第4.5話 亜梨栖お姉ちゃんの1週間
理稀を奪われてた日の夜。
どうも。ぼっちの亜梨栖です。
……。
って、誰がぼっちじゃー。
べ、別に理稀がいなくたって生活出来るし?
遅くまで騒いでも文句言われないし?
平気よ……。
……。
ヤバイ泣きそう…
月梨戦争が終戦した土曜日の夜、亜梨栖は1人寂しくカップ麺をすすっていた。
そしてキッチンには自炊しようと頑張った
焦げだらけのフライパンに出しっ放しの調味料、様々な袋が散乱している。
一応麻婆豆腐を作ろうとしたんだけど…
跳ねる油がうちのキレイな肌に当たってそれが怖くて近づけなくなってフライパンの中身がどんどん黒くなって今に至ります…
開封した豆腐を投入しなかったので明日冷奴にして食べよっ…
それだったら油怖くないし。
料理するの嫌になって理稀のストックであろうカップ麺を食べることに。
理稀怒るかなぁ?
そしたら買ってくればいい。
この生活が1週間……。
実家に戻ろうかと思ったけど通学するの無理だし、
実家から通えない距離ではないが電車に1時間ちょっと乗るなんてマジ無理。
とりあえず食べ終えたカップ麺を捨てて、理稀のベットにダイブする。
え?うちのベットに寝ないのかって?
そ、そこはスルーしてよ…
亜梨栖お姉ちゃんね…寂しいのよ。
今頃隣の502号室では平野ちゃん(月羽)と理稀が仲良く楽しんでいるんだと思うとなんかイライラしてきた。
「あのペチャパイめ……」
こんな時は友達とお電話して忘れよっ。
スマホで『ななみ』を選択し、『電話出来る?』とメッセを送ってスマホを置く。
うちのマンションは防音設備が優れているのでまず隣の部屋の生活音は聞こえない。
その
……。
「あいつ返信しろや…」
すると通知が来た。
『ごっめーん。いまちょっと重要な野暮用があってー。また今度でオッケー(・∀・)?』
……は?
重要な野暮用ってなんだよ。
イラっとしながら『そうなんだー。別に大した用事じゃないから大丈夫だよ(><)』
と送りスマホをベットに置く。
この時1つわかったことがある。
『うちって一人暮らし出来ないわ』
うちが生活していくには家事が出来る人が必要ね。
別に彼氏が欲しいとは思っていない。うちが欲しいのは……キャー言わせないでよね。
「理稀や…帰ってきておくれ…」
そして理稀のベットに寝る。
あ、ヤバイこの匂い落ち着くんですけどぉ。
この状態本人にバレたらドン引きされるだろうけど、1週間はバレる事はない。
これを楽しみにしよう。
掛け布団、枕をクンクンしながら眠りにつく。
ヤバっ…うちマジキモい…
そして日曜日。
起きたら12時だった。
スマホの画面を見ても通知がいくつかあったが全部メルマガ…
とりあえず体を起こしたが出かける予定もないのでパジャマを脱ぎ下着姿でテレビをつける。
別に変な意味ないよ?この格好が楽なのよ。
スマホいじりながらテレビを流すように見ていると、気になることを言っていた。
『気になる相手に振り向いてもらうためには引くのも大切です。詰め寄るだけでは相手は嫌気がさして逃げていきます。そこでたまに引くのです。すると相手があなたに興味を持ち出します。そこを一気に突けばその相手はあなたの物です』
おぉ。これだっ!
この番組くだらないって思ってたけど、たまにはいいこと言うじゃん。
今のところ理稀からのアタックは無く、うちが攻めている状況だ。
詳しく知りたいのでCMが終わるのを待っていると次のコーナになっており、具体的な方法を知ることができなかった。
え…終わり?使えな。
ネットで調べて、うちなりにアレンジしてみることにした。
亜梨栖お姉ちゃんの作戦はこれよ。
・こちらからあまり絡まない
・ツンとした態度とデレを使い分ける
これしか思い浮かばない…
ま、思いついたら加えれば良いのよ。
理稀が戻ってくるまで色々シュミレーションして最終的には……フフッ。
ラブラブな2人を目指すために亜梨栖お姉ちゃん頑張っちゃうよん。
しかし、シュミレーションすることなくゴロゴロして日曜日が終わった。
迎えた月曜日。
はぁ。萎えるわ…
だってさ…学校行っても友達いないんだよ?
