Last phase-7

 トラックが、サイコロを開くように展開され、その内部が明らかになる。

 3台のトラックのうち、外側2台のトラックからは黒服を来た男達の姿が映る。

 そして、真ん中のトラックから出現したのは、1台のバイク。

 ヤマハのドラッグスター400という大型バイクに跨った、2人の人間がうかがえる。

 そして、トラックの車体から伸びる、鉄の滑走路。

 もはや発射台にさえ見えるこの存在は、他の人間が霞むほどの異彩を放っている。

「いい? しっかり捕まっててね☆」

 バイクのハンドルを握るドライバー、上条ちひろ。

「う、うん。でも、上条さん、免許持ってるの?」

 不安そうな声を上げるのは、嘉村真一。

 二人ともフルフェイスのヘルメットで顔を隠し、バイクのエンジンを吹かしている。

「ううん、ないよ!☆ わかるのはアクセルとブレーキだけ!☆」

 笑ってアクセルを全開で吹かせると、彼女のバイクは鉄の道を滑走する。

 そして、跳んだ。

 ちひろの走らせたバイクは発射台のごとく滑走路を疾駆し、先が途切れてからも走り続けているかのように空中を駆ける。

 その羽馬ライダーは機動隊の横陣を飛び越え、そのまま防衛省の入り口付近に着地する。

「……!? しまった! 突破されたぞ!」

 隊員達は自分達を飛び越えた者達へ踵を返す。

 その時、

「今だ! やっちまえ、てめえら!」

 仁助の怒号とともに、黒服達が銃弾を放つ。

 AK-47から放たれる7.62 mmのライフル弾と轟く轟音の不意打ちに、機動隊員達の陣形は一瞬で瓦解した。

 だが、それでも被弾した人間は、一人もいない。

 これは、仁助の計画通りである。

 ここは屋内ではなく、大通りのど真ん中。

 そんな誰が見ているどころか、監視カメラやテレビ局のヘリに顔が映ってもおかしくない。

 その状況で銃撃による負傷者など出せば、確実にヤクザ者の『八条会』は取り潰しをくらい、親組織の『一条組』にまで火の粉が飛ぶ。

 これは自分達が勝手に始めた闘争なのだから、この落とし前は自分達だけでつける。

 これが、親分である『一条組』への、仁助なりの仁義だった。

「……おし、撃ち方やめ! 切り込むぞ、てめえら!」

 仁助の咆哮にも似た号令に、ドスを持った男達が機動隊に突撃する。

「! 突っ込んできたぞ! 応戦しろ!」

 機動隊の隊長からも命令が飛び、隊員達がシールドを再度構えて突撃をかける。

「……」

 仁助は一つ、深呼吸をする。

 少しでも、時間を稼ぐ。

 自分の妹達が事を成すまで、全力を出す。

 こんな所で、倒れるものか。

 そんな覚悟を胸に、仁助は自身の腰に携えた長ドスを、鞘から抜き放った。

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