Other phase 2-8
場所を変えて話す必要がありそうな相手からの電話だけに、誰も来なさそうな場所に移動する。
「……もしもし」
『やあ、お疲れ様。この時間はまだ学校かな? 今日は収録とか撮影もないはずだしね』
電話に出ると、テンションの高そうな鈴音が出てきた。
こうなっているときの彼女は面倒くさいというのは過去に経験済みなだけに、声を聴くだけで辟易してしまう。
「……ストーカーで訴えますよ、鈴音さん?」
『それは困るな。私はこれでも君のファンなんだ。許してほしい。実は、今日は君にお礼を言いたくてね』
「? お礼?」
全く身に覚えがなかった。
少なくとも、電話越しに話す女に対して嫌悪の感情はあっても感謝されるいわれはない。
『ああ、そうさ。君の昨夜の行動のおかげで、『八条』を焚きつけることができた』
「……!?」
瞬間、ちひろの目が見開かれる。
昨夜に行動とは、おそらくちひろと佐久弥の戦闘のことだろうか。
確かに、あの時は『二条会』の構成員に目撃されたが、それが彼女の感謝の理由になる意味が分からなかった。
『まあ、答えはすぐにわかるよ。それじゃ、チャオ』
そして、一方的に電話が切られた。
「……」
切られた電話を、無意識的に見つめるちひろ。
何だか、胸騒ぎがする。
絵も知れぬ不安に駆られる。
マイナスの感情が渦巻く。
だが、
「……アホらしい」
ちひろは、そう一蹴した。
確かに、状況は胡散臭くきな臭い。
だが、ちひろにとってはそれは『日常』だ。
芸能界だろうが極道社会だろうが、それは変わらない。
つまり、いちいちそんなこと気にしていても仕方ないのだ。
火の粉が降りかかってきたら、その時に払えばいい。
それが彼女、上条ちひろだった。
「う~ん、とはいえ、ちょっと心配かも☆」
そう思い、彼女は仁助に連絡を入れる。
だが、
「……出ない」
いつまでコールしても、彼が電話には出なかった。
忙しいんだろうか。
「まあ、行ってみればわかるか!☆」
わからないなら、実際に行って確認すればいい。
そう思い、彼女は『八条会』の事務所へ歩を進めた。
そして、教室に戻った彼女は嘉村が先に帰ったことを知り、僅かにがっかりしたのだった。
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