第14話 白髪の殺人鬼との約束
「オラオラオラオラァ‼ さっさと散れぇ‼」
叫びと共に、両手に構えたマシンガンから光の闘気を流し込んだ弾丸を次々と新戦組支部や迎撃に出てくる敵に叩き込む慶介。
本部に帰還して以降、予想外のデスクワークの手伝いをやらされ続けた鬱憤が溜まっていたのか、彼の攻撃はその鬱憤の全て吐き出さんばかりの勢いと覇気が溢れ出ていた。
だがやはり、基地は地上ではなく、地下にあるようだった。
「ちっ、やっぱり乗り込むしかねぇか……‼」
ぶつくさと文句をつぶやく慶介。対照的に、隊員達は士気を高めんとしていた。
「怯むな‼ テロリスト共に屈する俺達じゃない‼ なんとしてもこの拠点を守り抜くぞ‼」
「「「「「了解‼」」」」」
そのまま隊員達は、腰から刀を抜いて各々の属性の闘気を纏わせ、慶介達目掛けて突進を始めてきた。
「今だぁ‼」
「分かってるよ!」
すると突然乱射を止めた慶介と、彼の率いていた構成員達の背後から両手に巨大な戟を持った将也が、その巨躯で大地を踏み鳴らしながら隊員達の前に立ちふさがった。百八十センチを超える巨躯と、両手の大戟を目の当たりにした隊員達は一瞬怯んだ。
「僕は慶介の盾の役割を担わされたからね……簡単に近づけさせないよ!」
両手に持った大戟に鋼の闘気を纏わせ、怯みつつも襲い掛かる隊員達を縦横無尽に大戟で薙ぎ払う将也。
その度に、彼の足元にはおびただしい量の血と手足が転がっていった。
「サンキュー将也」
「後から来る増援は僕達で対処するから、安心して撃ちまくって!」
「へっ! 言われなくてもそうするよぉ‼」
将也の激励の言葉を聞いた慶介は更に昂ぶり、味方を率いてビル内部の階段を駆け上がっていった。
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「畜生‼ この女強いぞ‼」
「部隊長‼ 何とかしてあの女達の隙を付かないと……」
「隙? 私と私が率いる隊に隙があると思ってるのかしら?」
慌てふためく隊員達のつぶやきを耳にした瀬理名は、手にしたサーベルに炎の闘気を纏わせながら冷徹な声でそうつぶやいた。瀬理名の足元には、既に彼女によって斬り伏せられた隊員達の屍が転がっていた。
「さて……次は誰が天国へ旅立つのかしら……?」
不気味につぶやきながらサーベルを構え、周囲を包囲する隊員達の一人に近づく瀬理名。
彼女の冷たくも圧迫するような気迫に押され気味の隊員達だが、一人の隊員がやけくそ気味な叫び声を上げ、瀬理名の右側面から風の闘気を刀に纏わせて斬り掛かる。
「好き勝手言いやがってぇ‼」
構えた刀を大きく振りかぶる隊員。
その刹那、瀬里奈は手にした炎の闘気を纏うサーベルで男の胸部に鋭い斬撃を食らわせ、焼き付きしながら絶命させた。
その斬撃は光の速さで閃き、周囲の敵は瀬理名がサーベルを動かした瞬間すら捉えられず、まるで魑魅魍魎を目の当たりにしたような表情で瀬理名を捉えていた。
「こんなところで遊んでる暇は無いんだけど……いい加減通してくれないかしら?」
「ふ……ふざけんなぁ‼」
瀬理名の挑発に乗ってしまった隊員達は一斉に刀を振るって瀬理名と彼女の率いる部隊に襲い掛かった。
「第三部隊! 私が拠点までの道を作るから、続いて‼」(聖剣乱撃‼)
「「「「「了解!」」」」」
部下に指示を出しながら、手にした炎のサーベルを目にも止まらぬ速さで振るい、襲い掛かってくる隊員を次々と焼き斬る瀬里奈。
続けて率いる部隊の構成員達は続々と支部へと続く地下階段のある木造平屋へと進軍していった。
「おい‼ 本部からの増援はまだなのか⁉」
「もう少しで到着するとのことです‼」
「くそう‼ 早く来いってんだよぉ‼」
