rest phase 2-final
だいぶ時間も過ぎ、日が陰り出した頃、そろそろ帰ることになった。
「よ~し、みんな荷物持った?」
瀬見さんが全員に尋ねる。
「お~!☆」
上条さんが乗りよく返事を返す姿は、今日だけで随分見慣れた。
というより、今日だけでかなり仲良くなった二人組だ。もともとの性格が似ているからだろうか。
「……」
無言の風間さんは相変わらずだった。
この人が無言でビニールボールで遊んでいたのは、何だかシュールだった。
「お、おー」
何だか気後れしたように声を出したのは、嘉村だった。
気が弱いんだか強いんだか、よくわからないやつだ。
「……サクちゃんは?」
瀬見さんが尋ねる。
「……お、おー……?」
わからないので、とりあえず返す。
「うんうん、まあ及第点っしょ! んじゃ、帰りますか!」
そう言って運転席に乗り込もうとする瀬見さん。
「あ、瀬見さん、ちょっと」
「ん? どったのサクちゃん?」
「あの、今日は所長来なかったんですね」
気になっていたことを尋ねる。
こういったイベントごとなら、率先して来るような気がしていたからだ。
事実、あの男が後見人として初めて授業参観に来たときは、はっきり言って嫌になったものだった。
まさか警備員に連行されるとは思わなかったのだ。
「ん~、今日は重要な会議だったっぽいよ。かなりがっかりしてた」
少し考えて答える瀬見さん。
まあ、曲がりなりにも『JSA』の所長なのだから、いろいろとやることがあるのだろう。
「……そうですか」
「でも、なんで急に? まさか……!」
そう言うと、私の両肩をガっと掴む。
「いい、サクちゃん? サクちゃんの趣味嗜好はとやかく言わないけどさ、あの所長だけはやめときな!」
「いったい何を言ってるんです!?」
凄まじい勘違いをされてしまった。
「……」
ふと、風間さんの方に視線を移すと、あいつの方に近づく。
「―――――。」
「……え?」
あいつに口元を寄せて言うと、さっさと助手席に座って、いつもの読書を始めてしまった。
「……珍しい」
思わずつぶやく。
私を含め、『JSA』の面子でさえ風間さんが話しているところはめったにない。
私は興味本位で、あいつに尋ねる。
「……風間さん、何て?」
「……あ、えっと……」
何か言いにくそうに言いよどむ嘉村。
「……秘密、じゃ、ダメ?」
「……?」
疑問符が浮かぶが、無理に聞き出すようなことでもない。
大したことではないのかもしれない。
「お~い、早く行くよ~☆」
上条さんの声で、私達は車に乗り込んだ。
こうして、私のとある夏の一日が終わったのだった。
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