第13話 ゆえに君との恋縁
その後、16時には学生以外は退場と決まっていて。2人のお母さんと色々話してたらあっという間に時間になってしまった。ビターもブラックも料理はできないらしい、そのことをぼくに知られたくなかったのか「もし一人暮らしか二人暮らし始めたらあ、一緒に暮らしてあげてくれない?」という言葉に自販機で買ってきていたジュースをこぼしてあわててた。あと、ぼくが料理が好きだからいつもいっぱい作っちゃって、ブラックとビター、ホワイトに食べるの手伝ってもらってるんですよーなんて話をしていたらびっくりしてた。両親ともブラックとホワイトは購買でなにか買っていて、ビターは 適当な舎弟にでも作らせてるんだと思っていたらしい。……舎弟って。
なぜだかお家に遊びに行く約束をして、ビターとブラックの両親は帰っていった。お母さんは「このまま連れて帰りたいわあ」と言ってたけど、ブラックとビターが止めてた。なんかこの後の後夜祭の時にぼくに用事があるんだって。そこにホワイトが戻ってきてなんかにまにましてたから、いいことでもあったのかなって思った。
そんなぼくはいま、学校になぜだかある小高い丘に一本だけ生えてる木のところにいる。
っていうか、ビターとブラックに連れてこられた。後夜祭があるって言ってたのに参加しなくてもいいの? と聞いたらホワイトがあれは任意だから別にいいのよって言ってた。
ホワイトは途中……校舎を出るまでは一緒にいたんだけど、恋人さんとキャンプファイヤーのところで踊るんだって言いながら別れた。キャンプファイヤーいいなあと思ったけど、なんだか丘に向かう2人の顔がやけに真剣だったからなにも言えなかった。
花畑を越えて、芝生の生えた丘の上で。まるでゲームに出てくる告白の名所みたいだなーなんて考えていたのが悪かった。ぼんやり考えてるうちに、身体は幹に押し付けられて。
「あのな、ヒーロー。前、好きよりも上っつっただろ? あれな、愛してるってことなんだ」
「ふぁ!?」
「でね、後夜祭に告白すると結ばれやすいって聞いてさ。女々しいけど乗ってみようと思って」
「愛してる」
「愛してるよ」
「で、ヒーロー」
「どっちを選ぶの?」
さわさわと穏やかに揺れる夕日に照らされた木の葉、その幹に両側から伸びた2本の腕で背を押し付けられながら艶のある黒髪の、同じ顔が2つ。低い位置から懇願するように見上げてくるのを見ていた。
ぼくはいま、最大級の試練に襲われている。
ぼくとしては、ブラックもビターも大好きだ。優しいしいつも可愛がってくれる。それこそお付き合いしてもいいと、ぼく以外を可愛がっちゃやだなって思うくらいには。
そう、ぼくはビターもブラックも大好きなんだ。ここでブラックだけ、ビターだけを選んで悲しい気持ちにさせることはできない。でも、だったら2人とも断ればいいのかもしれないけどそうしたら大好きな2人がさらに悲しむだけで。
だからぼくは。覚悟を決める。
「お、」
「「お?」」
「お友達からお願いします!!」
「いや、今までが友達だろ」
「それともヒーローは僕達のこと友達だって思ってなかったの?」
「そんなことないよ! 2人とも大切な友達だって思ってるよ!」
あわてて言えば、ビターの目が細まりブラックは仕方なさそうに苦笑する。
「悪いなヒーロー。俺らは友達じゃ満足しねえんだよ」
「あのね、ヒーロー。怒らないしいじめないから、素直な気持ちを聞かせてくれないかな?」
「……あの、ぼく。2人のこと大好きなんだ、すっごくすっごく大好きなの。だから、どちらかを選んでどちらかが泣いちゃったらいやで、だったら。だったら選ばない方がずっといいと思うけど、そしたら今度は2人とも泣かすことになっちゃうし。ぼく、もうよくわかんない」
じわりと滲んできた涙を、必死に拭う。それでもあとからあとから出てきてしまって、どうしようと思うけど涙は止まらない。ぐっす、ひっくっとぼくの泣き声だけが静かな丘に響く。遠くではきゃあきゃあ楽しそうに騒いでる声が聞こえるのに、なんでぼくはここで泣いてるんだろう。虚しくてどうしたらいいかわからなくて足が震えそうになる。目元を袖で拭って拭って。最終的には袖を当てたままにしていると。
なにか話し合っているらしいビターとブラック。結論が出たのか、ぼくの方を向き直ってそれぞれ押さえつけた腕はそのままにもう片方の手でぼくの目を覆っていた腕を退けると。
ぺろり。
「ふぇ!?」
「しょっぱいなあ? ヒーロー」
2人に目尻の涙を舐められて、驚きに声を上げれば。くははははっとビターが笑ってた。いつものにやにや笑いでぼくを眺めてて、そんなビターを見てたら涙も止まった。ブラックがまだ苦笑いのまま口を開く。
「あのさヒーロー。僕達も話し合ったんだけど、ヒーローがどちらか片方のものになると殺し合いになりそうだから。共有する、って考えになったんだけどどう思う?」
「こ、殺し合い……って共有? ぼくを?」
「ん。嫌か? なら殺し合いでも」
「ぼ、ぼく共有されたいな! 2人のものがいいな!」
なんなら殺し合いでも構わないと言いたげなビターに、大事な2人にそんな物騒なことさせるわけにはいかないといそいで言い募る。すると2人がにんまりと笑って(こういう時だけすごくそっくりだった)だんだん身体ごと顔が近づいてきたかと思うと。
ブラックは右の唇に、ビターは左の唇にき、きす、してきたのだった。ぼくは瞬間湯沸かし器みたいに顔が熱くなって。ふらっと幹に押し付けられたまま、視界は暗転したのだった。
その後のことは知らないけど、ホワイトに聞いた話だと。ちょうど運良くも告白の結果を聞きにきたホワイトが気絶したぼくを幹にもたれかからせるように座らせてちゅーしたりきすしたりしてる双子を発見してぼこぼこにしたらしい。
気づいたら3人一緒に保健室で横になってたから信憑性はある。でも、喧嘩したあとみたいに顔にも傷を作ってて驚いたぼく。ついあげてしまった悲鳴に傷ついた2人をハグやすりすりなどで一生懸命にご機嫌をとったのは秘密だ。だってなんか恥ずかしいもん。まあ、こ、こ、恋人な、わけだし? いいと思うけど。
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