第4話 父、子犬を脅す

とにかく食事にしようと両親と精霊たちと食卓についた。

フェルムとベイクは両親に寄り添いながら阿修羅の様子をうかがっている。


「阿修羅ちゃんにも食べられるものを用意するから少し待ってね」

「僕が用意するよ。君は飲み物を頼む、阿修羅君には鳥肉を茹でてあげよう」


「俺も同じメニューでいいぜ」

ピコピコと尻尾を振りながら生意気なことを言う。


「ダメよ阿修羅ちゃん! シチューにはネギが入っているんだから」

「人間の食事は塩分も多いからな!」


「俺、犬じゃねーし! この姿はただの趣味だし! 同じもの食わせて!!」


ぷっ。

思わず吹き出した風花の横に座る豆柴がジト目で風花を見る。


プイッ。

可愛らしいが勝手に縁を結んだことは許せない。


豆柴の耳と尻尾が垂れた。背後にショボーンというロゴを背負っているようだ。


「風花、風花が憤る気持ちもわかるが怒っても仕方ない。風花の希望と折り合いがつくよう今後のことを話し合おう」

「話し合うって何を? 精霊と縁を結ぶ機会は一生に一度しかにゃいにょに……」


涙でちゃんと喋れない。

あまりのことに心が追い付いていなかったが、いったん泣き出したら止まらない。

ポロポロと涙を流す風花の横で阿修羅がオロオロとしているけど知らない! 阿修羅が悪いんだから!!


「風花も知っているだろう?適正に合わない精霊とは縁の結び直しができるって。明日にでも神殿に届け出よう。早い方がいいからな」

「そうね、早い方がいいわね。稀にあると聞いたことはあるけど、縁を結び直した人の話は聞いたことがないし本当にできるのか…、まずはそこを確かめましょう」


「ちょ! 待てよ! 風花! 俺を捨てないで! 一流の軍人にしてやるから!!」


慌てた様子の阿修羅が風花にしがみ付こうとして父に両手でガシッと胴体をつかまれた。


「うん、ワンちゃん? 風花はね軍人にはなりたくないんだよ。もちろん父さんも風花を軍人にしたくない、わかるかい?」


父が両手に力を込める。

「ぐえええ、中身が出る! 出ちゃうから!離してえええぇぇぇぇぇぇ!」

「風花が希望の仕事に着けるよう協力するかい?」

「・・・・・・(それはヤダ)」


ギギギギギギ。

父が両手に力を込める。

「ぐええええ」


「風花が希望の仕事に着けるよう協力するかい?」

「ふ、ふうかと一緒にいられるなら、きょうりょくしてぼいいぃぃぃぃ・・・・・」


「貴様次第だな」

ギギギギギギギギ。

さらに力を込める。

「がまんするうううぅぅぅぅぅぅ・・・・」


阿修羅の身体が光を放つ。

精霊の誓いが成立した証拠だ。




ただいま阿修羅が所有するポイントは−150,000ポイント


・同意を得ずに契約 … ー100,000ポイント

・契約者を絶望させ、泣かせた …−50,000ポイント


神に戻るためのポイントを貯めるどころかマイナスのスタートであった……。

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