第7話 カデンを召喚?何それ

翌日の午後、風花は阿修羅を伴って再び神殿を訪れていた。


候補が現れるまで当分待つことになるだろうという話だったので、加護の交換ではなく阿修羅のことで呼び出されたのだろうと予想した。


強力な力を持つ戦いの神など物騒で仕方ない。阿修羅も何かを予感しているのかフンス! フンス! と鼻息で周囲を警戒している。


「風花さん、お呼び出ししてしまい大変申し訳ございません。加護の交換について第一の候補の方と会っていただきます」


「もう候補が現れたのですか!?」

「はい。例え候補といえど下手な方を選ぶ訳にはいきませんが、ぴったりの方がいらっしゃいまして」


「とはいえ交換を強制はいたしません、風花さんが交換を心から望むことが交換の条件ですのでご安心ください。

候補の方は身分、社会的地位の高い方ですが風花さんの後見は神殿ですので引け目を感じることはありませんからね」


風花に言い聞かせるというより、背後にいる候補に釘を刺すような口ぶりだ。


「ご紹介いたしますね、ハンニバルさんと精霊のカデンさんです。こちらは風花さんと精霊の阿修羅さんです。阿修羅さんの加護についてハンニバルさんに説明が済んでいます。ハンニバルさんとカデンさんからカデンさんの加護について風花さんにご説明をお願いいたします」


「よ、よかった! 普通に可愛い女の子だわ!私の加護を存分に使ってくれそう…ううっ、このイケメン細マッチョが無口なばかりに6年も無駄にしてしまったわ…うええええええええん」

幼女な見た目の人型精霊ひとがたせいれいが泣き出した。


人型の精霊は肩に乗れる手のひらサイズが一般的だがカデンの見た目は人間サイズの幼女だ。ボリューミーな髪をポニーテールでまとめている。

フェルムとベイクが興味津々な様子でカデンの周りで羽ばたいている。


カデンさんじゃなくて、カデンちゃんだな。


「カデンさん、落ち着いてください。まずはカデンさんの加護について風花さんにご説明をお願いします。それに何度もお話ししましたが加護の内容によっては風花さんがお断りされる場合もございますからね」


「ひっく、お断りはいやあぁぁぁ。ぐすっ」

カデンちゃんが泣き出したが、ハンニバルさんは無言だ。もしかしてハンニバルさんはご縁の結び直しを望んでいないのかも。カデンちゃん、可愛いもんね。


「ハンニバルさんの代わりに説明させていただきますね。

ハンニバルさんは軍人で、ハミルカル・バルカ将軍の三男でいらっしゃいます。つまり貴族です。バルカ家の皆さん、例外なくなんですが、ハンニバルさんも超堅物で真面目な方です。


国家に忠実で職務に忠実で、言い換えれば融通が利かないくそ真面目タイプです。阿修羅さんの強力な加護を悪用する可能性はゼロと言い切って良いでしょう。」


神官の横で精霊のカデンちゃんがうんうんと頷いている。


「ハンニバルさんの無口が原因で誤解が生じ、カデンさんとの間で不幸にもご縁が結ばれてしまいました」


ポロポロと涙をこぼすカデンちゃん。可愛いなあ。ハンニバルさんは無言、表情も乏しいな。


「ハンニバルさんはカデンさんの加護を一度も利用したことがありません、今後もカデンさんの加護に頼ることはないでしょう」


「聞いて! 風花ちゃん。バルは私の加護の使い方が分からないというの、とっても便利なのに! 私たち二人とも加護の交換を希望しているの。申請してからもう六年よ。お願い、風花ちゃん、私の加護をバンバン使ってちょうだい!!」


「ぐるるるるるる」

風花に迫るカデンを阿修羅が威嚇する。


「なによ! 押しつけ加護なんて最低!風花ちゃんに相応しいのは私よ!」

「ううううううううう」


カデンちゃんに攻撃しないよう、うなる阿修羅をぎゅっと抱きしめる。

「カデンちゃんの加護について教えていただけませんか?」


「ふふん! 私の加護は家電製品の召喚よ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る