第14話俺は初めて深いキスをした

ちょっと長めです。

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朝の目覚めはなかなか驚くものだった。

まず、顔全体をくすぐるような感覚があり、ゆっくり目を覚ますと、こいつの顔が目の前にあった。

昨日も同じことがあった気がするが、今日のは少し違った。

昨日はベットにお互いの顔がくっついている状態、寝ながら向き合う状態だったのだが、今日の俺は仰向けで寝た。つまり、こいつが俺に覆いかぶさるようにして、向き合っていた。

流石に目覚めたばっかりでも物凄く驚いた。

そのおかげで一気に脳が回転し始めて、頭を勢いよく上げようと思ったのだが、今起き上がると、頭をぶつけることになるのを瞬時に俺は理解して、体を止めた。


「なにしてんだよ」

「おはようのキスよ」

「……お前もしかして、俺から一回したからっていつでもできるとか思ってないよな」


正確に言うと俺がしたのは、おはようのキスではなく、殺人衝動にかられたこいつを鎮めるためにした最後の手段だ。てか、こいつの唇めっちゃ柔らかいんだよ。それに、何か分からんけどめっちゃ甘いんだよ。何かは知らんけど。


「ダメなの?」

「ダメだわ」


そんなに自然に首を傾げて甘い声で言ってもダメです。可愛いと思ったけどダメです。


「おはようのキスくらい、いいじゃない」

「お前そのうち、おやすみのキスとか、行ってきますのキスとか、ただいまのキスとか言い出すだろ」

「むぅー」


図星だったようだ。なんかこいつ拗ねると幼さ感が出るんだよ。いつもは年上感があるのだが、たまに年下感が出る。そういえばこいつ高校何年生だろう。桜崎高校ってことだけしか教えてくれなかったな。


「じゃあゲームの時間30分にするわよ」

「おい!それは卑怯だろ!」

「何か言ったかしら?」

「うわー」


なんか最近 “ゲーム”という“餌”で踊らされている気がする。でも、おっさんが車運転して、人に甲羅ぶつけるのめっちゃ楽しいんだよな。

それが30分となると……くそ、背に腹はかえられん。


「分かった。ただし1日1回だ」

「やった!」

「……」


満面の笑みで嬉しそうにベッドではしゃいでいる。

俺の上からどいてくれたのは大変有り難い。

心臓がバックバックしてたからな。


「あ、朝ごはん持ってくるわね」と大変嬉しそうに部屋から出て行った。忙しいやつだな。








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そろそろ体を動かしたい。なんか、なまりになまっている気がする。そりゃそうだ。1日の半分以上このベッドの上なんだから。

