「先生たちはね、あの道の上以外の場所を走れないんだよ」と女の子が言った。「どうして？」と木の葉は言った。「『そういう決まりごと』になっているから」と女の子は笑いながら木の葉に言った。木の葉は女の子の言っている言葉の意味がよくわからずに首を傾げた。でも、三人組の大人たちの行動を見ると、それはどうやら本当のことであるらしかった。世の中にはなんとも奇妙なルールがあるものだ。

　でも考えてみると木の葉自身、芝生の上に足をつける際に、少し抵抗を感じたことは事実だった。もし女の子が手を引いてくれなかったら、あるいはこの場にいるのが木の葉一人だけだったら、木の葉は芝生の上を走って逃げることを考えついたり、また考えついたとしても実際にそう行動したりすることはなかったかもしれないと思った。

　小振りだった雨はだんだんと強くなってきた。

　太陽の光とそれを反射する虹色の雨の輝きが、遠くに小さな二重の虹を作り出しているのが見えた。木の葉はその不思議な珍しい虹を見つめながら、芝生の上を女の子に手を引かれながら走って、ついさっきまで木の葉たちが歩いていた少し低いところにある橙色の煉瓦造りの道まで戻ってきた。すぐ近くに大きな木と白いベンチが見えたので、木の葉たちはすごろくで言ったら、ほとんど振り出しに戻ってしまったような感じになってしまった。遠くには走っている三人組の大人たちの姿が見えた。木の葉たちとの距離は随分と空いている。女の子の作戦は大成功したようだ。

「これなら、なんとかなりそうだね」と木の葉は言った。

「うん」と女の子は満足そうな顔で言った。