第25話俺はなんで?と叫びたい
百合あります。苦手な人は通り過ごしていただけたらと思います。
どうしてこうなった。
確か俺がゲームに負けて美鈴ちゃんと風呂に入る事になってしまい、さらにそれに続いて愛美まで一緒に入ると言い出した。ここまではちゃんと自分で分かっている。
だが次が分からない。
何故俺は悠々とお風呂に浸かり、美鈴ちゃんと愛美はあそこで言い合いをしているのだろうか。
「だから、私がお兄さんを洗うって言ってるじゃん!」
「いやよ。それは譲れないわ」
ちなみに俺は彼女達が言い合いをしている間に頭と体を自分で洗い終わっている。いつ言おうか迷っているのだが話しかけると飛び火が来そうなのでなかなか踏み出せない。
「じゃあ、二人で洗い合いして相手を気持ち良くできた方がお兄さんを洗うでどう?」
「なるほど。それはいいわね」
「じゃあ勝負だね」
ここまでやる気になっているのを俺の一言で終わらせるのも心苦しい。まぁこれで愛美と美鈴ちゃんの距離感が縮まるのであれば願ったり叶ったりだ。
それに裸の付き合いって言うしね。
「じゃあ先にどっちから洗う?」
「美鈴からでいいわよ」
「分かった」
愛美がどんな考えを持って先行を譲ったのか分からないが彼女なりの何か考えがあるのだろう。愛美はそういう計算が上手いからな。
「じゃ、じゃあ先に頭洗うね」
「えぇ」
「し、失礼します」
美鈴ちゃんは手にシャンプーを貯め愛美の頭を揉む様に洗い始める。頭皮マッサージを実行するようだ。
洗い始めると共に愛美の口が動いた。声は出していないのだが俺には聞こえた気がした。「この程度か」と。もし本当にそうなら大人気ない。恐らく愛美は美鈴ちゃんと自分の実力を比べるために先行を譲り自分にこの勝負勝てると自信をつけたのだろう。本当に大人気ない。
シャンプーを流し終わりリンスに取り掛かる。
だがそれも先程と変わる事なく愛美はますます自分に自信をつけた。
がしかし体を洗う所で状況が変わった。
美鈴ちゃんが素手で体を洗い始めたのだが愛美の反応が全然違う。
「んっ、あっ」
「ふっ」
美鈴ちゃんはニヤリと笑った。頭皮マッサージでは劣るが体を洗う事では負けない事を悟ったらしい。
「やっ、ちょっ」
「ふふふ」
どうやら美鈴ちゃんは愛美と逆で体を洗うのが上手いらしい。愛美がモゾモゾと動き始める。それに影響されてか美鈴ちゃんがどんどん動きが激しさを増す。
「す、ストップ!分かったから!」
「降参?」
「ち、違うわよ」
いや流石に見苦しいぞ。確実にもうこれ以上されたら落ちるって顔してたぞ。ってなにを俺はガン見しているのだろうか。
俺の気持ちなんて構わずに愛美のターンが始まる。
愛美はお返ししてやる、というような表情に変わり美鈴ちゃんの頭に手をかける。
「ふわっ!えっ、う、うそ」
愛美は美鈴ちゃんの事を御構い無しに黙々とマッサージを続ける。
「にゃ、にゃにこれ」
そして美鈴ちゃんの滑舌がおかしくなる。てか俺そろそろ上がっていいかな?のぼせそうなんだけど。
「ちょ、ね、姉さん!」
「何かしら?」
「ストップ」
愛美は聞こえていないフリをしてまた手を動かす。
あー、あれはラストスパートに取り掛かるようだ。
「え、なんで!す、ストッにぁ!」
うわ、大人気ない。止める気配なんてゼロだ。
それから少ししてようやく終わったようだ。美鈴ちゃんに目を配るとぐったりしている。俺は姉妹の洗い合いを見ていただけだよな?なんで俺の顔が熱くなるんだ。あ、のぼせたんだわ。
ごめん俺もう上がる。
「どう、美鈴」
「うっ。で、でも体洗った時姉さんも危なかったでしょ」
「そ、それは」
まぁ、一応最後まで見ておこうと戸の前で止まる。
ここまで来て結果を知らないのは嫌だし。
「じゃあ次は体ね」
「う、うん」
多分美鈴ちゃんは先に食らった頭皮マッサージの恐怖から恐らく体を洗うのも上手いのでは?と思っているに違いない。流石に俺も愛美がどのくらい体を洗うのが上手いのか分からない。
愛美は自信に満ち溢れた顔をしている。
まぁ、確かに頭皮マッサージの反応からして勝ちを確定したのかもしれない。
もし体を洗うのが普通だったとしら大変恥ずかしいだろう。
愛美はタオルで泡を立てて美鈴ちゃんの背中に触れる。
最初はビクッと震えたのだがそれ以上は何も起こらなかった。つまり別に上手くないというわけだろう。美鈴ちゃんの顔が期待外れ、って表している。
最初に変な自信をつけたからこうなったのだろう。
「えっと、姉さんもういいよ」
「え、な、なんで?」
「後は自分で洗うから」
「え?」
こう、どう言えばいいのかな。あ、そうだ。哀れだわ。うん。ぴったりだね。とは言え美鈴ちゃんも愛美も違う場所でいい反応はさせていたし、勝敗は五分五分といったところだろうか。
美鈴ちゃんは自分の体を洗い終わり愛美に目を向ける。
「えっとどうする?」
愛美は「んー」と唸りながら考える。
「じゃあ私が頭を洗うから、美鈴は体を洗って」
「あ、それいいね!」
うん良かった良かった。穏便に済んだね。という事で俺はもう上がります。流石に死にます。
「じゃあお兄さんすわっ……あれ、お兄さんは?」
「そういえばどこに行ったのかしら?」
風呂の中で軽いパニックが起きているが、俺気にせず服を着る。これでもう今日は風呂に入ることはないだろう。
するとドタドタと風呂場から足音がする。
「なんで柊は上がっているの?」
「そうですよ!なんでお兄さん上がっちゃってるんですか!」
「え、いやなんでって言われても」
ただ普通にそろそろ上がらないと倒れそうだったから。それに俺がこいつらの餌食になりそうだったしな。うん。俺は間違っていない。
「こうなったら脱がします」
「そうね」
嘘だろ。絶対にこれだけはないだろうと思っていたのに。こいつらを常識と思わない方がいいと俺は悟った。
そして俺はある事に気づく。多分彼女達も気づいていない。バスタオルを巻いてる巻いていないことに。つまり裸。言うべきか?言わないべきか?俺は考えながらぼーっとする頭を必死で回す。だが彼女達には俺が自分達を見つめているように感じたのだろう。
そこでいち早く気づいたのが美鈴ちゃんだった。
「あ、バスタオル」
「え?あ」
「お、お兄さんのえっちー!」
俺の頰に平手打ちが飛んでくる。ただでさえのぼせそうで倒れかけていたのに顔に強い衝撃が来たことによって俺は意識を飛ばした。
「えっ、ご、ごめんなさいお兄さん!」
「だ、大丈夫?」
だがそれに反応する人は既に気を失っている。
「ど、どうしよう!」
「とにかくベッドに運びましょうか」
しばらくして目を覚ますと頰に真っ赤な紅葉が付いていた。
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