とにかく動きたい。ベッドの上で出来ることといえば……いや、違うだろ。俺がしたいのはそういうことじゃなくて、ちょっと動ければいいだけなんだ。


出来ることといえば腕立てくらいか。

あんまり場所が場所なだけあって、安定はしないけど、できないよりマシだ。


「おし、やるか」


一……二……三……四……五……ろー


「朝ごはん持ってきたわ」


ぐは、いきなり入ってくるなよ。いや、俺が集中していて、ピーって音が聞こえなかっただけか。


「なにしてたの?」

「ん?あぁ腕立てだな」

「なんで?」

「動きたかったから」


「だったら……」に続いて何か言おうとしたのだろうけど、何か思い出したのか口をぎゅっと閉める。

まぁ多分あの事だよな。意外とこういうことはしっかりしてるよな。


「怪我はしないでね」

「ははっ。大丈夫だよ」

「そう。それよりも食べましょう。お腹減ってるでしょ?」


そう言って慣れた手つきで端っこにあるテーブルを持ってきて、料理を並べる。てか、俺の椅子がこのベッドなんだよな。今度ちゃんとした椅子にしてもらおう。


「美味しそうだな」

「ふふっ。ありがとう

「じゃあ、いただきます」「いただきます」









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俺は1日の楽しみの、ゲームをしている。

昨日よりはなかなか操作が上手くなったと思う。

だが、アイテム運がないのか、ここ!って時にめっちゃ甲羅に当たる。なのに10位くらいの時に回避アイテム出るから腹立たしい。


ゲームに夢中になっていると不意に「ねぇ、そういえば私もそれできるの?」と言ってきた。

コントローラも二個あるから多分できるよな。


「できると思うぞ」

「私もちょっとやってみようかしら」


よいしょと言って肩が触れ合う。もうこれが当たり前みたいになってきたから、つっこむ気力が起きない。


「操作の仕方教えてくれる?」

「あぁ」


どこを押せば前に進むとか、どうすればアイテムが使えるとか俺が知っている範囲ではあるが教えた。

いざ勝負、となったところでこいつから提案があった。


「もし、私が勝ったら」

「あーはいはい、好きなようにしていいぞ。常識の範囲内だけど」

「ふふっ。分かってるじゃない」


まず負けるはずない。こちとら伊達に3時間やってない。こいつは初めてコントローラーを触ってど素人だ。これのどこに負ける要素があるのだろう。

ここいらで、一発痛い目に見させてやろう。

ふっふっふっふ。








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どうしてこうなった。なぜ俺が負けたんだ。

いや、理由は大体分かっている。俺がこいつに気を取られていただけだ。

別にこいつが上手かったわけじゃない。素人の割にはできる方ってやつだった。

だが、初心者あるあるなのか、曲がる時にコントローラと体を一緒に傾けるから、それがめっちゃ可愛くて視線がテレビに向かず、ずっとこいつに行っていた。

ただ、後半は真剣にしたのだが、何故かこいつのアイテム運が良すぎた。それに全部俺に当たるもんだから結局最下位。こいつゲームの神様に愛されすぎだろ。


「ふふっ、勝っちゃった」

「く、くそ」

「さて、なにしてもらおうかしら」

「お手柔らかにお願いします」

「じゃあ、今日1日抱き枕にしようかしら」

「抱き枕?」

「えぇ。だから今日は私の抱き枕ね」

「お、おう」


勢いに任せて返事をしてしまったが、大丈夫だろうか。なんかめっちゃ嫌な予感する。

こう、なんかお風呂で起きる気がする。

あ、これ今のフラグじゃん。確定ですね。

はー、怖い。














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「えへへ」


抱き枕ってそういうことなのね。ずーっと抱きつかれてるよ。これが文字通りか。


「こんなに抱きついてて何が楽しいんだ?」

「だって貴方のあったかさと、匂いが味わえるなんて最高すぎるわよ」


男の汗臭い匂いなんて嗅いで何がいいんだろうか。

こいつみたいに、女子のいい匂いなら百歩譲れば分かるけど。でも、あったかさっていうのは俺にとって温もりと同じ様なやつだから結構分かる。

他人のあったかさって心地いいんだよな。

まぁ、後ろから抱きつかれているのが幸運中の幸運

か。いや、違う違う不幸中の幸いだろ。

まだ、昼の2時だし。これからが長い。

あ、お昼ご飯は、サラダとオムライスでした。

大変美味しかったです。


「ねぇ、前から抱きしめていい?」

「ダメって言ってもあーだこーだ言ってやるんだろ?」

「よく分かってるじゃない」

「はぁ」


背中にあった、柔らかい感触と温もりが一瞬無くなるが、俺の目の前に嬉しそうな笑みを浮かべて少しづつ俺の背中に腕を回して、ギュッとさっきよりも力強く抱きしめられた。

さっきよりも、近くにいるからなのかふんわりとしたいつもと違う甘い匂いがした。


「お前、なんか匂い変わった?」


自分で言ってなんだが、さっきから匂いのことしか言ってない気がする。これも全部こいつがいい匂いのせいだ。ほら、また匂いの話した。


「あら、分かるの?ちょっと柔軟剤変えたの」

「え、お前香水してなかったの?」


こんなにいい匂いするんだから、香水かと思ってた。女の人って恐ろしいな。いろんな意味でね。


「してないわよ。別にそういうの興味ないしね」

「そ、そうか」

「それよりも、キスしていい?」

「1日1回ここで使うのか?」

「本当は寝る前にしようと思ったけど、それだと抑えきれない気がして」


何をとは聞かない。大体分かる。こいつも色々と我慢してんのかな。だから今日は若干甘えてきたのかもしれない。でもやっぱり今はできる気がしない。

そういう行為がトラウマになっているんだと思う。


「ん」

「貴方からしてくれないの?」

「恥ずかしいんだよ、早くしろ」


ゆっくりと俺の目を見つめて彼女の顔が近づいてくる。やっぱり可愛いよな。


「ん……ちゅ……」


柔らかい唇が俺の唇と重なり合う。ふんわりとしたキスが少しの間続く。


「んぁ……ん……ちゅ……んん!」


こ、こいつ、舌入れてきやがった。嘘だろ?

突然のことだったから思いっきり引き離そうとしたのだが、背中に腕を回されていて押してもなかなか離れない。


「ん……ふっ……やめ……んンむっ」


やっと少し喋れそうになったのに、一瞬でまた口を塞がれる。彼女の舌が俺の口を蹂躙する。制御の効かなくなった器械のように舐め回す。俺の呼吸が自由なものじゃなくなる。

何回も何回も角度を変えられは舐められの繰り返し。唾液が交わる卑猥な音が聴こえてくると同時に頭がぼーっとしてきた。少しずつ体がベッドに押し倒される。いや、俺の体の力が抜けてきた。

俺の体がベッドに着いた同時にやっと、解放される。


「ぷは……んあ……はぁ……はぁ」


互いに見つめ合う時間が何秒も何分もすぎていった。




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