父母神死

しかし『天照貴岐神あまてりのむちぎのかみ』はこれに対して「全てを照らし見定める者である自分が大地より遠く離れた位へ座さねばならぬというのは理解し難い」と不服を申し立てた。

この兄神の物言いに対し『淡照貴美神あわてりのむちみのかみ』は「貴方が大地に近ければ私の冷たさは払われ、「命」は全て焼け焦げてしまうことは既に証明されたこと、故に「命」が育まれるに最も良い位はここであると父母の定められたことに異を唱えるのは「命」の育むという行いを阻むことと同義であり、父母は愚か者であるという戯言を語っているに等しい」と諌めた。

これに腹を立てた兄神は妹神を貶めるような物言いをし、それに妹神が怒って果ては互いに武器を持ち出すほどの喧嘩を始めてしまった。

これにより大地は荒れ果て、一度根付いた「命」が途絶えかけてしまうほどになった。

この事態を治めようと父なる男神と母なる女神は仲裁に入ったが、兄神がその手に持っていた炎の剣を振り回して父なる男神を切り刻んでしまった上にその亡骸に拳を幾度か叩きつけて殺してしまった。

この事に母なる女神と妹神は涙し、母なる女神は悲しみのあまり、自らの首をもぎ取って息絶えてしまった。

この時に流れた涙と血潮は大地に満ちて広がり、混ざりあった後に赤黒い水と成った。

この惨状を視た『天照貴岐神』は己の稚拙な行いを恥じて二柱の親神が定めた事を受け入れた。

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