第4話「初オーダー」

「あ、あの……大丈夫?……」

未だに鼻血を出し続ける知り合いをどうしていいか分からない。と、ここで広永さんがお客様に駆け寄る。そうだ、こういう時はどうしていいのかしっかり勉強させてもらおう。

「お客様……」

「店員さん……」

「店内でお召し上がりでしょうか? それともお持ち帰りでしょうか」

 いやいや、この人は何をしているの。何を聞いているの。

「お、お持ち帰りで……(ダバダバダバダバ)」

 そして僕の知り合いは、何を真面目に答えているんだ。

「かしこまりました。商品はどれになさいますか?」

 ものすごい笑顔で聞いていても、その鼻血は止まっていないですよ。

 でも、知り合いは僕を指さして、こんな事を言っている。

「あ、あの新人の子をお持ち帰りで…」

「かしこまりました」

「かしこまるな!」

 アルバイトの人間を売るな!

 知り合いの傍らにしゃがみ込み、平常心を装って話す。

「お客様。私はお持ち帰りできませんよ」

 えー、なんでそんな残念そうな顔をする?

「じゃあ、あなたをイートインで」

「ぶっ殺すぞこの野郎」

 広永さんが僕を羽交い絞めにする。ちっ。

「ぜひ!(はぁはぁはぁ)」

「お客様、こちらの商品のテイクアウトでよろしいでしょうか。かしこまりました」

 よし、この変態様にはお帰りになってもらおう。メニューを適当に選んでいく。

「こら。何をしているの」

 うぅ、広永さんがすごい目で見てくる。……ううん。素直に反省する。

「飲み物はLサイズ、バーガーはダブルバーガーに変更しなさい!」

「了解です!」

 

「「ありがとうございましたー」」

 揃って挨拶。時間が経つと、かなり失礼な態度だったと思ったけど、あのお客様はなぜか「おお、ドSな態度も……(はぁはぁはぁ)」と嬉しそうに出て行ったのでまぁよかった。

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