第2話俺の学校生活は今終わった
「なぁ、ヤンデレに監禁されたらどうすればいいと思う?」
いきなり変な話題をふってきたのは、俺の唯一無二の友達のような存在の、羽純 潤(はすみじゅん)
この学校で俺に話かけてくるのは、先生かこいつくらいだ。
それもそのはず。自分で言うのもなんだが、俺はここら辺では大体のやつが知っている、変わり者の
小日向 柊(こひなた しゅう)だからだ。
小さい時からまともな育ての親がいなかったのが主な原因だと思う。
俺が聞かされているのは、道端に俺が捨てられいたことだけだ。それこそ最初は親切な人、元俺の育て親が拾ってくれたのだが、俺を拾った8年後に病死。その次は最初の育て親の親戚の人。
だがその人も俺を引き取ってから3年後に事故死。
その次の人は俺引き取ってから1年で俺を捨てた。
それも無理はない。俺を引き取った人達が引き続き死んだのだから。だから俺は“不幸の子”なんて厨二くさい名前で呼ばれていた。
8年間俺を大切に育ててくれた人の愛情しかなかったから、こんな感じになったんだと思う。
2番目の人は多分ちゃんと俺を育てようとした思うのだが、この時から同じ歳の子供とはだいぶ違ったから、気味が悪かったのだろう。2年も経たないうちに俺への愛情は消えていった。そして事故で死んだ。
そこから俺の気持ちは無に居るような感じだった。
ただ欲しかったのは、他の人からの愛情だけだった
それこそ、公園で親子楽しく遊んでいる、それだけの単純な愛情が欲しかった。
3番目の人が俺を捨てるのと同時に「これでやりくりしてくれ。これから俺達家族に関わらないでくれ」
そう言って知り合いの大家に家賃と通帳を渡して去っていった。それが初めて俺にくれた微量の愛だったのかもしれない。
大家は無理に俺に関わろうとしない、必要以上に話さないのだ。学校に必要な書類等もその大家の名前だ。ちゃんとしている人だからなのか、通帳は俺に渡して、必要な金額を言えば引き出してくれる。
でも俺には、そういう行動をするように作られたロボットにしか見えなかった。そこにはもちろん愛情はない。
勉強は得意な方だと思う。
それこそ愛は無かったが、テストでいい点を取れば先生が褒めてくれるから、それを心の支えにして、とにかく頑張った。
そのおかげで私立じゃなく、県立に入れた。
それこそ私立だと多分貯金がなくて高校には行けなかったと思う。
高校に入ってからは俺の事を知っているやつはかなりいた。知っていると言っても不幸の子ってことだけだったけど。最初は好奇心で近寄って来るやつがいたけど、俺の変わった性格が気持ち悪くて離れていった。ただ、こいつ……潤だけは、離れて行かなかった。「人間気持ち悪い位がちょうどいい」ってのが言い分だった。多分類は友を呼ぶんだと思う。
まぁそして今にいたる。
「なに、潤ヤンデレに付きまとわれてんの?」
「いやー、ちげぇんだよ。よくあるだろ、ヤンデレに監禁されたーとか」
よくあるかはわからないけど、それならゲームなどで見るシチュエーションだ。俺はかなりゲームが好きだ。大家から貰ったゲームならどハマりしていた時期もあった。ギャルゲーだけどね。画面の向こうで愛をくれたのが一番の理由だと思う。
「とりあえず逃げるだろ」
「縄とかで縛られてるんだぜ?」
「なら、地道に縄を擦って切る。それからヤンデレの子を気絶させて家から出る」
「相変わらず変わってんな。でも、そんな簡単にいくか?」
「まぁ、9割無理だろうな」
「だよなー。やっぱ監禁されたら終わりだな」
まずこの世に監禁できるなんてあり得るだろうか。
今のご時世、警察も馬鹿じゃないし、それに帰ってこなかったら家族が気づくだろ。それこそ帰ってこなくても心配されないような人、もしくは心配する人がいないなら別の話だろうけど。
「まぁ、ヤンデレに付き纏われる前に潤は彼女いるだろ?ほら噂をすれば迎えに来てるぞ」
「あ、本当だ。じゃ悪りぃな柊先帰るわ。じゃ」
「あぁ」
廊下に向かって教室から出てく潤を見ていた。
そこには彼女が潤に甘える姿があった。
俺はその彼女になんの興味もないが、“甘える”という行為は全てが愛で、できているものだと思う。
あざとさも愛があってのものだし、甘やかすのも愛があるからだろう。ただ単に羨ましかった。
俺も彼女を作ればあんなことをできるだろうか、いや無理だ。まず俺とそういう関係になりたい人なんて誰もいないと思うし、100歩いや、10000歩譲ってできたとしても、多分あんな微笑ましいことにはならないだろう。なにせ不幸の子なんだから。
ただ1つ思い浮かんだ。
ヤンデレといえど愛してくれるのなら、俺は嬉しい限りだ。
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俺はあの後、潤が俺の向かう逆方向に向かって校門から出て行くのをみて、教室から去った。
潤がいない教室にいる意味なんて1つもない。
帰ったら何をしよう。今日はバイトもないし、宿題もない。ご飯は適当でいい。
コンビニいや、スーパーで半額の惣菜でも買いに行こうか。でも向かうのには早すぎる。
久々にゲームでもしようかな。でも電気代もあるしなぁ。とりあえず帰ろう。
学校から徒歩10分にある家にはあっという間に着いた。
部屋に入ってすぐに、シャツを脱いでジャージに着替える。やっぱりジャージは最高だ。肌触りがいいし、リラックスできる。
さてと、どうしようか。部屋の掃除も最近したし。
そういえば玄関の掃除がまだだった。
玄関の掃除をしてから次を考えよう。
掃除は嫌いじゃない。時間潰しにもなるし、綺麗にもなる。一石二鳥だ。
玄関の掃除をしようとしたが、ポストに紙が入っていることに気づいた。
(なんだ?回覧板じゃないよな)
他に思い当たる節がない。
とにかく手にとって見てみる。
そこには驚愕のことが書いてあった。
クリネスーパー今日限り5時から6時まで全品半額!!と手書きで書いてあった。
俺は財布を持って家から飛び出した。この時手書きなんてことには気が回らなかった。
「柊、買い物か」
何日ぶりだろうか。久々に大家の声を聞いた。
「あ、はい」
「そうか、気をつけてな」
「はい」
これが俺にとってこの大家と話す会話だ。
周りから見れば、少なすぎる会話だと思うが、これが普通なのだ。
俺は踵を返してすぐにスーパーの方向に向かって走り出した。
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はぁ、はぁ。間に合うだろうか。
家を出たのが4時50分。スーパーには間に合うのだが、買いたいものが買えるかは分からない。なにせあそこは半額という言葉が出ると戦場と化する。
それが全品となるともの凄いことになりそうだ。
(つ、着いた)
はぁ、はぁ、と息を切らしていると誰かが近づいてくる足音がした。俺は、まずい早くしないと無くなる!と思いその足音がエンジンとなり歩こうとしたが、ゴンッ!という鈍い音と、激しい頭の痛みに、何が起こったのか分からずに、意識を落とした。
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