文学的微笑
電車に揺られている。車内は東京に比べれば圧倒的に空いているが、座る椅子がないので、足を肩幅に開いて立っている。
今日はいつもよりも人が少し多い。
森に向かうような電車でみんなどこに行くつもりなのだろうか。何もないがある場所に行って、誰に会うのだろうか。
少し言い過ぎた。私はなにも、田舎が嫌いなわけではない。森林が嫌なわけではない。強いて言えば野生動物や虫は少し気が引けるが、静かで空気がいいから鄙びた場所はむしろ好きだ。
特に気に入っている場所は、商店街である。好きなお店があるとか、会いたい人がいるとかではないのだが、ただなんとなく心地が良いのだ。
人がいない陰った中にある商店街はどことなく、「誰もいない世界」を連想させる。
その商店街の中央上、入り口の電柱、出口の上辺に小さなスピーカーがついてて、そこからラジオが聞こえてくる。
誰もいない商店街から、楽しげなラジオの声だけが響いているのだ。時には、音楽も流れる。
私はなんとなくその空気が心地よくて、そこを通るときだけはイヤホンを外して、なるべくゆっくり歩くようにしている。というよりなっている。時間があるときの楽しみ、余裕とも言い換えれるかもしれない。
もうすぐ駅に到着しそうだ、あたりの景色にじょじょに家が増え始めた。それではまた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます