変わっていく

第17話あれから2ヶ月

あれから2ヶ月経った。彼女と俺の生活は相変わらずで監禁という形は変わってないけど、少し変わったことが2つある。


まず一つ目。

俺はこの部屋を自由に歩けるようになった。

まぁ、歩けるようになったとは言え彼女がこの部屋にいる時だけだけど。

彼女いわく「貴方がここから出ないって言ったし、

今考えればまず扉のロックがある限り出れないから」だそうです。

確かに窓という窓がないし出入り口はそこの扉しかないから、彼女的にはOKらしい。いつか普通に彼女と生活できればいいけど。


そして二つ目。

何故か彼女が勉強を教えてくれるようになった。

別にここから出ない限り勉強は必要ではないのでは?と聞いたら「私と貴方に子供が出来た時に教えれないのは困るでしょ」と言われた。もう既にここらでない限りと言ってる時点でヒモが身に染みてきてしまった。脱ヒモのために有り難く教えてもらうことにした。それにかってに子供を作ることが決まっているようです。

相変わらずの頭の持ち主だ。


そして今、勉強を教えてもらっている。


「だからここはこうして」

「え?あ、なるほど」

「なるほどじゃないわよ。こんな簡単な問題できて当たり前よ?」

「え、嘘だろ?桜崎ってこんな難しい勉強してんのか」

「そんなことないわよ。多分だけど貴方が通っていた高校とそんな変わらないと思うけど」

「まじ?」


じゃあ、あの偏差値の差は一体なんなんだ。


「んー、多分先生が教えるの上手いのよ」


へー、なるほど。でも、それだけじゃないでしょ。

教えるの上手い先生ならこっちにもいたし。


「そうね。そこが桜崎のすごいところよ。いくら教えるのが上手い先生がいても、学ぶ方が馬鹿じゃ話にならないわ。でも桜崎はエリートと言われる人しかいないから、教える先生の実力と生徒の実力が合わさってあの偏差値が生まれるのよ」

「な、なるほどねぇー……ってあの、さらっと俺の心読まないでくれます?」


前もこんな事あったわ。やっぱりエスパーですね。

今確定しました。

ていうか、エスパーなら前こいつと気まずい感じになった時こいつ俺の考えてたこと分かってたんじゃないか?


「それが私も偶に聞こえるだけだから、その時は何も聞こえなかったわ」

「もう、お前ただのやばいやつだよ。何か変な薬やってんの?」

「そんなわけないでしょ?まぁほら、そんなことより次は英語よ」

「うぇー」









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「お、終わった〜」


辛かった、単語を書いてはテストして、書いてはテストしての繰り返し。次に発音の仕方だったのだが、え、お前外国人?と思ってしまうほど発音がすごかった。発音良すぎて何て言ってるのか分からなかったし。


「まぁ、今日の所は及第点ってところかしら」

「お前にとっての満点ってどんくらいだよ」

「私みたいな感じかしら?」

「あ、そうですか」


自信過剰だなとは言えないのが腹立たしい。まぁ、事実なんでもできてしまうからそのくらいの自信があっても不思議じゃないけどね。


「とにかくお疲れ様」

「ん」

「じゃーはい」


なぜここで頭を差し出してくる。撫でろっていうことか?もし仮にそうだとしても普通逆じゃないですかね?撫でますけどね。


「んはぁ……」

「なんでお前の髪こんなサラサラなんだ?」

「遺伝じゃないかしら。母の髪がサラサラだから。

父のは全然サラサラじゃないけど」

「……そうか」


忘れてたけど、こいつはちゃんと親がいるんだよな。こんな感じになっているけど。

俺の親はどんな人だったんだろう。子供を捨てる時点で大した親じゃないと思うけど。


「あ、ご、ごめんね」

「別にいいよ気にしなくて。今は親よりいい人が近くにいるし」

「ふふっ。そっか」

「なんで笑ってるんだよ。誰もお前のこととは言ってないぞ」

「ふーん」

「な、なんだよ」

「そういうこと言っちゃうんだ?じゃあゲームの時間減らして勉強しよっか」

「貴方様のことです。調子に乗りましたすみません」

「分かればいいのよ」


ゲームを人質にされると口答えができなくなるのは俺だけじゃないよな。ゲームと勉強どっちを取るからなんて殆どの人は決まっているんじゃないか?

