第14話 イケメンの説得力パネエ

発酵の精霊であるフェルムの力で父さんが生地を捏ねて、火の精霊ベイクの力で母さんが焼成する。焼きあがったパンは看板娘である風花が売る。


販売しているパンはバケット、カンパーニュ、茶色のライ麦パン、クロワッサンなど。

パンは毎日焼きたてを売り切って終わり。

パンの他にパウンドケーキやクッキーなど日持ちのする焼き菓子も扱っている。

フェルムの加護で発酵させたヨーグルトとチーズは量り売りだ。


それほど種類もないし、お客さんは常連でいつも同じ組み合わせ、同じ量を買っていくので、料金やお釣りの計算を間違えることはない。



「レジ、喜んでもらえると思ったんだけど…」

カデンちゃんとバルさんがしょんぼりと項垂れている。


レジというカデンセイヒンは商品の合計金額・お預かり金額・お釣りの計算、軽減税率の計算に便利だそうですが、うちのパン屋には必要ないかな。かなり場所を取るし。

あと軽減税率ってなに?


「今日のようなすれ違いを繰り返さないために一緒に過ごす時間を作らないか? 阿修羅とも、是非話がしたいと思っている」


プイっと、つれない素振りの阿修羅。


「戦神に戻るため、精霊として徳を積む必要があるのだろう? 俺は軍人として国家に所属しているが、平和な時代が続いているので理不尽な暴力をふるうことはない」


阿修羅の耳がピクリと反応した。


「平和維持のために力をかしてもらえないだろうか。俺に加護を与えて平和維持に協力し、神に戻ればいい」


阿修羅の尻尾がソワソワしてる。イケメンの説得力パネエ。



とりあえず四人で散歩にでた。

阿修羅に散歩させないといけないしね!


「風花、今日は港の方へ行ってみないか?」

「そだねー、行ってみようか」

尻尾をぶん回しながら私を見上げる阿修羅が超かわいいので言いなりです。


「ふうか~! 海、気持ちいいぞ、風花もチャプチャプしようぜ!」

しようぜ!と、はしゃぐ阿修羅。尻尾ぐるぐるでかわいいな。


「海辺デートもいいな!」


デートじゃないし! 二人きりでもないし! 阿修羅は人ですらないし!

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