第9話4月 20日 1−2


次のデートスポットはボーリング場だ。

騒ぐのが好きな美春のことだから、ここでなら思いっきり騒げるかな?と思ったのだが………。

 しかし、初っ端っから・・・。

 スー、ドガごん!

「よっしゃ!ストライク!」

 雷神がガッツポーズをしていた。しかし、すぐに鷺(さぎ)に変わる。


「ほほほ。ストライクが出ましたよ、一樹さん」

 僕は否定せずに話を合わせる。

「そうだね。でて、良かったね」

「えー、私、こういうところに不慣れなものですから、何をしたらいいのか分からなくて。また、皆さんに迷惑をかけたら、ごめんなさいね」


「いや、のびのびとやってくれたらいいから」

 そして、僕の番。僕はボールを持ってそして投げた。

 スー、がた。

 気配を感じ振り向くと。美春は何か言いたげそうな表情をしていた。

「どうしました?ボーリング界のレジェンド、美春姫?姫は10代の時からいくつもの世界タイトルを取ったんですよね?」

 それにサギは慌てたように頷いた。

「そう!この私寺島美春はボーリング界のレジェンドとして、周りからシンデレラガールと呼ばれていますわ。まあ、でもここだけの話、そう持ち上げられるのはちょっとプレッシャーを感じているんですけどね」

「で、そのレジェンドが僕の投げを見て何か言いたいことがあると」

「そうですわ!一樹さん、あなたちょっとこうすればうまくいきますわ。まず、投げのポーズからしましょうか」

「お願いします、姫」


 そして、僕はみはるからボーリングの投げ方を教わることとなった。

「まず、かずきさん。あなたの投げ方はちょっと体の方向がバラバラですわ。こうやって体を中心に維持していくような形で、こう投げる」

 そうして、美春が僕の体にくっつき体で教えてくる。

「こう。そして、こう。わかりましたか一樹さん?」

「はい。わかりました姫」

「では、投げてご覧なさい」

 そして、僕は実際に投げてみたところ中央より少しはずれだったが、実際にピンを倒せた。

「姫!やりました!」

「ええ、やりましたね!かずきさん。まだまだ足りないところがありますが、それは後々にしときましょう」

 そして、急に僕は笑い出し、美春も続けて笑った。




 ボーリング場から出た僕たちを迎えたのは真っ赤に燃える落日の夕陽だった。

「美春。ボーリング面白かった?」

 それに美春はタンポポの笑みで答えた。

「うん。面白かったよ」

「そうか」


 僕は時計を見る。もう4時半だ。ここで、僕は当初の予定を変えるかどうか試すことにした。

「美春。お腹空いてる?」

 それに美春は首を横に降った。

 ならば、当初の予定を変更せずに行こうか。

「じゃあ、次映画に行こう」

「あ」

 そうして僕は美春の手を握った。

 そして、美春は杏子になった。

「うん」

 



 当初の予定だと美春が好きそうなアクション映画を見る予定だったけど、今回は美春は乙女チックにしたいらしいので恋愛映画を見ることとなった。その結果………。

「ぉぉぉぉぉびえぇぇぇぇん!!!しずくちゃんカワイソスギーーーーーー!!!!!!」


 結局こうなった。

 僕らが見た恋愛映画は生徒と先生の恋愛映画だったが、なんとなくハッピーエンドで終わりそうなものを選んだのだが、結構中身はシリアスで、主人公の女子生徒が先生にかなわない恋をするという話なのだが、元が少女漫画だからファンタジーな構成だろうと思ったのが間違っていた。


 結構生徒と先生との間の恋愛、大人と子供の恋愛を取り上げていて、なかなか先生側が主人公のことを間に受け取ってもらえず、それで主人公が苦労するのだが、そこがシリアスで、美春が終始泣きっぱなしになっているのだ。

「おい、おい美春。あんまり大きな声出すなよ」

 それにこくりこくりうなずく美春だったが彼女の涙腺はとどまることを知らずに流れ続けていた。

 げ!ティッシュ切れた!どうすんだよ。まだ時間が半分あるのに………。




 結局映画は最後はハッピーエンドで終わり、しかしそれでも、いやだからか美春は泣き続けて、美春の席に大量のティッシュがあふれた。僕はそれを全てゴミ箱に捨て、このあとディナーをするつもりだったが、急遽コンビニに行ってティッシュを買い美春の涙を拭いてやった。

 で、イタリアンレストランでディナーを取ったが、映画の話ばかりされて内心辟易したのは美春には内緒だ。




 そのディナーの後。僕たちはレストランを出てごった煮賑わう繁華街の中に居た。

 もう空は真っ黒で人々が他の人に無関心にはしゃいでいる、その中で僕は美春に伝えなければならないことがあった。

 美春はまだ、ぐずぐずして居たが、僕は美春の手を握った。

「美春さ」

 美春は泥の表情から直ぐに桜に変わった。


「何?」

 僕は言いたいことを言おうとしたが、何か気恥ずかしくよそを向いた。しかし、期待を寄せる波がこちらに来ているのを確実に僕は感じ取れた。

「つ、次のデートにさ。美春のうちに泊まるお泊まりデートしてみよっか?」

「え?」

 美春の頬は椿になり、赤く俯いた。


「す、すぐじゃないよ!2週間後とか、美春もいろいろ準備があると思うからさ、そのー、僕も美春のうち興味あるから、いい、かな?」

 美春の表情はもうすでに寒椿(かんつばき)になっていた。

「う、うん!いいよ!私もちょっといろいろ準備があるから2週間後に来て」

 最初は声高く、最後の方になると尻すぼめの口調になった。

「なら」

 僕は美春の目を見る。

「約束な」

「うん、約束」

 僕たちはそのあやふやな約束を確かなものにするように握っていた手をブラブラ振った。



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