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 木の葉たちは三人組の大人たちから逃げるために後ろを振り返って小走りで移動し始めた。そしてすぐに木の葉たちは大きな木と白いベンチがある場所まで戻ってきた。木の葉と女の子が最初に出会った場所。その白いベンチの上には、『一匹の黒い猫』がいた。突然、雨が降り始めたので、雨宿りをするために、その場に移動したのだろう。黒猫は雨の当たらない、白いベンチの上にある半分だけの木陰の中でじっとしたまま、雨の降る青い空をそこからずっと見つめていた。

「猫ちゃん!」と女の子が叫んだ。

 瞬間、黒猫がこちらを向いて、そして、ずっと繋がれていた木の葉と女の子の手が、……とても簡単に切り離された。……それは、間違いなく女の子の意思だった。女の子はそれを証明するかのように黒猫に向かって一直線で駆け出していく。握る手を失った、木の葉の空っぽになった右手が女の子の小さな左手を求めて一瞬、空中をさまよった。……木の葉の胸がずきっと痛んで、それから少し遅れて木の葉は自分があの女の子が探している黒猫に嫉妬しているということに気がついた。

 それにそれだけではなくて、なんだかあの黒猫が女の子に捕まって自由を失うことが、……嫌だな、と実際にいなくなった猫の姿を見たときに木の葉は強く思った。猫はきっと自由を求めて、女の子の元を逃げ出したのだと、このとき初めて木の葉は思ったのだ。

 木の葉は心の中で、逃げろ! と叫んだ。

 もう一度、女の子の元から逃げ出してしまえ! と木の葉は叫んだ。

 しかし黒猫は逃げなかった。それは今、この緑色の世界の上に雨が降っていたからかもしれないし、もともと、いなくなったり、じっとしていたりを繰り返す、そういう落ち着きのない気質の猫だったからなのかもしれない。『猫ではない木の葉』には理由はわからないけど、とにかく黒猫は逃げなかった。木の葉の思いとは違い、逃げずに白いベンチの上でじっとしていて、やがて黒猫は女の子に捕まった。

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