次々と骸に変わっていく仲間を見渡しながら、隊員達はいつ到着するか分からない増援の到着の遅さに苛立ちを隠せず、それが冷静さを失わせることに拍車を掛けてしまった。
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「御影様。やはり拠点は地下にあるようです」
「やはりな……」
ドローンでで状況を確認しながら指揮を執っていた御影はため息をつきながらそうつぶやいた。それとほぼ同時にサイバー戦略室の扉が開き、翼が入って来た。
「戦況はどうなんだ?」
「現状こちらが有利だが、油断はならない」
「瀬理名達の方はどうなってる?」
「そっちの方は木造の平屋だ。これまでの調査の結果。あそこは地下に拠点があることが分かってる。存在を隠匿する為に随分と手間と金を掛けたもんだ」
「施設の存在そのものを疑わせない為に、あんなボロボロの家屋を利用したのか。まあ、俺達も似たようなことをしてたがな」
翼もまた無線をして状況を確認しながら御影と会話してた。すると戦略室の構成員の一人が両者に向かって報告を始めた。
「現場からの報告です。新村様と冠城様率いる第一、第二部隊が施設の支部長を殺害し、降伏させたとのことです!」
「こちらも報告です!桐原様率いる第三部隊も、拠点支部長を討ち取ったとの
ことです!」
その報告にサイバー戦略室の構成員達は歓喜の声を上げた。
「それで、施設内に蓄積されている情報を抜き取れたか、随員している譲歩担当員から確認は取れたか?」
そんな空気に飲まれること無く、翼は構成員の一人にそう尋ねた。
「それに関しては、既に削除されていました」
「やはり対応が早かったか……」
報告を聞いた御影はやや落胆した。その直後、戦場上空を飛んでいたヘリから送られた映像を見たサイバー戦略室の構成員の一人が叫びながら報告した。
「戦場から南方と西方五百メートル地点より、新戦組の羽織を着た部隊が進行中‼ 数は約二百人。あと五分で両方の部隊と激突すると思われます‼」
その報告を聞いてサイバー戦略室の構成員達はどよめきだした。増援が来襲することは想定していたものの、当初の計算よりも十分早く到達したことにとまどったのだろう。
「慌てるな‼ 既に目的は果たされた‼ 即座に撤退するように通達しろ‼」
全く動じていなかった御影は彼らに対して落ち着いて指示を出した。すると翼は何かを決心したかのような表情で、指示を出し終えた御影に耳打ちをした。
「……現場付近に待機させた奴には俺から連絡を入れる。」
「……BLOOD・Kを動かすか……」
「奴を殿に出すタイミングの判断は、俺が下すことになっているからな。そろそろ向かわせた方が良いだろう」
「分かった。ヘリも現場から一旦離すように指示する。長々と現場に留まっていると怪しまれるからね」
「了解した。そっちは任せる」
そう言って翼はサイバー戦略室を後にした。
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サイバー戦略室を後にした翼は無線回線を開き、慶介達より遅れて十分後にバイクを貸し与えて向かわせたBLOOD・Kに連絡を入れた。
「出番だ」
『そうか……』
「お前が言っていた、例の二人も現場にいる」
『……信じていいんだな?』
「随分と疑り深いな」
『俺を騙して動かし、それで一億円分の働きをしてもらおうという魂胆じゃないんだな?』
「赤狼に二言は無い」
『……利子も付けて返しとくぜ……』
翼の現状報告を聞いたBLOOD・Kは通話を切った。
「……利子ねぇ……」
通信を切る前に最後にBLOOD・Kが言った言葉をつぶやいた。
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