ヤンデレに監禁されたようなので、逆に甘えてみようと思う

第24話俺はこの子を知らない

「聞きたい事がある」

「何かしら？」

「お前の妹って美鈴ちゃんだけだよな？」

「そうね」

「じゃあこの子は誰だ？」

俺の背中にあたかもコアラのように俺にしがみついているこの人物は誰だ？いや美鈴ちゃんなんだけど。

流石にキャラ変わりすぎじゃないかな？

朝まで年頃のクールな女の子だったけど、今は彼女が俺に甘えてくると時と同じくらいに甘えてくるんだけど。

「お兄さーん」

「えっと美鈴ちゃん離れてくれると嬉しいかな」

「えー無理です」

無言で彼女を見つめるとあちらか「はぁー」とため息が聞こえる。

「いきなり美鈴がこんな事になるはずもないし、私が居ない間に何があったの？」

俺は美鈴ちゃんの学校の事で話を聞いたことを簡単に説明した。

説明している時に少し彼女が俯き気味になったのは、少しばかり負い目を感じていたのだろう。

「まぁ、美鈴ちゃんも少しは楽になったって言ってたから」

「そう、ありがとう」

彼女の顔がイマイチはっきりとしていない。何かを抱え込んでいるみたいな。

「あとな美鈴ちゃんお前に救われたって言ってたぞ」

「え？ほんと？」

「あぁ」

彼女の顔が一瞬で上がった。いや、そんなに凝視されても……確かに彼女が疑いたくなる気待ちは分かる。でも美鈴ちゃんの話を聞いている限りそれは彼女なりに色々頑張って残した結果だし、いい成績を出す事は悪い事じゃないと思う。だから彼女が悪いとか美鈴ちゃんが悪いとかじゃない。

「それにほら、嫌だと思っている奴の家に普通来るか？」

今は少し離れた場所にいる美鈴ちゃんを見て言う。

「それもそうかも」

「だろ」

まだ、不安は抜けきっていないように見えるが多分大丈夫だろう。これで昨日まであった彼女と美鈴ちゃんの薄い壁が無くなるはず。

すると彼女が「それより」と切り出す。

「ん？」

「いつから美鈴のこと名前で呼ぶようになったの？」

「朝だな。妹さんって言うのもなんか変だろ？」

「じゃあ私も名前で呼んで」

正直そう言われるだろうなとは思っていた。

まぁ確かにお前って言うのもあんまりいい呼び方じゃないのかもしれない。えっと確か名前は――

「あ、愛美でいいか？」

「うん。私は柊って呼ぶね」

「お、おう」

スムーズに話が進んでいるが、実際物凄くこそばゆい。何故彼女は羞恥心が無く言えるのだろう。俺が気にしすぎなだけか？一応一緒の風呂に入っちゃってるわけだし、やっぱり気にしすぎだな。うん。

気にしないようにしても気まずい雰囲気のような謎の変な空気が漂よい始めてきたので俺は

「そういえば」と話しを変える

「学校どうだった？」

「疲れた」

即答だったわ。回答まで2秒かかってないぞ。まぁでも毎日行っていた俺も疲れるし、久々となるとその疲れも多くなるのかもしれない。

「そうか、お疲れ様」

「えぇ。多分明日制服届くから」

「え？早くね？てかいつ採寸した？」

「ん？貴方が着ていたジャージを元にしてかしら」

てか、着替えの時に一向に俺のジャージ出てこないと思ったらそんな事に使われていたなんて。いや別にいいんだけど。正直今着ているこの服もなかなか着やすいし。でも愛着とかあったから少し寂しい気がする。

「まぁ、その事は少しずつ話していくわね」

「おう」

「ねぇねぇ、お兄さん」

「ん？」

あ、美鈴ちゃん居たこと忘れてた。いや、ついさっきまでは覚えてたんだよ。

「これやりませんか？」

美鈴ちゃんが手に持っているのはゲームコントローラーだ。つまりゲームがしたい、という事だろう。

俺もやりたかったから断る理由もないし――

「いいよ」

「やったー」

「じゃあ、私は見てるわね」

まぁ、愛美に鍛えあげられた俺が負けるはずないし、ちょっとボコボコにしてやろうかな。泣くなよ美鈴ちゃん。フハハ。

／＼／＼／＼／＼

「うわーーん」

泣き声を出しているのは美鈴ちゃんではなくて、愛美でもない。つまり俺。

聞いて、この子酷いんだよ！このレース三周あるんだけど、三周目の終わりまでずっと後ろにいる。それだけならいいよ。でも違うんだよ。美鈴ちゃんは緑甲羅を投げるのが抜群に上手い。全部当たる。赤甲羅は勝手に追跡して当たるんだけど、緑甲羅は直線にしか進まない。でも壁に当たったりして縦横無尽に反射しまくったりして予想外の角度から当たったりする。まぁそこまでは許容範囲だよ。まだね。次だよ次。甲羅とか他にも色んなアイテムがあるんだけどそれに当たると少しの間動けなくなる。でも美鈴ちゃんはその俺を抜かさずにずっと後ろにいる。なんでかって？

ずっ俺の後ろを走って甲羅当てるの楽しんでるんだよ！何回も何回も当てて。それで最後の三周目には俺のこと突き放してくる。もう嫌だ。辛すぎる。

「まさかあんな方法があるなんて」

「へへーん。これぞ美鈴流後ろから当てて楽しむ」

「私も今度やってみようかしら」

「やめて！これそういうゲームじゃないから。俺の心がバラバラに砕け散るから」

もういいよ。今日は徹底的に頭皮マッサージで愛美に癒してもらうから。そうしないとメンタルケアできない。

「あ、美鈴、ゲームに勝ったら一つお願い事できるわよ」

「え？そうなの？」

「そのルールここでも出るんだ」

美鈴ちゃんは「どうしよかっなー」と楽しそうに悩んでいる。朝の顔に比べたら全然いい顔しているし

こっちまで嬉しくなる。

「じゃあー、お兄さん今日私とお風呂入ってください」

「え？」

「それは聞き捨てならないわ。私も入る」

「じゃあ姉さんも一緒で」

「あ、あぁ」

どっちにしろ断ってもどうせ入ってくるし、愛美に

「ここ私の家だしいつ入ってもいいわよね」なんて言われたら勝ち目なんてない。

という事で全員でお風呂に入る事が決定しました。

いや、俺が俺を保てるかが一番心配なんだけどね。