…考えることも面倒になるぐらい心地よかった……

そして5分もしないうちに就寝したのであった。










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