6th phase-2

 京都駅前で降りて、そこから観光バスへ乗り換える。

 窓から見える景色は、ある意味異様だ。

 昔の趣を残した橋や道の脇に、近代的なビルや商店が立ち並んでいる。

 逆に、普通の住宅街の中に突然、神社仏閣が並んでいる光景は、なかなか見られるものではない。

 実は内心、私は楽しみにしていたりもした。

 何だか、最近は会っていない師匠を思い出す。

 あんな巫女っぽい出で立ちをしていて、京言葉。

 一見すると美人だが、合氣道や剣術は天下一品。

 そんなあの人を思い出すが、今はどこでどうしてるやら。

「……どうしたの、鬼道さん?」

 また外をぼうっと見ていたことが気になったのか、あいつが声をかけてきた。

「……いや、何でもない」

「? そう?」

「ヤッホー!☆ 嘉村君! 暇だからトランプしよう!☆」

 突然、背後から座席から身を乗り出して、上条ちひろが大声をかけてきた。

 嗚呼、今日の静かで居心地のいい時間は、これで終わりらしい。

「……あ、鬼道さん、いたの?☆」

「……」

 なんだ、この女。

 最近、この上条ちひろという女は気軽に喧嘩を売ってくるようになった。

 というより、あろうことか私と嘉村の話してる間にわざとらしく割り込んだり、私とこいつを離すようにしたりと、何かにつけてウザいことをしてくるようになった。

 おかげで、貴重な癒しの時間が台無しだ。

「……いたよ。なんだ、目でも悪くなったのか、おまえ?」

「ごめんね、悪気はないんだよ?☆ ただ、目の悪さで言うなら、鬼道さんも片目だと大変だよね?☆ 早くその眼帯取ったら?」

「……あ?」

 なんだ、こいつ?

 いつも以上に、喧嘩売ってくれるな。

「「……」」

 笑顔を張り付ける上条さんに、それを下から睨みつける私。

 異様な空気が、次第に漂い始める。

「おい! そろそろ目的地に着くから、そろそろ席に座れ!」

 引率の先生から声をかけられ、上条さんは渋々といった風に席に座る。

「……まったく」

「あはは、まあ、仲良くしてね」

 気まずそうに頬をかく嘉村。

「……」

 こいつは、本当に不思議だ。

 何でこんなに、こいつと話していると落ち着くんだろうか。

 未だに答えは出ない、が。

 最近は、心地よさと、どうしてだろうか、ノイズが混じる。

 こいつの声を聴いていると、とても落ち着くはずなのに。

 同時に、あの約束が脳裏をかすめる。

『もう、あんな危ないことはしないで。誰かを傷つけるようなことはしないで』

 この言葉が、頭の中でリピートされる。

 嗚呼、これが、そうなのか。

 これが、罪悪感、というやつなのだろうか。

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