前の学校は他のクラスにも友達がいてワイワイ楽しかったのに、どうも今の学校の人たちとは波長が合わないのか仲良くなれん。
席近い人と軽く話すけど一緒にご飯食べたり、帰ったりしない。
まぁ転校して1ヶ月も経ってないから時間が解決してくれるって信じている。
どんよりしながら家を出る。
偶然理稀に会って『お姉ちゃん会いたかったよー』なんて抱きついてこないかな。
理稀とか会えずに学校に到着。
会えるわけないよね。大丈夫知ってた。
自分の席に座ると周りの子に挨拶してスマホをいじる。
それにしてもこの教室騒がしい。
前の学校でのうちってあんな感じだったのかと思うと申し訳なくなった…
はぁ…早く学校終わって欲しいわ。
そんなローテンションのまま授業が始まり、終わっていった。
夕方のホームルームが終わると暇なので理稀のクラスを
顔を見るだけでもテンションが上がると思いますっ。
1階に着くと1年Eクラスを目指す。
すると、1人のお嬢様オーラ全開の女の子とすれ違った。
「……き君とデート。楽しみ…」
え、今理稀って言わなかった?気のせいよね。
そのままEクラスを目指すと反対側からお目当の人が。
う、うれしい!
その瞬間に昨日テレビで見たことを思い出す。
ここはポーカーフェイスを貫きたいけど…ニヤけてしまう。
なのでネガティブモードー!
説明しよう。ネガティブモードとは過去の嫌なことを脳内引き出しから引っ張り出してテンションを落とすことだ。
お互いの距離(関係性じゃなくて実際の距離)がどんどん近くなっていく。
チラ見すると理稀もチラ見した。
は、話しかけても良くてよ?
しかしそのまま離合する。
話しかけてくることはないと思っていたけど挨拶ぐらいしてくれても良いじゃん。
むー理稀のバカァ。
ネガティブモードで思い出したトラウマ+理稀と何もなかったのでテンションは0を超えてマイナスに…
帰宅すると制服のままベッドにダイブ。
何もしないまま1時間ぐらい経った時お腹が鳴ったので「理稀ーご飯まだー?」と言ってしまった。
あっ、居ないんだった…
あー作るの面倒。
ふと、テーブルを見るとラップに包まれたオムライスが置いてあった。
そこにはメモ用紙が置いてあった。
『姉さん俺のカップ麺食べたでしょ? あとご飯作れないと思ってオムライス作っておいた』
げっ、カップ麺の件バレた…
てか、理稀帰ったきたんだ。とりあえずレンジで温めて食べることにした。
今この場所には居ないけど少し前に帰ってきたってことだけで安心した。
その時気付いたけど滅茶苦茶だったキッチンが片付いていた。
……すみません。
そして温め終わったオムライスを食べると本当に美味しかった。
これで残りの平日頑張れそう。
そう思いながらシャワーを浴びてぐーたらして一日が終わった。
そして水曜日になった。
昼休みにスマホのバッテリー温存のため行ったことない図書室へ行ってみることにした。
誰かが雑誌も置いてあるなんて言っていたので良い暇つぶしになるだろう。
図書館の扉を開けると静かな空間が広がっていた。
勉強する人や何人かでコソコソ話しているグループ、1人で雑誌を読んで読む人など様々だ。
席は半分ぐらい埋まっているが余裕で座れそうだ。
雑誌は借りれないらしく図書室内で読むしかないらしい。
ファッション雑誌でも読もうと思ったが気づいたら『小学生でも作れるご飯レシピ』『猿でも出来るかも?開運術』『これで決まり。好きな相手を振り向かせるワザ50選』という本を手に取っていた。
……。
うち、追い込まれている…
それらの本を持ち机へ向かう途中に幼女?いやいや…小柄な女の子が手を伸ばして本を取ろうとしているが届かない。
身長は150cmぐらいで黒髪ロング。髪は縛ってなく腰の付近まである。
前髪を紫のヘアピンで留めている。
1年生かな?
