第2話 散っていくオセロの準備期間

あれからどれくらい経っただろうか。体感では10分ぐらいしか経ってないが、時計を見ると1時間以上経っていた。やはり、昔の事を忘れて隆光と一緒に話すのは楽しいもので、時間が過ぎるのもあっという間だった。


どうやらこの目の前の建物が本拠地らしい。

見た目は普通の会社だが、それは表向きで裏では犯罪の糸を引いていると行ったところか。


株式会社ホリデーか……超有名な優良企業じゃないか。そうか、この会社が犯罪の元になっていたのか。俺は納得したようなそうでないような感覚陥っていた。優良企業なだけあって、複雑な気分になるが、脱獄犯の援護までするとはかなりの犯罪集団なのだろう。可愛いマスコットキャラクターが如何にも悪い奴に見えてくる。


早速中に入ってみると、対応のいい会社員が俺を出迎えてくれた。本当に犯罪を起こしている会社なのかと疑いたくなる程、いい対応だった。

俺は案内されるまま応接室へと向かった。


「失礼します」簡単なお辞儀をして、応接室の中に入る。白で覆われている壁、そして黒のスーツをきたガタイのいい男性、綺麗な部屋の中、その全てが印象的だった。


その綺麗さに圧倒されている俺を制して、男はゆっくりと口を開いた。


「俺は 大利根 勝時 だよろしく」優しそうな声で簡単に名前を言われたが、その声は単なる優しさから来る喋り声ではないことは容易に分かる。


「早速だが、仕事はやってくれるかい? 」さっきとは打って変わって、重く、ゆっくりと深みのある口調が俺の心に刺さり、鷹のような眼光と覇気が俺に追い討ちをかける。


「は、はい勿論です」断ったら殺されるっ! 俺は覇気を纏った言葉に圧倒され、yesの一言しか言えなかった。


「じゃあ早速、黒田 明夫を暗殺して貰おうか」期間は一ヶ月だとジェスチャーしながらにっこりと笑った。


流石の俺も唐突過ぎて驚いたが、隆光がこれが入会試験と考えてくれればいいよ、新入りに良くやる手さ、と耳元で囁く。

話を聞くに俺は既に入会? しているようだ。


このあと勝時さんからは大まかな会社からの手配と報酬、条件、これからの生活について注意することなど、様々な事を言われた。


部屋を出てみると2時間経っていた。そういえばお腹も空いている。ただ話を聞いているだけだったのに時間が経つのは早いなと感じた。


もう昼か。今日は隆光と一緒に昼飯を取ることにした。どうやらここの近くの和食屋は美味しいらしい。


「そういや、なんで警備薄かったんだ」定員に案内されるまま、ちょっと高級そうな座布団に座り、気になった事を聞いてみる。


「買収したのさ、何億って大金でね」隆光はそう言って笑ったが、彼の目は笑ってないどころか、一瞬の殺気を放った。


「なんで大金払ってまで助けたんだ? 」殺気に気圧されながらも隆光に疑問をぶつける。


「親友……だからだよ」質問に答える隆光は少し悲しそうな顔をしていた。


やばい、重い空気になってしまった。俺は即座に話題を変えて、炊き込みご飯を口にかき込んだ。


昼食の後は隆光にホテルに案内された。いかにも高級そうなそのホテルは一ヶ月程泊まれるようになっているらしい。


早速部屋に行ってみるか。フロントの受付からキーをもらい、これまた高級そうな内装のエレベーターで3階まで登る。


303号室か、隆光の隣じゃん。思わず声に出してしまい、一緒に乗っていた人達に睨まれたが、気にしない事にして自分の泊まる部屋に入った。


部屋に入るや否や真っ白な部屋が目の前に映し出された。内装は普通の家と同じくらいの広さと、脚が曲がり、花の柄を縁取った白いソファーや白い椅子。金色と青で出来たカーテン、シャンデリア、部屋に漂う匂い。全てが理想的だと言わんばかりの部屋だった。

俺はここに滞在するらしい。





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