第12話 内部事情
平潟薫が行方不明になった。何があったかはわからないが、数日前に会って時期がほぼその直後に失踪ということなので、平潟薫のSNSなどを辿れば中見探偵事務所にたどり着くのは時間の問題だろう。
とにかく優一のところへ行きやるべきことをやるそうすることになったので車で事務所へ向かっていた。
事務所の駐車場に着くと、そこにはこの間と同じ、男の姿の優一がいた。
「悟、今から警察署まで行くよ」
「警察署に?いずれ警察が来るんじゃないのか」
「変に怪しまれる可能性もあるし、こちらから出向く。情報提供者としてね。」
「なるほどなら急ぐか。恵さんはどうする?」
「連れて行かなくていい、ただ一原さんの依頼に関することには嘘偽りなく話すよ」
「それじゃ恵さんも警察署に来ることになるな」
「ちょっとめんどくさいことになりそうだけどね。」
そう言って車を発進させる。車内では優一が三ヶ島さんに連絡を取っているようだった。
それにしても何故平潟薫は行方不明になったんだろうか?平潟薫は優一と初めて会った時、騙されたことに対して過剰と思えるほど苛立っていた。あの時誰かに狙われている、なんてことがあったのだろうか。
だとしたら何のために?平潟薫の持病が関係あったりするのか?それとも友人間恋人間のトラブル?
「ありがとう三ヶ島警部、じゃあまた後で。」
「三ヶ島さんは警察署に今いるのか?」
「いないけど部下の人に話し通してくれるってさ。田中さんにも伝えてくれてる。」
「そうか、よかった。平潟薫は何で行方不明になったんだろうな」
「俺たちが原因って言うのも2%くらいは考えられるかもね。そうだ、今日の午後羅楽のおっちゃんのところ行ってくるよ」
「城島さん?何で?」
「おっちゃんは俺達より探偵歴長いから、相談しに行く。悟はカフェのバイト行ってきてて、今日かなり無理言って午後にしてもらったから」
「わかった、城島さんのところまで送る」
「ありがと」
警察署に着いた僕と優一は、受付の田中さんに会い、奥の多目的室へと案内された。
案内をし、話を聞いてくれるのは三ヶ島さんの部下である伊丹隆也刑事だった。
「じゃ、平潟薫の失踪前に一度会ったと?」
「はい、これが平潟さんとのやりとりです」
「なるほど…確かにこれは平潟薫の使っていたアカウントっすね。少し借りていいっすか?」
「どうぞ」
「ねえつかっち、他に情報提供者はいないの?」
つかっちってお前。同い年の友達じゃないんだからいい加減にして欲しい。
「今のところはいないっすね〜電話とか署にかかってくるっすけど根拠ない情報ばっかり。うんざりっす。」
「俺達みたいに話し聞いてる人は?」
「確か一人いるっすよ。めっちゃ可愛い女子高生」
「めっちゃ可愛い女子高生!?」
「食いつくな」
優一もあれだが伊丹さんも伊丹さんだな。
「まあその子は警察側からここまで連れて来たんすけどね」
一通り話を終えたので、後日何かあれば連絡する、と伊丹さんと別れた。
今から僕はいつものバイト先へ行き、優一は城島さんと話しに行くという流れだ。
「悟、羅楽のおっちゃんが事務所に来るから行き先事務所でいい?」
「構わんが、そりゃ何でだ」
「さあ…事情話したら事務所に来るってさ、あ!悟もしかしてあの子じゃない?めっちゃ可愛い女子高生!」
「うお、本当だ制服着てる」
「ナンパしてくる!」
「おい待て」
全く優一だって結局同じ男だったってことだな。それにしても何故女子高生が警察に連れられて警察署に来るんだ?