俺?俺はもちろん頭皮マッサージだな。


「よし、勉強も終わったことだしゲームしようぜ」

「もうちょっと撫でてよ」

「お前が勝って俺にお願いすればいいだろ」

「いいわよ。昨日と同じ目に合わせてあげるわ」


あれからゲームで勝ったら一つお願いごとをするというルールはずっと続いている。それも、腕前はだいぶ上がってきた。もうCPに負けることはないがこいつには勝ったり負けたらしている。

ついでだが昨日は負けた。

お願いごとは「明日分かるわ」だった。なんかめっちゃ怖い。


「じゃあ、しましょうか」

「……おい」

「何かしら」

「邪魔だ、テレビが見えん」

「ふふっ。これが昨日のお願いよ」

「つまり、この状況ってことか?」

「そうね」


今の状態を説明すると、俺があぐらをかいているのだが、その足の間に彼女がすっぽり収まっている。

猫みたいで可愛いのだが、ゲームをする時には手を伸ばせないしとてもやりにくい。彼女を抱きしめる形にならないと、とてもじゃないがゲームなんてできない。いや、まさかこれが狙いか。


「お前卑怯だぞ」

「なぜかしら」

「こうなることで俺からお前を抱きしめることになるし、ついでに俺の邪魔もできるじゃないか」

「あら、別に抱きしめなくても、できない訳じゃないでしょ?」

「……」


なら、ここはあえて抱きしめてやってやろうじゃないか。俺が外側から腕を回せばこいつもある程度腕の自由は無くなるだろ。負けて悔しがる顔が眼に浮かぶぜ。


「後悔するなよ」

「あら、意外と大胆なのね」

「勝手に言ってろ。ほら、勝負しようぜ」


こいつの腕の自由を無くすことができたが、よく考えれば腕使わなくね?使うの指じゃね?

結局なんのアドバンテージを貰うことができないのかよ。









/\/\/\/\







「くそ、なんで勝てないんだ」

「ふふっ。今日も私の勝ちね」


こいつの車だけ異常に初速と加速がおかしいんだ。

どうなってんだよ。技術の差なのか?でも俺の方がプレイ時間多いし。なんでもできる天才ってのはずるいよな。


「で、今日は?

「そうねぇ……膝枕で頭撫でてくれるかしられ

「お前それ二つ言ってないか?」

「私もたまには癒しが欲しいわ」

「と言いますと?」

「疲れてこれじゃあ頭皮マッサージができなくなるわね」

「私でよろしけば、いくらでもやらさせていただきます!」


くそ、弱者はこう生きるしかないのか。

まるで、餌を目の前に置かれて待てをされた犬じゃないか。いや違うか?いや合ってるか?分からん。


「じゃ、今からやればいいのか?」

「できるなら寝る前がいいわ」

「お前寝落ちするだろ」

「最近私のことがよく分かってきたわね」

「まぁな。伊達に2ヶ月ちょいお前に監禁されてないしな」


毎日話してればそりゃ、少しくらいこいつのこと分かってくるだろ。あいつは最初っから俺のこと分かってる感じはあった気がするけど。

なんでだろうな。


「……貴方は外に出たいって思わないの?」

「前にも言ったけど、お前が俺を追い出さない限り別に出たいとは思わないな。……でも、お前と出かけたり一緒の学校とかに行けたりしたら、楽しそうって思うけどな」

「そ、そう。と、とにかく寝る前に忘れないでね。

私は夜ご飯作ってくるから」

「ん?あぁ分かってるよ」


少し何かを考える様な顔で、出て行った。

あいつ、鎖巻くの忘れてるけど……まぁいいや。

今日はちょっと疲れたし遅めの昼寝でもするか。

最近少しづつ肌寒さを感じてきて、風邪を引くわけにもいかないと思い、毛布を深く被り俺は少し深い眠りについた。

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