鬱雲(お題「夕立」10分)

きた、と思う。

低く唸る猛獣のような音、その瞳に睨まれたみたいに体がすくむ。

澄んで見える青空はいいおてんきだよと笑う、嘘つき、再び猛獣の咆哮。

海底のような湿度のなか、ぬるい風が髪の隙間をすり抜ける。

振り返れば鬱雲。

大粒の水滴は頬にあたって額にあたって、それから一丸となってコンクリートを叩くのだ。

明かりの消えた世界、地球の終わりはこんなでしょうか。

黒い空を見上げ、隣町にかかる虹を想う。


(お題「夕立」十分)


𓇼‥‥‥‥𓆟‥‥‥𓆞‥‥‥𓆝‥‥‥‥𓇼


 夕立と聞いたら、もう一生をかけたって超えることのできない好きな歌詞が思い浮かんでしまい、もう無理じゃん、と思いながら書き始めました。

「夕立はすぐ晴れて 忘れ傘 想いながら あくびするフリをして空を見た」(俺の赤い星 / スピッツ)

 夕立って心の状態に似てませんか。ばかみたいに晴れてたら急に大雨って、躁鬱状態みたい。そういう散文。


𓇼‥‥‥‥𓆝‥‥‥𓆞‥‥‥𓆟‥‥‥‥𓇼

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