6th phase-3

 最初の目的地は、金閣寺だ。

 観光バスが駐車場について、私達は京都の地に降り立った。

 私達以外にも観光客が多く、見ているだけで辟易する。

「……」

 あたりを見てみる。

 周囲は竹林に囲まれ、まだ見えていないが、順路を進んでいくと金閣寺が見えてくるらしい。

 あえて舗装していない砂利道も、その奥の仏閣があることを考えると、趣も感じる人もいるのだろうか。

 まあ、私にとっては少し歩きにくいから何とかしてほしいのだが。

 そんなことを考えていたところ、気が付いたらクラスの集団が仏閣へ移動を始めた。

 今日はどうにも考え事が多い。油断しすぎだな。

 少し反省して、集団の後を追う。

 その時、

「あ、すみません」

 不意に背後から声をかけられる。

「あの、これ、落としましたよ?」

 そう言って、声をかけてきた男は、手にしたスマホを差し出してくる。

 どうやら落としてしまっていたようだ。気が抜けすぎだろう。

「あ、ありがとうございます」

 軽く会釈をして、スマホを受け取る。

 足早に男は去っていったので、もしかしたら用事があったのかもしれないな。

 何だか、悪いことをした。

「おーい、鬼道! 早くしないと置いてくぞ!」

 先生から声がかかり、慌てて集団の後を追う。

 急いで追いつくと、目の前に見えたのは、金だった。

 池を挟んで奥に聳え立つ建築物は、その周囲と比べても何よりも異彩を放っていた。

 学校を出発してから時間が経って、すでに日暮れになりつつある。

 それもあってか、よりその黄金が光輝いて見える。

 まあ、単なる成金趣味っぽいと言ってしまっては、それまでかもしれないが。

「……」

 ふと、ポケットに入れたスマホが震える。

 何事かと思って、画面を見る。

 それは、メールの着信を知らせる振動だった。

 見知らぬアドレスだったから、ただのいたずらだろうか。

 そう思いつつメールを開くと、それにはこう書かれていた。

『本日0時、伏見の竹林に来られたし。

 積年の恨み、ここで晴らさむ       

 我は、『闇』の亡霊』

 古風に書かれたメールに、思わず眉が狭まる。

 正直、私達のやって来たことを考えれば、恨まれても仕方ないと思っている。

 依頼とはいえ、人を殺してきたのだから恨まれても文句を言えない。

 だが、今回は話が別だ。

 こうして個人のメールにまで連絡が来た、ということはそこまで特定してくる程、恨んでいるということだ。

 この手の奴は厄介だ。

 下手に虫でもしたら、不意を撃たれたり無関係な人間を巻き込んだりするかもしれない。

 もう、あいつを巻き込みたくない。

「……」

 ひとまず、SNSで所長に連絡を入れる。

 そして、夜になったら動くことにしよう。

 武器はなくて心許ないが、これも仕方ない、か。

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