　ぐるぐると体を回転させてみたり、その辺りをぶらぶらとふらついて星を探すための立ち位置を何回か変えたりもした。……星。星はどこにある？　僕だけの星はどこにある？

　そうやって随分と時間が経ったときだった。

　一陣の柔らかい春の風が大地の上を駆け抜けた。……その風に、木の葉の髪と、木の葉の両手の中にある小さな鉢植えの中の小さな芽が、かすかに揺れた。その瞬間、木の葉は夜空を見上げることをやめて（少しの間、目を閉じたあとで）、その視線を小さな鉢植えの中の小さな芽に落としていた。そして、その風が止み、木の葉は再び空を見上げた。……すると、遠くの空にひときわ大きな輝きを持つ、……不思議な、不思議な『光を放つ奇妙な星』を、木の葉の目が確かに捉えた。それは今まで何度も何度も見た夜空だった。だけど木の葉はその不思議な光を放つ奇妙な星を今まで見つけることができなかった。……でも、今は見つけた。あの星は確かに特別だった。……明らかに他の星とは違って見えた。

　その星を見つけて、木の葉は今までに一度も経験したことのないようなとても強い高揚感を感じた。そして今までの人生の中で一番の輝きを放つ笑顔を、その顔の上に作り出した。その輝きは夜空に輝く幾億、数十億の星の光にも決して負けてはいなかった。

　遠くの空に輝く、小さな星。

　不思議な光を放つ奇妙でへんてこな星。

　あれが僕の探していた、僕だけの特別な星だ。

　……木の葉は、そう確信した。

　そして、木の葉はその星が光る方向に向かって、ゆっくりと歩き始めた。