第3話
よく良く考えれば、
知り合って一日目の男女が心中、しかも男子の方は転校生だ。
部外者である学校関係者はとんだとばっちりだ、申し訳ない。
まあ家族のいない俺は残す遺書も思いもない。簡単に死ねるのだ。
考えれば考えるほど怪しい学校。
まあ、そんなことを言っていたらこの世界では生きられない。
大切なもの、あの指輪でいいか、大切かはわからないが、それしか物はない。
久しぶりに開ける誇りの被った箪笥を開け、白銀の指輪を、指輪箱にしまう。
俺は、いや
彼女は本当に死ぬのだろうか、
そんなに簡単に人はこっくりと死ねるのだろうか、
隣の席のあの人、何があったのか、
転校生に興味がなさそうな担任は何を考えていたのか、
彼奴は何故居なくなったのか。
まあいいや
というよりかは、
もういいや、の方が近いのかもしれない。
そんなことを考えたら朝日が昇っていた。
「さあ、行こうか」
来てみたら早々彼女は下手くそな笑みを浮かべる。
手首に傷はない。
窶れた様子、うつ病者特有のあの目はしていない。
何故、何故
命を捨てたいの
そんなことは聞けなかった。
「心の準備は、」
「大丈夫です、」
ここは部室だ、まさか小火なんか起こすつもりか、本が勿体ない。
いや、彼女はそんな事しないか、彼女のことはひとつも知らないけれど。
「じゃあ行くよ」
「行くってどこに」
「扉のむこうに」
扉とは、
そう聞こうとすると彼女は本棚をくるりと内側に向けた。
本棚の後ろに扉?
扉のむこうは見えなかった、彼女はまた作り笑を浮かべると、先どうぞ、
そういった。
「ありがとうございます」
特に抵抗はなかった。
それは彼女も同じだろう。
俺が入ると、本棚を戻して彼女も扉の中へ駆け込んだ。
黒い光が見えた。
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