オチがない

無地

途中で飽きた

 目が覚めた。視界も頭の中も、やけにぼんやりしている…眩しい。

 …少しずつ視界がはっきりしてきた。続いて思考が戻った。見慣れない真っ白な部屋の…、天井か。なぜだか僕は寝かされているようだった。

 周囲に目を向ければ、これまた真っ白の服を着た人が何人もいて、部屋の中をせわしなく動き回っている。どいつもこいつも見覚えのない顔ばかりだ。

 こいつらは誰だ?僕の周りで何をしてるんだ?もっとよく見よう、と顔を向けようとしたが、動かない!僕の顔は天井を向いたまま。動かせるのは視界だけ。

 急に鼓動が早くなった。冷や汗まで出てきた。額の汗を拭おうとして…腕も上がらない!右腕…左もだ!そうだ。腕だけじゃない、足も、胴体も動かない。というか…全身の感覚がない…!

 目の前が真っ暗になった。白服が僕の様子に気づいて何事か話しかけてきたが、大声で捲したてるばかりで何を言っているのかわからない。顔が近い…

 どうしてこんなことになってしまったんだっけ。そうだ…僕はトラックに撥ねられて……異世界に転生したのか!

 顔も身体も動かせない…声は?…呻いたような声しか出せない。今の僕は赤児だ。死んで異世界に転生し、再び生まれてきたんだ!

 この真っ白な部屋、派手さは無いがよく見ると丁寧に管理されている。部屋には白服がたくさんいるが、その中に僕の親はいないようだ。生まれたばかりの子供に部屋を与えて、世話は従者に任せっきり…こんなことができる僕の親は、金とか権力とか、とにかく色々凄い人達に違いない!間違いなく恵まれた転生先だ!

 いわゆる「ステータス」は見えない。念じても出てくる様子はない。魔法とか何か不思議な力が部屋で使われてる様子もない。魔法とかステータスとかが存在するのか今すぐわからないのは残念だけど、それも成長すればわかることだ。良家の子供として生まれてきた僕には、時間も才能もたくさんある!本当に楽しみだ。


「多田さーん。鏡でお顔お見せしますね」

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オチがない 無地 @poycal48i

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