第10話 うちの文化祭にはネクロマンサーが……
文化祭当日。
「うわあ、すごいね、すごいねえ!!」
「みんな結構手のこんだやつ作ってるみたいだね」
「うちのクラスは休憩所だけどな。あ、ヒーローみろよ。お化け屋敷あるってよ」
「ひえっ。お化け屋敷やだ!!」
「ヒーロー幽霊嫌いなの?」
「だって、ぼくのいる学園でお化け屋敷っていうと
いやいやと涙目で抗議すれば、なんとも言えない顔で黙り込む2人。ぼくが殴っても、ぼくの側近であるユイラインがずっと前に《
あーだこーだ言いながら出発点であるクラスを出て、とりあえずはわたあめのお店に行くことになった。これ、実はビターの案だったりする。ビター甘いもの好きなんだって。やっぱり可愛いねーと頭を撫でていれば。まだ午前中のため学生しかいない廊下がざわめいたけど、ビターがひと睨みしたら散ってった。
わたあめを袋に入れてもらって、次はお隣のフランクフルトを買って食べてたんだけど。ブラックもビターもなんか悶えててどうしたのかなと思った。次は服飾部の洋服を見に行った。可愛い服がいっぱいで、ブラックもビターも見てるだけだったけどぼくは服飾部のひとにお人形にされて30分くらいずっと服を着せ変えられてた。2人とも全く助けてくれないどころか、写真撮ったりしてたんだよ。ひどいよね!
あまりに着せ替えられてたから、若干ぐったりしたぼくを背負ってくれたビター。ブラックがちょっと休憩しようかと言ってくれたから教室に戻ってきたら。
「あら、潤じゃない。どう? 文化祭楽しい?」
ホワイトがいた。机を向かい合わせに何個か配置して、レースのテーブルクロスを敷いて。花とか色々飾ってあるだけだけど、やっぱり歩き疲れるのか結構混んでた。
そんな中で、ぼくたちの4つの机を堂々と2人で占領している姿は目立ってたけど、ホワイトは気にしてないようで。むしろホワイトと一緒に座ってる不思議の国のアリスみたいな格好をした女の子の方が人目を気にしているみたいだった。顔を伏せて、縮こまりながらどこかの売店で買ってきたのかジュースを両手で持っている。
あれ? そういえば恋人さんとまわるって言ってたから、もしかしてこの子がホワイトの恋人さん? ここは同性結婚なんかも認められてるから、それもありなんだよね。ってことで。
「うん、すっごく楽しいけどひどいんだよ! ブラックとビターがね、ぼくが服飾部のひとたちに着せ替え人形にされてるのに写真撮ったりしてて庇ってくれなかったんだよ!」
「あー……可愛い服いっぱい着せられたでしょ?」
「うん! ってホワイトたちも行ったの?」
「本当は手芸部見たかったんだけど。間違って入った瞬間この子が目、つけられてね」
「ホワイトの恋人さん、お疲れさまです」
「……そ、そ……つ……れ……っす」
「あ、ごめんね。この子人見知りなの。「そちらのほうこそお疲れさまっす」だって」
長い前髪で隠してるせいで目が見えなかったけど、ぺこりと頭を下げられて。これはご丁寧にとこちらも頭を下げ返す。「っす」口調って……体育会系? と思ったけどどう見ても目の前の小柄な女の子には体育とか申し訳ないけど似合わなくてクエスチョンマークが頭に浮かぶが無視して。
ホワイトがあなたたちも座れば? というから、ぼくは恋人さんの前に座ろうとしたら。素早くブラックとビターが椅子に座ってしまった。元々4脚しかないから、立ってろってことなのかなと思いつつちょっとうなだれていると。2人が腕を広げる。
「来いよ、ヒーロー」
「おいで、ヒーロー」
どうやらぼくはどちらかの膝の上に乗らなくちゃいけないらしいと悟る。え、えー。ぼくそこまで子どもじゃないんだけどな。でもせっかくだし、膝の上に座ったことないし。楽しそうだし! でもでも、どっちか選んだらどっちか選ばないってことになっちゃう。うー、それはそれで申し訳ないし。あ、そうだ!