しかし、よくドラマとかで観るやつが本当に目の前で起きているとは…
彼女の先にある本を取ってあげるとこちらを見て「あ、ありゃが…あれれ? ありがとうございます」と噛みながらお礼を言って机の方を向いたが、こちらにくるりと振り返った。
「って、これは同じクラスの神崎さんじゃないですか」
へ?何で知ってんの?
よく見ると見覚えがあった。
ヤバっ…名前がわからないけど窓側の前方辺りにいた気がする。
「ど、どうもー」
とりあえず挨拶をする。どうしよ…誰だっけ?なんて言えない…
「今、あたしのこと誰だっけこの幼女もどきなんて思っているでしょ?」
ギクッ。一部間違っているけど…心読まれたのか?
とりあえず愛想笑い…
「まぁ。転校してきて間もないし接点ないから仕方ないねっ。あたしは
「那古さんね。覚えた!」
「よろしくね。陽夏って呼んで。あたしも亜梨栖って呼ぶから」
「オッケー。よろしく」
こうしてうちと陽夏が知り合ったのだ。
図書室で軽く本をを読み、読み終えなかったので借りることにした。
教室に戻る途中軽く話して教室で解散。
学校でここまで誰かと話すなんて久しぶりだわ。
けど、最初だけで明日になったら会話なく昨日のこと夢だったんじゃね?的な事起きるんだろうなぁ。
うわぁ…ネガティブだわ。
陽夏と友達になれたらこの
少しばかりアタックしてみるかと思いながら陽夏の方を向くと1人で本を読んでいた。
次の休み時間アタックするぞー。
そして昼休み後の5時間目が終了。
次の授業は移動する必要がないので行動することにした。
陽夏の方を再び見るとボケーっとしている。
チャンス!
席を立ったのと同時に陽夏の周りに2人の女子生徒が…
ちょっ…女子生徒A、女子生徒B…うちの作戦を邪魔するなし。
何やら楽しそうに話している。
チャンス逃した…席を立ってしまったので窓際と反対側の廊下へ向かい、用もないのにトイレへ向かった…
その後、放課後、翌日と話しかけられずに時は流れた…
あれ?うちってコミュ障だっけ?
前の学校の時どうやって七海や
思い出せん…
相談するのもアリかな…けどバカにされるだろうなぁ。
自分の脳内天秤にかける。
このままプライドのために相談しないでぼっちな学生生活を送るか。バカにされながらも相談してぼっち脱出の可能性を見つけるか。
やっぱりぼっち辛い…(´・ω・`)
とりあえず電話してみるか。
スマホで『ななみ』を選択し電話のマークを押す。
『もしもーし。久しぶりだねぇ』
『あっ、ななみ久しぶり。ごめんねいきなり電話して』
『大丈夫だよぉ。んでどうしたん?』
『相談したいことがあってね…』
『ふぅーん。なになに?』
『笑わない?』
『時と場合による』
『……』
『笑わないから…多分』
『多分って…どのくらい』
『えぇっとねぇ…半分ぐらいかなぁ』
やっぱり違うネタで楽しく終話するべきなのでは?