あ、優一の携帯に城島さんから連絡来てるじゃないか。
「こんにちは!君平潟薫の件で警察に来てる子?」
「うん、どうして知ってるの?」
「俺も同じ件でここに来たんだ!君名前は?」
「私は、人宮白羽。貴方は?」
「俺は、」
「おい、城島さんから連絡があったぞ」
「えー?わかった、すぐ行くよ。ごめん人宮さん、またね!」
「…うん、またね」
確かに綺麗な顔した女の子だ。とても女子高生とは思えない、というか日本人ではないハーフか何かだろう。
「で、おっちゃんからの連絡って」
「今すぐにでも事務所まで来てくれだってさ」
「うーん一体何があったんだろう」
「僕にはわからん」
警察署を離れて優一を城島さんの待つ事務所へ送り、自分は午後からのバイトへ行く。
平潟薫が心配だが、この一件は流石に警察に任せるしかないのかもしれない。
バイトを終え夜になった頃、店の外に出ると優一が立っていた。
「びっくりした、どうしたんだ」
「薫の失踪の件、俺達も調べるよ。おっちゃんとも協力する。」
「流石に無理だろ。警察に任せておいた方がいい、何があったんだ」
「詳しいことは言えない、けどこのままだとずっと見つからなくなるかもしれないんだ」
「どういうことだよ」
「大丈夫、時給はちゃんと払うし、それだけとりあえず伝えておくよ。じゃあね」
「そういうことじゃない、おい!」
優一は遠くに行った。一体城島さんとの話で何があったんだ?行方不明の事件に首を突っ込んで一体どうしようというのだろう。
結局その後優一にメールを送っても返信が来なかった。
[翌日]11:00
今日はカフェのバイトは入っていなかったのだが、午前中に優一からメールが送られてきており
「今日夕方からの出勤だけど昼からよろしくちょんまげサンバ」ときていた。昨日の夜僕が送ったメールには一切触れずにだ。一回殴らないとわからないらしい。
昼の予定も特にないので事務所へ向かった。
「お疲れ様です」
「お!悟お疲れ〜無理言ってごめんね」
「それはいいが昨日のはなんだ」
「昨日のねえ、悟。」
「なんだ」
「あれやっぱなし!」
「は?」
「安心して、シフトが増えることはないから。今日も予定の三時間早く上がって」
いやいやおかしいだろ、城島さんと会うまではただの行方不明で警察に情報提供して任せる流れだったくせに急にメールでもなく直接口頭で平潟薫を探す宣言しといてそれをまた今日なしに?
聞きたいことがありすぎて頭がおかしくなりそうだ。
「次の依頼の件なんだけど…って何その顔」
「当たり前だろ、疑問しかねえよ」
「上司にその口の聞き方はないよね」
「敬語を使わなくていいと言ったのはどこの上司だ?」
「ていうか態度の問題か………………」
「理由くらいは話してくれ。」
「ああぁもう仕方ないなあ、何でそんな食い下がるわけ?」
「何となく、中見優一が隠し事しかしてないような気がしてな。」
「信用ないなあ」
「お前が信用できる人間なら歌舞伎町のキャッチの方が信用できるな」
「…………言うようになったじゃん。あれ根に持ってんの?」
「何の話かわからないな。」
「強情。じゃあ一旦整理して、悟の聞きたいことは何故昨日捜索をすると言ったのに取り消しにしたか、だね?」
「ああ」
「警察に任せることにした、それまでだよ」
「それはなんでだ?城島さんから情報を得て探すってなったんだろう。心変わりが急すぎるんじゃないか」
「その城島さんが警察と協力することになったんだよ」
「今日の朝に?」
「そう、元探偵が警察と協力して探すって言うんだ。高校生探偵の入る隙なんてないでしょ?」
「まあ…そうだな」
正直もっとらしい理由だとは思うが何かが引っかかる。
話をし終えた後依頼人のところへ行き、浮気調査の依頼を受けた。仕事を本格的に始めるのは明日からでこの日は事務所へ帰った。
「そうだ、この後暇?」
「特に何もないよ」
「姉ちゃんのお見舞い行かない?」
「それはいいが、優一お前何か用事があったんじゃないのか」
「あるけど三時間くらい時間あるしちょうどいいかなって」
「…?まあいいが」
こうして、二人で一羽さんのいる病院へと車で向かった。
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