ぼくがブラック側に近寄って膝の横に来るとブラックが満面の笑みで、ビターが舌打ちしてた。
「えいっ」
「わっ」
「おお!?」
えいっと膝の上に飛び乗ってスライディング猫みたいな感じで2人の膝の上を借りて横になってみた。むむっ、ちょっと硬いけどいい感じだ。頭がビターの膝の上で、お尻とか足がブラックの膝の上。そしたらくしゃくしゃっと頭を撫でられたから、上を見ればビターが大きく笑っていた。
「くはははは!! 最高だぜヒーロー! 」
「あはは、もう。ヒーローは面白いなあ。っていうかこういう猫の動画見たことあるよ、可愛いね」
「うひゃあ! もう、ブラック、お尻は撫でちゃダメだよ! お触り禁止」
「あん? 堂々共同戦線協定破ってんじゃねえぞブラック」
「だってビターの方には頭があるけど僕の方にはないでしょ。だから協定は破ってないしあるもので満足してるだけだよ」
「ちっ、変態が」
かと思えばブラックにお尻撫でられるし、まあうつ伏せになってるから仕方ないんだけれども。ブラックの言い分も理解できるし、つまりぼくに頭が2つあったらよかった? それ妖怪じゃん、ぼくじゃないよ。最後の言葉はビターが小さく呟いたせいでなに言ってるかわからなかったけど、褒め言葉じゃないのは黒く笑ったブラックに誓ってわかった。
そんな風にして3人でぎゃいぎゃい遊んでたらいつのまにか恋人さんがいなくなってて、呆れたようにこちらを見るホワイトがいた。
「あなたたちねえ……あたしだってあの子とそこまでいちゃついてないのによくやるわね」
「いちゃ?」
「え、なに。潤自覚ないの?」
「ホワイト、いちゃいちゃっていうのは恋人さんとやるんだよ? ぼくみたいなちんちくりんじゃ2人が可哀想だよ」
「……振り返って見なさい、潤。いままで友達という名に甘んじて行動しなかった者たちを。思わぬ一言から来たカウンターを避け損ねた哀れな奴らの末路を」
「末路じゃねえよ」
「終わってないから」
大仰に腕を広げて言うホワイトに振り返れと言われたので振り返れば、手で目元を覆っているビターと両手で顔を覆っているブラックがいた。そのままホワイトに反論していた2人だったけど、格好が格好なだけに格好付いてなかった。だからちょっと話の流れを変えようと思って、話題を変えた。
「そ、そういえば。2人とも太もも硬いよね、筋肉ついてていいなあ。ぼくなんかぷにぷにだよ! もっと筋肉「「つけなくていいから」」ふぇっ!? なんで? ぼくも2人みたいになりたいのに……」
「いいんだよ、ヒーローはずっとそのままで」
「そうそう、ヒーローは今のままでも十分かっこよくて可愛いよ」
そういいつつ、2人の視線はぼくのお尻から太腿に向かっていてちょっと怖かったのは秘密だ。
でも、かっこよくて可愛いと言う言葉は素直に嬉しかったから。2人にたくさんハグしておいた。ブラックにハグするたびにビターが、ビターにハグするたびにブラックがハグをねだってくるから、最後は前はブラック、後ろはビターのサンドイッチになって遊んでた。
そんなことをしていれば、あっという間に午後になりかけてて。ぼくはロッカーからバスケットを2つ持ってくると、恋人さんが座ってた元々のぼくの席に座った。
今日は手軽に食べられるようにと1つめの木のバスケットにサンドイッチとおにぎり、2つ目のバスケットにチョコレートや飴、グミやガムやラムネをキャンディー状にセロハンで包んだものを用意して、ブラックが自販機で買って来てくれた飲み物と一緒に手早く食べた。
ホワイトはお菓子を「非常食」と言ってポケットに何個か詰め込んでて、そしたらビターが「自分が非常食になるぞ」って言ってて締め上げられてた。ビターは可愛いなあと思った。
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