第5話 しょんぼりぃーぬ
「そうですか、契約者に断りなく精霊が一方的に契約を…」
なんということだと頭を抱える神官たち。
気まずそうにソワソワと落ち着きのない阿修羅を逃がさないよう抱っこする風花。
「本人も戦いの加護を望んでおりませんし、なんとかご縁の結び直しをお願いします」
「お願いします!!」
冷静に事実と希望を伝える両親の隣で時々涙ぐみながら話を聞いていた風花が必死な様子で頭を下げた。
阿修羅の耳がペタンと倒れた。
尻尾も下向きだ。
「確かに希望と合わない精霊とご縁が結ばれてしまった場合、別な精霊とご縁を結び直すことがあります」
風花の表情に希望が浮かぶ。
「ですが、ぴったりと希望が叶う確率はあまり高くありません。妥協が必要になると思ってください」
風花が項垂れた。
「通常は精霊と人とコミュニケーションし、合意の上でご縁が結ばれますが、誤解からご縁が結ばれてしまうことが稀にあります」
「合意なくご縁が結ばれる事例は聞いたことがありませんが、それについては後ほど話しましょう」
「誤解からご縁が結ばれてしまった場合というのは、精霊にとっても人にとっても望ましい状況ではありません。
ですから、そのような届け出があった場合、ご縁の結び直しを希望する精霊の加護について神殿で聞き取りをいたします」
「その情報をご縁の結び直しを希望される皆様の間で共有していただき、加護を交換したいというご希望がマッチングした場合、2組の間で加護の交換が行われます」
「希望される加護が常にあるとも限りません。何年も待つことになるかも知れません。それでもご縁の結び直しに登録を希望されますか?」
「はい! お願いします!!」
阿修羅との縁を放棄して新たな縁を求めようと超前向きな風花を見て阿修羅が項垂れた。
耳も尻尾もぺったんこだ。
「誤解からご縁が結ばれてしまった場合というのは、精霊にとっても人にとっても望ましい状況ではないとお話しいたしましたね?」
「ですからご縁の結び直しは精霊にとっても望ましいことなのですよ。阿修羅さんのようにがっかりされるケースは前例がありません」
風花の腕の中で阿修羅の身体がビクンと跳ねた。
「阿修羅?」
風花の呼びかけにも答えずソワソワと落ち着きがない。
神官が阿修羅を見据える。
「阿修羅さん、あなたは何者ですか?」
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