ナラタージュという作品※ネタバレ注意

今日、ナラタージュという小説を読み終わった。あらすじはあえてここには書かないが、スイスイと泳ぐように読み進められた。

『教師への恩なんか、買うだけ買って、踏み倒せばいいんだ。』ナラタージュより引用した、この文章は葉山先生の言葉だ。なかなか凄い事を言うなぁと読みながら思った。

自己犠牲と自己中心。ギブとテイク。女子大生の日記のようだと誰かがレビューしていたが、まさにそのとおりである。主観的で感傷的な文章でありながら、繊細で鮮やかな情景描写は、全体的にありきたりな印象を受けるストーリーを決して飽きさせることなく、最後まで歩かせてくれる。

映画の方も鑑賞した。原作を先に読むと、どことなくファーストフードのような手軽さを感じてしまうが、これはどの作品にも言えることだ。

映画を見る前に少しレビューの方も拝見したが、どのサイトのレビューも軒並み3.5あたりを指していて、名作というよりは凡作と言った感じなのかと、内心思った。しかし、少なくとも私は4.0はつけてもいいのではないかと思った。

私は映画の方の小野君の扱いに不満がある。原作では彼は優しい男でありながら、嫉妬深い男でもあり、また、工藤の趣味を理解しようとしたりする姿をみせる人であった。ただ、感情の起伏のコントロールがあまりにも下手すぎるだけなのだ。映画の描き方だとあまりにも小野君が薄情者すぎる。小野君と最後に話し合うシーンも欲しかったなぁと思った。にしたって彼の言葉に棘があるのは(映画でも原作でも)変わらないが。

あと、柚子ちゃんの伏線が曖昧だったのも不服である。

いずれも、2時間という尺の都合を考えればカットするのは妥当だと言えるのだろう(?)。私は監督も脚本も書いたことがないので分からないけど、少なくともつまらなくは感じなかった。

自称映画評論家という言葉がある。そういう人たちを見ていると悲しくなってくる。映画も本も生き物であり、呼吸をし脈を打っているように私は思う。本棚や、ポスターの中でこそ静かにしているが、一度こちらが視線を向けると呼吸を始める。こちらに問いかけてくる。愛とはなんだ、恋愛とはなんだ、忘れるとはなんだ、思い出とは、好きとは、生きるとは、死ぬとは、あなたにとってこれからも歩み続ける人生とはなんだ?

作品は息も絶え絶えこちらに問いかけてくる。

意味のない薄っぺらなありきたりな映画だと思うなら、こちらから意味を付け足してやればいい。深読みしてやればいい。そんなふうに私は思う反面、面白くない作品を深読みすることに意味などない気もする。

ナラタージュは面白かった。私は恋愛に関する作品を見ることができる質だということを確認できたというだけでも大きな収穫だと思っている。

ナラタージュといえば、主題歌を野田洋次郎が担当し、上白石萌歌が歌っている。不覚にもうるっときて、長く息を吐いてしまった。

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