第13話俺は肩揉みをする
「どう?楽しめた?」
「あぁ」
こいつが買ってきたゲームは、某ちょび髭を生やしたおっさんが、車に乗って競い合うゲームだった。
楽しめたには楽しめたのだがいかんせん、この程のゲームをしたことがなく、かなり操作が覚束無くCPにボロ負けした。
それに、1日ゲームは2時間までと、時計を見せられた。たしかに、今の俺の状況はニート同様だから、時間を決めるのは俺も別に異論はない。
テレビもあるから、ある程度は暇を潰せると思うから、1日中暇という事は多分無くなる。
「そう、よかったわ。それよりお風呂済まさせてきてもらえる?」
「分かった」
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風呂で何かあったわけでもなく、ただ普通の風呂に入った。
唯一感じたことは、頭皮マッサージがないことだった。自分でやってみたのだが、全然あいつがやってくれたのと違う。なんかただ単に痛かった。
頭皮マッサージをマスターにするのはまだ時間がかかりそうだ。
だだ問題は洗面所で起こった。
上がった時に、目の前であいつが着替えていたわけでもなく、俺の着替えが変な服ということもなかったのだが、俺の下着の横に、あいつの白色のショーツが、置いてあったのだ。
これは何を意味しているのか。
履けということか?いや、なら俺の男用の下着を置くはずがないし……アレに使えということか。
いやいや、使わないぞ!?少し目を奪ったのは事実だけど……うん、何も見てないことにしよう。
あいつが何を思って置いたのかは知らんけど、そうした方が俺にとって、平和に収まる気がする。
とりあえずこっち側から出れないから扉を叩く。
そうしてちょっと待っていると、扉が開いた。
「あら、思っより早かったわね。スッキリした?」
「……あぁ、風呂は良かったよ」
「……私の「知らん」」
こいつが何か言う前に、俺の言葉で遮る。
だって俺は何も知らないからな。
「そう……もうご飯用意してあるから行きましょう」
相変わらず目隠しをされる。だが今日は手錠はかけられていない。これは……信用されたのか?
それとも、ただ単に今日は疲れたからなのか。
うーん、こいつの考えてることはよく分からん。
『「いただきます」』
うん美味しい。やっぱりなんでもできるんだな。
桜崎高校で家庭科の授業とかやってたのかな。
家庭科の授業好きだった。別に作るのが好きとか得意とかじゃなくて、他の人が作るご飯が美味しくて。ただそれだけの理由だけど、好きだった。
「貴方私の作ったご飯食べてる時に他の人が作ったご飯のこと考えないでよ」
「っ!」
エスパーですか?エスパーですね。
「な、なんで?」
「顔見れば大体分かるわよ」
「そうか。すまん」
「……それなら、少しお願いしていいかしら」
「ん、なんだ?出来ることならするけど」
一言言っときます。あっち系は勘弁です。今は無理です。
「肩揉んでくれないかしら」
なるほど、確かにテレビも一人で設置したって言うし、疲れてるのかもしれない。
「おう、分かった。じゃ食べ終わったらな」
「うん。でも先にお風呂に入ってくるわね」
「そうか」
「ありがとね」
その後はテレビの音もあり少し会話もいつもより弾んだ。好きな食べ物とか、これまでの事とか。
俺は少しドキドキしながら平気を装っていた。
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「じゃあ、お願いするわね」
「おう。でも肩揉みとかした事ないから、あんまり気持ち良くないかもしれないぞ」
「ふふ、大丈夫よ。貴方が私に触ってくれるだけで気持ちよくなれるから」
うわー、なんかちょっと良い雰囲気が台無しになった。もうこの人やばいよ。危険だわ。知ってたけど。てか、寝てる間に変なことしてないよね。
「じゃ、やるぞ」
「うん」
どこを揉めば効果的かは分からないけど、なんとなく、親指に力を入れて少し軽く押す。
「んっ」
「……変な声だすなよ」
「だって」
同じ所をずっと揉んでるのもあれかと思い、場所をずらす。
「あ、そこいい」
「……」
「あ、ちょっ……んっ」
俺は肩を揉んでるだけ、俺は肩を揉んでるだけ。
何も変なことはしていない。
首を気にしていた気がするから、首側を揉む。
「んあっ……だ、だめぇ」
……無心だ。俺は無心を貫くんだ。無心になるんだ俺!
「ね、ねぇ、もうちょっと強……激しくして」
やっぱり無理です。男の俺には卑猥な言葉にしか聴こえません。
「おい!お前いま強く押してって言おうとしたのに、激しくに変えただろ!てか全部わざとだろ!」
「そんな、こと、ないわよ」
「嘘つけ!」
そんなこんなで、だいぶ時間が過ぎた。
結局は終始あいつのやることは変わらず、俺は色々と悶え苦しむことになった。
そのうちに、眠たくなってきたのか、首をカクカクしていたから、「もう寝るか?」と聞くと「もう、ちょっと」と言うので、「そうか」と言って肩揉みを続けた。だが、今は完璧にもう寝てしまっている。もう完全に体を俺に預けている。
――無防備すぎるだろ。自分の容姿分かってねぇのか。
こいつの髪が俺の頰をくすぐる。
なんでこんなにいい匂いするんだよ。俺と同じの使ってるよな。それとも実は違うやつ使ってるのか?
俺の手が勝手に髪を撫でる。 やっぱりサラサラだよな。綺麗な黒髪だし。
――少しくらい俺にご褒美があってもいいよな。
俺は彼女の体を思いっきりギュッと強く抱きしめた。もちろん彼女が起きない程度だが。
監禁という形にはなっているけど、別にそこまで不自由なことはないし、こんな生活があってもいいかもしれない。俺はそう思いながら彼女をゆっくりベットに寝かせて、布団を掛けて自分の瞼も閉じた。
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