そう思ってしまった。
『ま。冗談はさておき…アリスっちが困ってるんだったら真剣に聞くよ? あたしたち友達にでしょ?』
その瞬間言葉に表せない感情が込み上げてきて一滴の涙が落ちた。
やっぱり、友達って大切ね。
その後悩みや愚痴をひたすら話した。
そんな悩みや愚痴を一つ一つ親身に聞いてくれる。いつもはアホでやかましいのにこういう時は真面目になるのよね。
『なるほど…クラスの人たち波長が合わないから友達が出来ないと…』
『そうね。なんかどうやったら友達って出来るかわからなくなっちゃって』
『そんなの簡単だよ。 とりあえずアリスっちが波長を合わせることっ。そして友達になりたいって思いとアクションだよ。この前図書室で軽く話した子だってアリスっちこと興味無かったら名前で呼んでなんて言わないよ? 好きな人に告白するんじゃないんだから…よっぽどの事がない限りダメってこと無いから。てか、ダメでも良いじゃん。これで人生終わるわけじゃないし。ちなみに…あたしこの前フラれたけど……ね』
よく考えたら興味ない相手に図書室で話しかけてこないよね。
色々あってネガティブになってたかも。
てか、七海フラれたんだ。
そこは触れるべきか…触れないべきか。
多分気になっているって言ってた先輩だろう…
『ありがとう。相談したらなんか友達になれそうな気がした。やっぱり七海は最高の友達ね』
『あたしも最高友達だと思ってるから。また何かあったら相談しなね。じゃあのー』
『ありがとう。またねっ』
そして電話を終えるとお風呂で明日のイメトレをして寝た。
そして迎えた金曜日の朝。
今日中に決着をつける。
登校すると陽夏は本を読んでいた。
チャンスだと思ってカバンを置いてから陽夏の席へ向かうと他の女子生徒が陽夏の席へ寄ってきて何やら話している。
次は女子生徒C…うちの友達作らなきゃ作戦を邪魔しにしたな。
七海から言われた『ダメなんてないから』この言葉をお守りにして、陽夏の席に向かった。
「陽夏おはよっ!何読んでるのー?」
するの陽夏を含む2人が驚いてこっちを見た。
……。
あれれ?これ失敗かな。
「おぉ。亜梨栖じゃん。おはよっ」
ニコッとして手を振って挨拶してくれた。
「神崎さんおはよう。神崎さんって亜梨栖って名前なんだね。可愛い」
「ありがとう。なんか嬉しいなぁ」
女子生徒Cよ…褒めてくれてありがとう。
そして君の名は?
「わたしは
「よろしくね。紗姫奈ちゃん」
「おぉ。名前で呼んでくれたーありがとー」
「むぅ…あたしのことは那古さんって言ったのに」
「それは陽夏って感じじゃないからよねー。 亜梨栖?」
「もちろんそうだよ」
「むぅ…2人とも酷いなぁ おこだよっ」
そんな感じで2人も友達が出来ましたv(^o^)v
この日から昼休みは陽夏と紗姫奈の3人で食べて帰りは方向が別なので昇降口まで一緒に帰っている。
そして今日の夜には愛する人が戻って来るし、最高ね。
そして迎えた金曜日の夜。
「ただいまー」
玄関の方から聞きなれた安心する声が聞こえた。
リビングへのドアが開いたのと同時にうちは理稀に飛びつく。何か忘れている気がするけど忘れるって事は重要じゃないのでスルー。
「会いたかったよー。マイブラザー」
「ちょ、苦しい…苦しい」
ヤバっ怒られると思って理稀の方を見ると意外と満更でもない表情をしていた。
そこから今日まであった事をひたすら語り、夜ご飯を食べて、お風呂に入って…
お風呂に侵入しようと試みたが拒否されたのでまた後日。
そして時刻は22時を過ぎた頃。
うちがお風呂から上がると何やら首を傾げている理稀がいた。
「なにかあったん?」
「あのさ…『猿でも出来るかも?開運術』『これで決まり。好きな相手を振り向かせるワザ50選』ってあるけどさ…」
げっ…カバンから出しっぱなしだった。
「ふぅーん…姉さん好きな人がいてその人と結ばれるために開運しようとしてるんだ」
間違ってないわ。誰かは言えないけどね。
「ま、まぁね」
すると理稀は本をパタンと閉じてこっちを見た。
「その好きな人と姉さんが結ばれるといいね。じゃ、寝るわ」
素っ気なく言うと理稀は寝てしまった。
好きな人は
てか、あの態度って事は…理稀は嫉妬しているんじゃね?
だって興味ない相手が誰を好きなろうが何とも思わないし、あの態度…明らかに
こ、これはワンチャンあるのでは。
そう思いながら夢の中へ…
こうして久しぶりに濃い1週間を終えた亜梨栖であった。
あっ…ツンデレ作戦忘れた…
ま、また今度っ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます