Last phase-9
「……はい、到着~!☆」
「……うぅ、気持ち悪い」
防衛省の入り口にバイクで突撃したちひろ達は、少女は意気揚々と、少年はいまだ目を回している頭を押さえながら搭乗機を下りる。
リノリウムの床は自動ドアをぶち破った衝撃でガラスが散乱し、非情に歩きにくい。
そんな中をちひろは堂々と闊歩し、嘉村は足元に注意しながら進む。
「あ、ヘルメット取らないでね。顔バレしちゃうから☆」
「……! あ、ああ。そうだよね」
そこまで頭が戻ってなかった嘉村は、ヘルメットに手を伸ばしていた手を、慌てて戻す。
ようやく散らばったガラスがなくなった廊下を、二人は警戒しながら進んでいく。
「……ねえ、上条さん? これ、どこに向かってるの?」
「うん? わかんない☆」
「……え?」
「だから、わからないって! あたし、鬼道さんじゃないんだもん☆ わかるわけないじゃん☆」
「……」
つまり、今二人は佐久弥を発見するために、しらみつぶしに見知らぬ建物内をさまようことになるのだ。
高低差を含めた広い建物内を、侵入者を阻む警備を退けながら探すのは、流石に困難だ。
「……えっと、本当に何の当てもないの?」
「ないよ☆ まあでも、とりあえず行くところは決まってるつもり」
「あ、一応はあるんだ」
「そっ!☆」
肯定したちひろは、偶然見つけた案内板を指差した。
「行くのはここ! 長官執務室!☆」
「……聞きたいんだけど、何でそこなの?」
「偉い人なら、何か知ってるかもしれないから☆」
「……」
彼女の安直な理由に呆れながらも、行く当てもないので大人しくついていく嘉村。
階段を上り、上階をゆっくりと警戒しながら上がっていく。
その時、
「……!」
ちひろがベレッタを構え、一際大きな警戒色を示す。
「……ごめん、ここからは一人で行ける?」
「え?」
「……待ち伏せされてる。時間稼ぐから、先に行って」
言うが早いか、いきなりベレッタを放つちひろ。
ただの目暗撃ちだが、不意打ちしようと待ち構えていた集団は反撃ができないでいた。
「走って!」
「……!」
ちひろの合図で、少年は駆け出した。
銃声に怯えながらも、目的の場所に向けてひた走る。
「……よし!☆」
嘉村が行ったことに満足したちひろは、改めて敵を見据える。
胸に大きく『SAT』と書かれた黒い防弾ジャケットに、手にした自動小銃MP-5。
日本警察の特殊強襲部隊の集団が、彼女の眼前で待ち構えていたのだ。
「……これは、楽しめるかも☆」
獲物を見つけて舌なめずりをした少女は、弾丸をリロードすると、愛用の長ドスも抜き放って突撃していった。
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