第32話俺は寝過ぎる

あれからあまり寝れなかった。目も体も少し重い。

ただ、布団の中があったかいからか、外には出たく無い。横見ると愛美はいない。……そういえば美鈴ちゃんと寝ているんだった。ふと、時計を見ると7時40分くらいだった。いつも起きている時間だが今日は土曜日だから、ゆっくりしているのかもしれない。


あの夢は今の状況と何か関係あるのだろうか。あの光は何なんだろうか。聞いた事のある声のような気もするがそうじゃ無い気もする。

ふと横を見ると当然だが誰もいない。愛美がいないだけでこんなに寂しく感じるのか。そう思っていると部屋の扉がゆっくりと開く。


「あら、起きてたの?」

「あぁ。今起きたよ

「寝れなかったの?」

「そうかも」


今愛美の顔を見るだけでこんなに気持ちが上がるのだから、相当寂しかったのかもしれない。もしかしたら愛美が俺を離したくないのではなくて、俺が愛美から離れたくないのかもしれない。


「愛美俺もう一回寝たい」


するとニヤニヤしながら「寝ればいいんじゃない?」と言う。多分分かって言っている。


「どうして欲しいの?」

「……なら、いい」


俺は不貞腐れながらそっぽを向く。


「ふふふ。甘えん坊さんね」

「別に入ってきてほしいなんて言ってないし」

「はいはい」


もぞもぞと布団の中に入ってくる。ただそれだけなのに物凄くフワフワとしたあったかさが漂ってくる。


「美鈴ちゃん大丈夫だった?」

「もう、ぐっすり。今日見たら頭と足が逆になってたわ」

「ははは。相変わらずだな」


「なぁ、愛美」と少し小さめの声で言う。


「なぁに?」

「愛美って本当に俺に一目惚れしたのか?」


変な夢を見たからか、それとも違うのか分からないけど、何となく俺聞いていた。


「……何かあったの?」

「何もないよ。けど、なんとなく聞いてみたかった」

「前も言ったけど、私は貴方に一目惚れしたわ。でも柊と暮らしてもっと好きになった。柊が私の事を抱きしめてくれる時はもっと好きになるしすっごく幸せって感じるわよ」

「そっかありがとな」


愛美の方を向き感謝の言葉を伝え、頭を撫でる。

それに合わせてか愛美も俺を抱きしめ胸板に顔をグリグリと擦り付けている。やっぱり離れられないのは俺だ。


「ふあー」


欠伸が口から出る。リラックス出来たからか、目を閉じればすぐに寝れそうだ。


「私も少し寝ようかしら、土曜日だし」

「そうだな」


今この時間がどれだけ幸せか。起きると隣に人がいると考えるだけで心がポカポカとする。それが最愛の人だとなるともう溶けそうだ。

段々と瞼が落ち始め、撫でていた手も止まり始める。


「おやすみ柊」

「おや、すみ……」


そして俺は今度こそちゃんとした眠りについた。



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どこからか「お兄さん、お兄さん」と聞こえてくる。薄っすらと目を開けると俺に馬乗りになり体を揺らしている美鈴ちゃんが映る。軽いからか寝起きだからか、重さを全く感じなかった。


「どうしたの?」

「もう、3時ですよ。姉さんは幸せそうな顔で寝てるから起こそうにも起こせないし」

「俺もだいぶ幸せな気分で寝てたんだけど……」

「まぁ、そうですけど。とりあえずもう3時です!」


3時か……どれだけ長く寝てたんだ?多分寝たのが8時くらいだから7時間か。かなりの時間寝ていたらしい。たしかにお腹が減っている気がする。


「私お腹ペコペコですよー」

「俺に言われても……」


横見るとこれまた幸せそうに寝ている愛美がいる。美鈴ちゃんが起こさないのも納得だ。もしかしたら愛美も美鈴ちゃんが心配で寝れていなかったのかもしれない。


「お兄さん起こしてくださいよ」

「はいはい」


「愛美」と言いながら体を揺らす。すると「んんー」と唸る。


「おはよう」

「ん、おはよう」

「姉さん私お腹減ったー!」

「今何時?」

「3時だな」

「3時?……3時!?」


「え、嘘こんなに寝てたの?」あたふたと動き出す。


「ごめんね、今作るから」

「うん。お願い」

「寝起きなのに大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

「そっか」


急ぎ足で部屋から出て行く。愛美としては3時はなかなか強烈だったらしい。馬乗りのままの美鈴ちゃんをどかし、体を伸ばす。


「お兄さん私とゲームしましょうよ!」

「……いいけど、今度はちゃんと薬飲んでからね」

「分かってますよ。」


「ほら」といい手に持っていた薬を俺に見せつける。よく見るとご飯後に飲むようにと書いてある。

準備は万全と胸を張る。


「そういえばお兄さん出かける時の服とかあるんですか?」

「分からないけど、無いんじゃないかな?」

「えぇー。私服って結構大切ですよ」

「制服があるから別に……」

「まぁ、お兄さんがそう言うなら大丈夫ですけど」


昨日の事があったのにも関わらず普通に接してくるあたり、流石美鈴ちゃんと言うべきか。気を許した人との距離感は多分結構近い。俺も見習うべきなのかもしれない。


「ま、とりあえずゲームしましょうよ!今日は負けませんよ」

「はいはい」


俺はベッドからゆっくりと立ち、テレビの電源をつけ、美鈴ちゃんとのゲームをするために頰パチンと叩いた。


結果は俺の負け。何故か緑甲羅がやけに俺に直撃した。クソ、バナナの意味がなかったじゃ無いか。


お願いは俺と庭の花を見るだった。ご飯ができるまでまだ時間があり、ちょうど俺も花を見たいと思っていたので、すぐに庭に出た。

そして外は物凄く寒かった。

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