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……黒い猫、黒い猫。木の葉は公園の高い場所から一生懸命に周囲を見渡して猫を探した。きっとどこかにいる。木の葉はそう信じて猫を探した。しかしそんな木の葉の思いとは裏腹に、黒い猫は一向に見つからなかった。
「……猫ちゃん。私のこと嫌いになっちゃったのかな?」と女の子は言った。
「そんなことないさ」と木の葉は言った。
「でも、猫ちゃん。急に私の元からいなくなっちゃったの。だからきっと、猫ちゃんは私のことが嫌いになっちゃったから、私の元からいなくなってしまったんだと思うの」と伏し目がちになりながら女の子は言った。
「どうして君はそう思うの? なにか猫に嫌われるような、そんな原因になるようなことに思い当たる出来事でもあるの?」と木の葉は言った。しかし女の子は木の葉の質問に小さな声で「わからない」と答えただけだった。
木の葉はそんな女の子をちらっとだけ確認したあとで、再び猫探しに没頭した。周囲の風景を見渡せる見晴らしのいい丘の上からも、猫の姿は見つからない。もうこの辺りには猫はいないのかもしれない。猫は確かにこの女の子の元を去ってしまったのかもしれない。いなくなった猫を探しながらそんなことを木の葉はふと思った。
そうして猫を探していると、木の葉たちの歩いてきた橙色の煉瓦造りの道の上、白いベンチと大きな木のある、そのもっと先の道の上に木の葉は小さな三つの人影を見つけた。木の葉は初めて自分たち以外の人の姿を確認して、少しだけほっとした。木の葉は目は良いほうなので、遠目でもそれが男性一人、女性二人の三人組の集団だと特定することができた。男性は太っていて、頭の毛は真っ白で高齢に見える。女性は二人とも若くて、小走りで移動する男性の少し後ろを二人並んで移動していた。三人は木の葉たちと同じようになにかを探しているようで、きょろきょろと周囲を見渡しながら橙色の煉瓦造りの道の上をこちらに向かって移動していた。
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