筆名
甲斐ミサキ
アイザック・ビッカースタフ
一九一四年より、これまで三十三万通余りの
いっけん白紙に思えるが塩化コバルト
ああ、ああ、野心家たる一時の情炎、ソニア・ハフト・デイヴィス。
かつての世、束の間の妻どの! またいつかの世でひょっこりと出会うこともあるだろうさ。
かつてエドワード・ソフトリィやローレンス・アップルトン、そしてパーシー・シンプルを名乗っていたときのような、恋愛詩を茶化すような風刺を書くこともロマンス小説を書くことも、おのが自身、恋愛について血道をあげることも今はないだろう。なにせ熱量の対象は
愛猫メネスの写真を同封したおり、
「恋愛小説家から怪奇文学作家へと転向しようと苦しんでいた猫っ毛
書簡はすぐに返ってき、そこには、
『恋する男。乙女の心を射止めんとす。己の相貌が
シオンは恋愛を怪奇で転調させるのが好みらしく、いかにも彼女らしい草案で、「これを滑稽かつグロテスクに、出来るならば美文体で仕上げるつもりです」と熱心に言葉を紡いでいる。彼女が改めて草稿を送ってくるや、ビッカースタフはこれを元に時間遡行と遺伝子に関するカニバリズムで恐怖を煽る水妖譚、四千百二十語のサイエンスフィクションホラー、『
「東洋の地理的風土や煩悶する怪物への変容に
忘れるわけがない。
僅かな報酬も三度にわたる催促の後のことになったからこそアメージング・ストーリーズには二度と送るものかと誓ったのだ。
ビッカースタフはロングとのやりとりを、いくぶん雄々しくなり溝鼠の肉片を噛みしだくメネスの姿を見物しに寄ったイロオジョンに伝えると、一九二四年初頭に執筆したおのがエッセイ『プロのインキュバス』を持ち出して、
「アマチュア作家たちは
つあは。
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